ケーススタディに関してつけ加えると、最近では架空のケースというよりも、過去に社内で実際にあった実例を元に、よりリアルなケース開発をしてそれを教材として使用する場合も増えてきました。また、人事評価を実施するうえで、実際に現場で抱えている課題や問題点を事前に準備して研修に臨み、その場でグループ討議の形で検討を加えて一定の解決策を導き出すという演習を実施するケースも増えてきています。

 評価者研修も、単なる研修の域を超えて、より実践的な場面を想定した課題解決の場として活用する時代となっているということです。

クライアントA社での評価者研修の取り組み

 最後に、あるクライアントでの取り組みの実例を取り上げてみましょう。

 クライアントA社では、毎年、定期的な評価者研修の取り組みに対して、一定のテーマを決めて取り組んでいました(図表2参照)。

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 例えば、評価制度の導入前には、制度の現場への定着促進のための説明会や評価者研修に注力しました。制度導入後の初年度では、定期的に人事評価検討会を開催し、現場での運用実態やそれに対する忌憚のない意見聴取に努めました。

 次年度では、評価結果の給与への反映ルールを検討。1年目の成果評価と能力評価の評価結果の集計状況を確認したうえで、S、A、B、C、Dなどの最終評価の持つ意味解釈についての社内コンセンサスの醸成に努めました。

 3年度においては、社内の各事業部門の現場の実情を反映した100通りものショートケースを開発して、様々な場面を想定した評価者研修を実施しました。そして、4年度目には、各評価段階の違いに対する評価者の認識レベルをさらに高めるためのオリジナル研修を開発。併せて、新しい等級体系に対応したキャリア開発のための人材育成制度の構築にも着手。役員の評価ルールの検討・整備も進めました。

 評価結果の差のつけ方についても、慎重に進めました。最初からいきなり大きな格差をつけるというやり方ではなく、少しずつ評価差をつけていくという方法を採りました。例えば、本来的には、S、A、B、C、Dという5段階評価ですが、評価制度導入後の少しの間は、真ん中のA、B、Cのみで運用すると決めました。5段階評価で実施しても、結局のところ真ん中のB評価に集中してしまってほとんど差が出ないということが、制度導入初年度で判明したからです。

 そして、標準評価のB評価にほぼ90%が集中し、AとCに5%ずつの分布であったものを、少しの期間を経て、SとAで15%、CとDで15%(結果としてBに70%)に拡大するという方針転換を果たしました。

 かなり慎重に差をつけるための方策を検討しているようにも思えますが、評価差をつけることへの評価者の心理的抵抗がなかなか払拭できない状況ならば、このような堅実な制度運用を考えていく必要性も出てくるのです。