中途採用者が多い中小企業は賃金秩序が乱れがち

 報酬制度についても、中小企業の場合には、やはり不十分なケースが見られます。例えば、基本給テーブルがまったく設計されていないケースは最たるものでしょう。

 中小企業も、中途採用者が数多く入社してきます。給与テーブルが整備されていない企業の場合には、往々にして前職での給与を参考に年収や年俸の提示を行うことになります。この場合、等級や役職などを前提にあらかじめ水準設定をしておかないと、入社のタイミングによって、同じ仕事をしているにもかかわらず、もらっている給与水準に差が出てしまっていたり、先に入社した社員より後から入社した社員の給与水準の方が高かったりといった状況が、職場のあちこちで見られることになってしまいます。

 また、このような場合、報酬制度改革を実施して、一定の給与テーブルや賃金テーブルにまとめていこうとしても、あまりにも給与水準に格差があるために、一定の範囲にまとめあげることができないといった状況が発生してしまうのです。

 賃金秩序の確保の重要性を痛感させられるケースを、これまでも数多く見てきています。

 さて、等級・評価・報酬の3点セットで検討・導入される人事制度ですが、実は導入後の適正運用が重要なポイントになります。そこで、キーとなってくるのが評価者研修です。次回は、この評価者研修の重要性について、お話ししたいと思います。

吉田 寿(よしだ・ひさし) ビジネスコーチ株式会社
常務取締役チーフHRビジネスオフィサー
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ
吉田 寿

1959年生まれ。
早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。
富士通人事部門、三菱UFJリサーチ&コンサルティング・プリンシパルを経て、2015年1月より現職。
“人”を基軸とした企業変革の視点から、人材マネジメント・システムの再構築や人事制度の抜本的改革などの組織人事戦略コンサルティングを、中小企業から大企業までグループかつグローバルに展開している。
中央大学大学院戦略経営研究科客員教授。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

主な著書として、『世界で闘うためのグローバル人材マネジメント入門』(日本実業出版社)、『リーダーの器は「人間力」で決まる』(ダイヤモンド社)、『企業再編におけるグループ人材マネジメント』(共著、中央経済社)、『ミドルを覚醒させる人材マネジメント』、『人事制度改革の戦略と実際』、『人を活かす組織が勝つ』(以上、日本経済新聞出版社)、『社員満足の経営』、『仕事力を磨く言葉』(以上、経団連出版)、『人事超克』、『未来型人事システム』(以上、同友館)など。その他論文、新聞・雑誌への寄稿、講演多数。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。