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野村総一郎氏
野村総一郎氏

○野村総一郎先生
西松先生が提起されたのは、サブクリニカルなレベルのメンタルの問題に対して、我々精神科医は何ができるのか。そしてそれを踏まえた上で、産業医の連携をどうするかだ。

私は読売新聞の人生相談を7年やっているが、ここで受けた相談のほとんどがサブクリニカルな問題だ。この経験は私にとって修練になり、人生相談をやったから対応の方法や感覚が芽生えたと感じている。そのためにはトレーニングが必要で、これをどう進めていくか。ポイントは2職種あり、その一つが臨床心理士で、認知行動療法も彼らがトレーニングを受けて行うと、大きな力を発揮する。

西松能子氏
西松能子氏

○西松先生
ただ、そこにはコストがなく、ボランティアだ。私たちのクリニックで臨床心理士と協働すると一例2800円〜3800円の赤字になる。

○野村先生
それは経営の問題だ。我々のクリニックでも臨床心理士がなんとかペイするシステムを考えている。

○西松先生
確かにそうだ。可能性は広がることは間違いない。

○野村先生
そこは研究する余地はある。それからもう一つの職種として、産業医が何をするかだ。産業医が認知行動療法を行うと非効率的であり、なにもかも引き受けるのではなく、産業医の専門性を考える視点が必要だ。

樋口輝彦氏
樋口輝彦氏

○樋口先生
本日は午前中に別の研究会があり、そこでもやはりストレスチェックの話があった。その中で日本精神科産業医協会 代表理事の渡辺洋一郎先生が冒頭、「ストレスチェック制度の一番のポイントは、職場の環境が高ストレス者のストレスを高めることに影響を及ぼしているかどうかだ。もしそうであれば、そこを企業側が配慮して調整・整備することに重点がある」といわれた。これは非常に理解しやすい。

今の議論のように、一次予防に精神科医がどれだけのことができるかについては、大したことはできないだろうと思っている。むしろ高ストレス者に対して、産業医の依頼もあって精神科医が診るとすれば、今の状態はクリニカルのレベルなのか、治療をした方が良いのか、そのジャッジをすることだ。サブクリニカルな人にクリニカルなアプローチをすることは、倫理的な問題も含めて難しい。こうした人に対しては、企業側にストレスを軽減させる環境整備をすることを求めていく。但し、環境整備をすることだけで、将来のうつ病を予防できるかどうか、そのエビデンスを十分に持っていない。

宮本俊明氏
宮本俊明氏

○宮本先生
一次予防をしても患者は減らないかもしれないが、例えば長時間労働を減らすなどの対応をしていないと、何か起こったときに安全性義務違反とされ賠償金を取られるなど、裁判例が多数あることを考えると、何かをやらなければならないのは事実だ。では、何をどれくらい改善するのか、その指標がないからこそ、義務ではなく努力義務になったと思っている。そのように考えると、好事例を集めていくしかない。

例えば職場復帰は、最初の2週間は12時まで、次の2週間は15時まで、4週間までは17時まで仕事をさせ、それから少し残業をさせてみるといったように、段階的な復職をさせた事例を集めることで、スタンダード化した良い例だ。このように何かをやるときには産業医だけではできず、患者を診ている精神科医からサジェスチョンいただくことも大事だ。情報のやり取りについては、まさにこの場が連携の第一歩だと思っている。

ただ、長時間労働を減らすといったアクションを取る際に、精神科医とキャッチボールをするコストはどこに請求するかなど、現実的な問題は未解決のままだ。このあたりについては、産業医側も精神科医側も厚労省に点数をつけてもらうなどの要求をしていかなければならないと思っている。

○西松先生
配布資料の中に連携のコストを一部記載したが、産業医との連携は診療情報提供医療の産業医宛でも良くなり、コストの算定ができるようになった。連携にかかるコストを行政に働きかけることも大事だが、ストレスチェックが行政の負担ではなく、企業の負担となっていることを考えると、これ以上行政からお金を引き出すことは難しいのではないか。