トップページインタビューメンタルヘルスの問題の多くは病態ではなく、職場にある。精神科医との協働でこれを改善し、患者の減少へつなげる。
Good Doctor NET AGING Web 宇治おうばく病院 うつ病~こころとからだ 話してみよう うつの痛み うつ病・認知症コンソーシアム 冊子バナー 特別協賛:シオノギ製薬 ココ朗くん

ストレスチェック制度を考える(13)

メンタルヘルスの問題の多くは病態ではなく、職場にある。精神科医との協働でこれを改善し、患者の減少へつなげる。

2016.08.23   新日鐵住金 君津製鐵所 総括産業医 宮本俊明 氏

宮本俊明 氏
宮本 俊明(みやもと としあき) 氏

新日鐵住金株式会社君津製鐵所 総括産業医

1990年 産業医科大学医学部卒業。1990年新日本製鐵入社。千葉労災病院での臨床研修を経て、1993年 君津製鐵所に産業医として赴任。2012年より会社統合で現職。医学博士 労働衛生コンサルタント 日本産業衛生学会理事 日本産業ストレス学会理事 産業医学推進研究会会長 産業医科大学産業衛生教授 2014年〜過労死防止対策推進協議会委員 2013年に緑十字賞受賞(中央労働災害防止協会)

近年、「健康経営」という概念に注目が集まる中で、生活習慣病をはじめメンタルヘルスや過重労働など、企業が取り組むべき健康管理対策の範囲は広がっている。その背景には、安全配慮義務上、事業者の責任として健康管理対策が求められることに加え、従業員が健康を損なうことによる生産性の低下など、健康管理を経営的な視点から捉えるようになったことが挙げられる。

こうした状況の中で、存在感を増しているのが産業医である。新日鐵住金株式会社君津製鐵所 総括産業医の宮本俊明氏は、産業医への認知度が低かった1990年に専属産業医として入社し、「産業保健とは何か」「産業医は何をすべきか」を自ら切り開き、実績を積み重ねてきた。
連載3回の第2回は、産業医と精神科医との連携、産業医が身に付けるスキルなどについて、宮本氏にお話を伺った。 (取材:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也 構成:同取材班 但本結子)

精神科医の関わりについてはどのように考えていますか。

宮本 ストレスチェックが始まると「面接を忌避する産業医がいる、だから精神科医でなければだめだ」という論調はいかがなものかと思います。なぜかというと、精神科医はその分野の専門家なのですし、ただでさえ外来診療がパンクに近い医療機関が多いのですから、この制度のいう「高ストレス者」という雑多な状態の集団よりも、より病気の可能性が高い集団の面接をしてもらいたいと思うのです(図2)。

図2
図2(出典:厚生労働省 説明用資料)クリックで拡大します

もちろん産業医の代わりに面談をしてくれるのであれば、それはありがたいのですが、面談対象者を絞り込む前であれば、病者が含まれる割合は外来診療の初診よりも低いでしょう。そうなると委託側からすると、面談料は産業医面談に専門家の安心料を加える程度で、外来保険診療費よりも低く抑えざるを得ないでしょうね。

本来、精神科医の役割とは、図1で言えば「事業場外資源によるケア」であり、外部コンサルテーションを行う先ですから、産業医等が対象を絞り込んで専門家につなぐことが理想です。もちろん本制度では事業者への結果の通知という点が絡んで、制度本来の医師面接の形だけでなく、通常の健康相談の形式で産業医や保健師や心理職に接触する事例もあるでしょう。それとて、後方支援として精神科医が構えていてくれるだけで、病的な対象者がいた場合の対応は随分違います。それは熱心な産業医がいる場合を考えるとよくわかります。実施者であり、正規の医師面接者であり、通常の健康相談の相手でもある産業医が、ストレスチェックに限らず様々な機会を通じて面談する労働者の異変を察知して、より軽微なうちに精神科医にバトンタッチできれば、理想的な二次予防になるのです。

図1 4つのケアと4つの横串
図1 4つのケアと4つの横串
(厚生労働省提示の説明用資料を宮本氏が許可を経て改変)クリックで拡大します

つまり、精神科医が産業保健を学んで労働者の実情を正確に理解してくれることは大変ありがたく重要なことですが、「産業医の代わりに面談を行う」というのはもったいないと思います。産業医の絞り込みでは不安というなら、地域の産業医に合理的な絞り込み方を教えてくれれば良いと思います。もともと過重労働者面談の時は精神科医が行うべきという話は一切出てこなかったのですが、実際にはメンタル事例が含まれるために、メンタル面にも注意した面接になります。それとストレスチェックの医師面接は、大きな差はないように感じています。