吉田 寿
ビジネスコーチ(株) 常務取締役

 本連載では、中小企業やその経営者にとって、自社を成長させていくうえでいかに人事制度が重要かについて述べてきました。

 人事制度が未整備な状況では、早急に一定レベルの制度の整備は必要ですが、単に制度が存在していれば、それでうまくいくというものでもありませんでした。制度を活用していくためには、運用のところでの評価者の評価スキルの向上や細部運用ルールの充実が必要でした。しかし、それでも中小企業の経営者の悩みは尽きません。

 そこで、本連載の締めくくりとしては、ビジネスの成長を加速させるための人事制度の本質について触れていきたいと思います。

よくある社長の悩み

 中小企業の経営者にとって、よくある悩みとは何でしょうか?

 常に人材面での課題感や不足感を抱える中小企業では、社長はいつも悩んでいます。それは、例えば「何とか自分の右腕となる人材を育てたい」という願いからであったり、「プロの管理職を育てたい」という熱意からであったりするでしょう。将来の経営を担う自分の右腕となる社員や頼れる管理職を、定期的・継続的に育てたいと考えているのです。

 そんな人材がなかなか育たないのは、いったいなぜでしょうか? 理由は、いくつか考えられます。例えば、とにかく社長がスーパーマンで何でも自分でやってしまう、重要な仕事を下に回していない、つまり、権限委譲がなされていない、その結果として仕事を組織で回していない、などです。

 ミドルマネジメント層にも問題があります。どこの会社でもよく見受けられる光景ですが、管理職がみんなプレイングマネージャーになっていて、部下の育成に時間がかけられていない。マネジメントの学びが足りていない。組織で同じフレームや共通言語を持てていない。人材育成や人事評価の仕組みがないことも、このような状況を助長する一因になっている場合もあります。