Good Doctor NET AGING Web 宇治おうばく病院 うつ病~こころとからだ 話してみよう うつの痛み うつ病・認知症コンソーシアム 冊子バナー 特別協賛:シオノギ製薬 ココ朗くん

ストレスチェック制度を考える(12)

メンタルヘルスの問題の多くは病態ではなく、職場にある。 精神科医との協働でこれを改善し、患者の減少へつなげる。 (2/2)

2016.08.10   新日鐵住金株式会社君津製鐵所 総括産業医 宮本俊明 氏

本人のストレスへの気づきを促し、
これを分析して職場環境の改善につなげる

宮本俊明 氏

今回のストレスチェック制度について、宮本先生はどのように評価されていますか。

宮本 今回のストレスチェックが義務化されたのは50人以上の企業であって、そこは産業医選任義務があるところです。始まったばかりのストレスチェック制度では、実施者として産業医の関与がほぼ不可欠とされるのは、この義務化の範囲を見てもわかります。職場の状況をよく知っている産業医という既存のリソースを活用しないとうまくいかないからです。

この制度の主目的は、労働者のメンタルヘルス不調の未然防止という一次予防であり、具体的には労働者自身のストレスへの気づきを促すことと、集団分析結果を用いてストレスの原因となる職場環境の改善につなげる、という予防活動です。高ストレス者への個別対応は、副次的に発生するワークであって、対象者に求められたら対応しなければならないものの、それが制度の主目的ではない、という点も二次予防中心の臨床医療的な観点から脱却していて好ましいと考えています。

また、専属産業医がいる規模の事業場(従業員1000人以上または有害業務に500人以上従事)では、これまでに4つのケアと4つの活動(図1)などのメンタルヘルス活動を、どこでもしっかりとやってきていることが普通であり、そのような大企業では今回の法改正で、特に何かが変わるわけでもありません。やはり中小企業に対して、これまで以上の活動を求めているということになる点は、大いに評価したいと思います。さらに、従業員50人未満の小規模事業場で就業する労働者が6割という点からも、今後の集団分析等による職場環境の把握と改善という一次予防活動が小規模事業場に拡大することを願っています。

図1 4つのケアと4つの横串
図1 4つのケアと4つの横串
(厚生労働省提示の説明用資料を宮本氏が許可を経て改変)クリックで拡大します

ストレスチェック制度と従来のメンタルヘルス施策の関係についてはいかがですか。

宮本 先にも述べたように、このストレスチェック制度の主目的は労働者のストレスへの気づきの支援と、職場分析を通じた職場環境の把握と改善ですから、図1の横串にある(2)と(3)が該当するわけです。ただし、本制度では(3)についてはラインによるケアが使えないことが難点です。したがって、管理職研修などで職場の管理者に異変を感じ取ってもらう努力は継続しないといけないでしょう。つまりストレスチェック制度を運用する前提として図1の(1)がないといけないわけです。さらに職場のセーフティネットとして行政通達の手引も出されている(4)もあるはずです。そう考えると、ツールとしてストレスチェックが提示されただけで、すべきことは従来から変わってはいないといえます。

第1回終わり(第2回に続く)