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ストレスチェック制度を考える(11)

うつ病で苦しむ人たちのために領域や枠を超え、 企業、産業医、地域の精神科医、内科医の連携を

2016.08.03   東洋英和女学院大学教授 横浜尾上クリニック院長 山田和夫氏

東洋英和女学院大学教授 横浜尾上町クリニック院長 山田和夫氏
山田 和夫(やまだ かずお)氏
1981年 横浜市立大学医学部医学科卒業。同大医学部附属病院神経研修医、常勤医を経て、1983年 神奈川県立芹香院常勤医。1988年 横浜市立大学医学部神経科医局長。1989年 研水会平塚病院副院長。1989年 国立横浜病院精神科医長。1993年 横浜市立大学医学部附属浦舟病院神経科講師。1998年 同院神経科部長。2000年 横浜市立大学医学部附属市民総合医療センター精神医療センター部長(助教授)。2002年 東洋英和女学院大学教授・横浜クリニック院長。2013年 横浜尾上町クリニック開院

2013年5月、横浜の官庁街に開院した横浜尾上町クリニックは、初診まで1~2カ月待ちが多い精神科クリニックの中で、「患者を待たせない」という方針のもと、状態の悪い人は予約なしでも診察できる体制を整えている。
また、電話での問い合せには原則24時間・365日対応し、緊急の場合は診療中でも電話を受ける。すぐに受診できる体制を整備することで、内科開業医からの信頼も厚く、うつ病治療が一段落した後は紹介を受けた初診の内科開業医に患者を戻すなど、地域における連携が構築されている。

連載2回の第2回は、ストレスチェック実施のポイント、精神科医と内科医との連携などについて、引き続き、同クリニック院長の山田和夫氏に聞いた。
(取材:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也 構成:同取材班 但本結子)

外部委託先への丸投げは
ストレスチェック制度の意義をなくす

中小企業の多くはストレスチェックを外部委託せざるを得ない状況ですが、これについてどのようにお考えですか。

山田 EAPだけでなく多くの企業が参入していますが、企業は丸投げ、受ける側は丸受けで、しかも言い値で依頼する企業が増えています。人が対象でありながら、新しく立ち上がった隙間産業的なビジネスは、商品の市場調査と同じような感覚で行われています。それでは単なるチェックだけに終始してしまい、大事な事後措置が行われません。企業は産業医をはじめ、産業カウンセラーや保健師、精神保健福祉士といった人たちをストレスチェックのためにスタッフとして雇用し、自前で実施すべきです。

そもそもストレスチェックの義務が生じる大手企業であれば、社内に産業医や保健師が必ず在籍しています。外部委託するにしても管理・運営については社内の産業医や保健師が関わり、何かおかしいと思ったり、高ストレス者と判定されたら、保健師が面談する体制を整えるべきです。今行われている健康診断も、健康診断そのものは丸投げであっても、保健師は立ち会って見ています。

外部機関への委託に対して何らかの規制は必要だと思われますか。

山田 異業種からの参入が多く、その背景も見えないため、選定の基準は品質よりも料金になってしまっています。しかし、重要なのはやはり品質です。厚労省も企業任せにせず、外部委託会社に対して品質や正当性まで担保されているかをチェックし、許認可制とまでいわないまでも、参入を厳しくすべきです。その上で、外部委託会社への罰則規定やガイドラインの作成も必要だと思います。

また、今ある導入のためのガイドラインではなく、ストレスチェックを受けた結果、この企業の質はどうなのか、企業の質を高めるために何をすれば良いのかといったように、企業にとって良い形でフィードバックできるガイドラインが求められます。そうしたアプローチこそ、労働者の「会社に自分の情報を知られるのではないか」「人事考課に悪い影響を与えるのではないか」という風評被害を防ぐことができるのです。加えて、企業のトップに対しては、ストレスチェックの有効活用を考える経営者対象のセミナーを行うなどの啓発も不可欠です。

ストレスチェックを実施する上でのポイントについてお聞かせください。

山田 ストレスチェック実施者の中に、臨床心理士や来年、国家資格になる公認心理師が含まれていないのは、カウンセリングが目的ではなく、ストレスのリスクを調べたり、職場環境の状況を判断することが重要だからです。そうなると、職場環境を考えることが主たる業務である精神保健福祉士を、実施者として最大に活用していくべきです。

精神保健福祉士は職場環境を調整したり、早期発見で医療につなぐなど、本人と職場や病院といった様々な機関との連携を図る専門家です。「Psychiatric Social Worker(PSW)」と呼ばれるように、まさにフットワークの良さが強みで、例えば、うつ病患者のために会社と病院、リワーク支援機関など結ぶコーディネーターとしての役割を担っています。

外部に委託する場合でも、その結果を会社の正規社員として精神保健福祉士が集約し、労働者のためにフィードバックすることを、ある程度、会社側に義務付けることが重要です。