トップページシンポジウム2015年12月、ストレスチェック義務化を目前にストレスチェック策定者の産業医科大学名誉教授・中村純氏が「ヒューマンキャピタル2015」で講演
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2015年12月、ストレスチェック義務化を目前にストレスチェック策定者の産業医科大学名誉教授・中村純氏が「ヒューマンキャピタル2015」で講演

2015.09.01   取材:21世紀医療フォーラム取材班 安井透 文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也

 2014年6月「労働安全衛生法の一部を改正する法律」が成立し、2015年12月から従業員50人以上の企業では一般健診とは別にストレスチェックの実施が義務付けられた。
 企業や産業医、ストレスチェックの受託を行うEAP(Employee Assistance Program・従業員支援プログラム)等も、ストレスチェック義務化に対して高い関心を寄せており、各地で様々な学会講演やセミナー等が開催されている。
 こうした中で、2015年7月15日〜17日、東京・有楽町の東京国際フォーラムで、日経BP社主催の「ヒューマンキャピタル2015東京」が開催された。厚生労働省の検討会において、ストレスチェック項目づくりの中心的な役割を果たした北九州古賀病院院長・産業医科大学名誉教授の中村純氏は、「ストレスチェックを単なるアンケート調査で終わらせてはいけない」と警鐘を鳴らす。今回は、その中村氏の講演をリポートする。
(取材:21世紀医療フォーラム取材班 安井透 文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也)

ヒューマンキャピタル2015
会 期 2015年7月15日(水)〜17日(金)
主 催 日経BP社
後 援 経済産業省
協 賛 日本人材マネジメント協会 全国産業人能力開発団体連合会
協 力 日本経済新聞社 テレビ東京

うつ病患者と労災件数の増加が
ストレスチェック義務化の一因に

2000年の第1回開催以来、企業の人事部や総務部、経営陣に対し、最先端の人事組織戦略や教育など、人に関するサービスやソリューションを提供してきたヒューマンキャピタル。今回の「ヒューマンキャピタル2015東京」では、ストレスチェック義務化を目前に、これに関連した複数のセミナーが開催された。

3日間にわたるセミナーの中で、7月17日、北九州古賀病院院長・産業医科大学名誉教授の中村純氏は、「ストレスチェック義務化の目指すもの」というテーマで講演を行った。まず、中村氏は、ストレスチェックが義務付けられた背景には、女性の社会進出、裁量労働制の導入、非正規社員の増加、名ばかり管理職と長時間労働、パワハラやセクハラといった様々な問題を挙げ、「労働者の意識が変化してきており、それがストレス増加の一因になっているのではないか」と分析。しかし、労働環境や意識の変化だけでは説明できないほど、近年、うつ病患者は増加している。

厚生労働省の患者調査によれば、1996年に20万7000人だった軽症うつ病の患者が2011年には70万8000人と、15年間で3倍以上に増加している。中村氏は、「うつ病の診断基準が広がったこと、SSRIが登場したことで気軽に精神科を受診する人が増えた」と、うつ病患者増加の要因を指摘した。

また、労災の請求状況を見ると、脳・心臓疾患による労災請求件数が898件(2011年)、842件(2012年)、784件(2013年)と3年連続で減少している一方で、精神疾患による労災請求件数は1272件(2011年)、1257件(2012年)、1409件(2013年)と増加し続けている。「精神疾患による労災が抑えきれていないことが、ストレスチェック義務化の一因になった」と、中村氏は振り返る。

従業員が産業医や保険師に
相談できる環境を整備すべき

今回の労働安全衛生法の改正には4年かかっており、この間に政権は民主党から自民党へと交代。もともと病気の早期発見を目指していたこの法案が、自民党政権では職場のメンタルヘルスの改善を目指す法案へと変わったという事情がある。一般健診へのメンタルヘルスチェック導入に労働組合等が難色を示したことから、「労働安全衛生法66条の十」に基づき、労働者に精神的負荷がかかる検査を一般健診とは別に設けることにした。

こうした経緯から中村氏は、「ストレスチェックを単なるアンケート調査と考えるのではなく、その後の医師による面接と事後措置こそが重要だ。また、EAP(Employee Assistance Program・従業員支援プログラム)機関等が提供するストレスチェック検査を行うと共に、メンタルヘルスの発症予防と職場環境の改善に力を入れる必要がある」と強調した。

さらに、「従業員が事業者に面接を申し出て、事業者が産業医に面接を依頼し、産業医からの意見を聴取して時間外労働の制限等を決める工程でうまくいくとは考えられず、これまでのように従業員は産業医や保健師に相談できるようにすべきだ」と、問題とその対策について述べた。