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ストレスチェック制度を考える(13)

メンタルヘルスの問題の多くは病態ではなく、職場にある。精神科医との協働でこれを改善し、患者の減少へつなげる。 (2/2)

2016.08.23   新日鐵住金 君津製鐵所 総括産業医 宮本俊明 氏

宮本俊明 氏

つまり精神科医と産業医の連携が大切ということですか。

宮本 その通りです。図1で示した「心の健康問題で休職した労働者の職場復帰支援の手引き」では、精神科医の復職診断とは別に、産業医の診断も受けることを推奨しています。もちろん本人の病状については主治医である精神科医が判断することになりますが、受け入れる職場の状況診断と、両者の相性等については産業医の判断になります。いわばアセスメントと言えますが、「職場環境」「本人病態」「相性」の3要素があると考えると、少なくとも本人病態だけの判断で全てが評価できるわけでもないことは自明です。したがって復職の可否は、主治医の意見だけでなく、職場を十分に把握している産業医の意見も同等に重要なのです。

そこから派生する考え方でもあるのですが、ストレスチェックの集団分析結果に基づいて、職場の環境改善を図ることも行われており、ここに産業医の意見だけでなく精神科医の意見が入ると双方向の連携になるように思います。これは二次予防的な発想からでもアドバイスできます。精神科医から産業医に対して、「職場にこんな要素があると良くないから、こういった改善をするのはどうか」といった働きかけや会話が発生していくことがあれば、それが一番理想的な連携であり協働(コラボレーション)だと考えています。

産業医に面接のスキルは不可欠。
本人に寄り添う面接を

一方で産業医が身に付けるべきスキルはありますか。

宮本 少し前までの産業医は、息子に医院を譲った開業医が引退後に産業医にでもなるかといった安易な形で就業する人が結構いたようです。しかし、現在の第12次労働災害防止計画(表1)のうちで健康面に関連する内容は多方面に渡っており、『重点施策』からは、メンタルヘルス対策、過重労働対策、化学物質による健康障害防止対策、腰痛・熱中症予防対策、受動喫煙防止対策となっており、安全衛生の『横断的な取組』として、リスクアセスメント普及、高年齢労働者対策となっています。特に最初の2つ(メンタルヘルス対策と過重労働対策)には面接が不可欠なので、現在では少なくとも面接のスキルは不可欠といえます。

表1 第12 次労働災害防止計画より平成25年度から平成29年度までの重点施策

では、なぜ面接が重要なのか。今回のストレスチェックは過重労働者面接のスキームが使われています。長時間労働は本人の責任だけではない部分もあるため、本来、是正のための指導は本人だけでなく会社に対しても行われます。ところがストレスチェックでは個人の結果を会社に通知できないので、本人だけに指導するという法律の建て付けになっていますが、これは指導というより、基本的には寄り添う面接しかありません。

本人の話を聞いておかしいと思ったら精神科医に紹介する。そうなると面接指導だけでは終わりません。受診の必要性を説く必要も出ることがあるでしょう。

つまり産業医がやるべきことは、ある人の心身に、会社の中でいつもと違うおかしなことが起こっているようだという情報を掴んだら、この人は事例性があるかもしれないと判断し、面接して事例性および疾病性の一次アセスメントを行って、さらに病気の可能性が高いと判断すれば、診断のために専門家に紹介するというプロセスを行うことです。

これは相手が高ストレス者の範疇、実際は周囲の支援が少なかったり、職場のストレス要因が高い者も含まれますが、その対象の面接でも同じことです。その場で診断を求めているのではなく、診断のために専門家受診を勧めるかどうか、優先順位付けも含めてアセスメントを産業医に求めているといえます。

だから面接のスキルが重要になってくるわけですね。

宮本 そうです。ストレスチェックの高ストレス者面接の場合は「面接指導」という言葉が適切かどうかという問題はありますが、相手の訴えに耳を傾けるということは、患者を相手にしたことがある全ての医師に共通の経験といえます。過重労働者面接と同レベルの想定で、精神疾患の診断をするわけではないので、ストレスチェックの面接も産業医ができるといって厚労省が通したものです。その時は「産業医が面接を忌避することはない」という目論見が机上の空論だったかもしれませんが、熱心な産業医であれば、そう言われたら取り組むしかありません。だから今、産業医研修会では50単位中の1単位でしかないにもかかわらず、メンタルの研修が非常に増えています。

第2回終わり(第3回に続く)