評価者研修の必要性

 しかし、このような評価制度の運用ルールが適正に守られていないケースが実に多いのです。まず、期初において目標設定面談が全くなされていないという場合が生じます。また、目標設定面談は実施されたものの、目標は立てっぱなしで期中において何らフォローがされていないケースも続出します。期末の評価面談も、ルール上定められてはいるものの実際には面談が実施されていないケース。面談は実施されているものの、上司・部下の間で十分な時間をとって話し合いが持たれていないケースも出てきます。人事制度の原理・原則や建前上のルールと実際の運用に乖離が見られ、制度の運用が形骸化している場合も散見されます。

 このような状況にある場合には、公正性の担保は実現しがたい状況といえるでしょう。

 そこで、各社が注力してくるのが「評価者研修」です。評価者研修自体は、別段目新しい取り組みではありません。しかし、このような人事制度の運用状況に当面して、その重要性に改めて気づき、基本となる評価者研修に立ち返る企業が多いのです。期初における「目標設定研修」、期中における「中間レビュー研修」、そして期末における「評価者研修」の実施というように、評価実務の節目節目で何を実施すべきかをもう一度確認するための全評価者を対象とした評価者研修を実施することになります。

納得性の視点とは

 最後が納得性の視点です。これは、評価結果や処遇に対する社員の納得性を確保するということです。例えば、人事制度の運用に関して、仮にこれまで述べてきたような透明性や公正性が担保されたとしても、最後の納得性が確保されなければ、人事制度の運用が成功しているとはいえないということです。それくらい、この納得性の視点は重要です。

 例えば、新人事制度を検討・導入したある中小企業がありました。その企業は、新制度の検討段階から、社内の人事部門のみならず関係各部門を巻き込みながら丁寧に制度設計を進め、晴れて新制度の導入を果たしました。新制度に基づく評価の結果が社員の処遇に反映され、それなりの効果検証ができるのは、実は制度導入後1年が経過してからとなります。そこで、この企業の場合も、1年経過後に、全社員を対象に新制度に対するアンケート調査を実施しました。

 このアンケートは、実に惨憺たる結果でした。その最たるものが評価結果のフィードバックに関するもので、全社員の60%が評価結果のフィードバックに対して「不満」と回答していたのです。評価制度の運用ルール上では、評価結果の社員に対するフィードバックはきちんと実施するよう定めていました。しかし、職場での実態はというと、評価結果のフィードバック面談が実施されていない。あるいは、実施されていても通り一遍のもので、どうして自分がそのような評価結果になったのか、十分な説明がなされていなかったのです。