このように、企業経営を取り巻く環境変化への対応の一環として、人事制度を一定レベルで整備していくことの必要性が再確認されるところにきています。また、一定レベルの精度を伴った人事制度を整備することは、このような事業環境の変化へのしなやかな対応力を身につけ、人材の成長を通じてビジネスの成長を加速させていく一助となるものとの理解が必要になるでしょう。

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 しかし、図表に示したように、一連の人事・処遇制度は、それだけが単体で成立しうるものではなく、当該企業の組織文化や風土にも深く根ざし、組織のありようとも密接に関連するものであることは、注意する必要があります。一定の条件を所与とした組織の環境の中で、人は採用され処遇を受け成長していくものなのです。

 したがって、「他社でも採用している制度だから当社でも…」と短絡的に考えるのではなく、自社のビジョンやミッションに照らして、求める人材像や求める行動、価値観などを明確に規定していく必要性があるのです。そして、それに基づく人事の基準づくりと密な社内コミュニケーションを実践していくことが、自社の組織にマッチした人事制度の実現に寄与するものと考えます。

 それでは、あるべき人事制度とは一体どのようなものでしょうか? 人事制度に求められる原理・原則や重要視点については、次回少し詳しく述べることにします。

吉田 寿(よしだ・ひさし) ビジネスコーチ株式会社
常務取締役チーフHRビジネスオフィサー
BCS認定プロフェッショナルビジネスコーチ
吉田 寿

1959年生まれ。
早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。
富士通人事部門、三菱UFJリサーチ&コンサルティング・プリンシパルを経て、2015年1月より現職。
“人”を基軸とした企業変革の視点から、人材マネジメント・システムの再構築や人事制度の抜本的改革などの組織人事戦略コンサルティングを、中小企業から大企業までグループかつグローバルに展開している。
中央大学大学院戦略経営研究科客員教授。早稲田大学トランスナショナルHRM研究所招聘研究員。

主な著書として、『世界で闘うためのグローバル人材マネジメント入門』(日本実業出版社)、『リーダーの器は「人間力」で決まる』(ダイヤモンド社)、『企業再編におけるグループ人材マネジメント』(共著、中央経済社)、『ミドルを覚醒させる人材マネジメント』、『人事制度改革の戦略と実際』、『人を活かす組織が勝つ』(以上、日本経済新聞出版社)、『社員満足の経営』、『仕事力を磨く言葉』(以上、経団連出版)、『人事超克』、『未来型人事システム』(以上、同友館)など。その他論文、新聞・雑誌への寄稿、講演多数。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。