トップページインタビュー会社と関係機関をつなぐコーディネーターを配置し “顔の見える”関係性づくりを
Good Doctor NET AGING Web 宇治おうばく病院 うつ病~こころとからだ 話してみよう うつの痛み うつ病・認知症コンソーシアム 冊子バナー 特別協賛:シオノギ製薬 ココ朗くん

ストレスチェック制度を考える(7)

会社と関係機関をつなぐコーディネーターを配置し “顔の見える”関係性づくりを

2016.06.29   メディカルケア虎ノ門 院長 五十嵐良雄 氏

メディカルケア虎ノ門 院長 五十嵐良雄 氏
メディカルケア虎ノ門 院長
五十嵐良雄 氏

1976年 北海道大学医学部卒業。1976年 埼玉医科大学精神医学教室助手。1984〜85年 イタリア・ミラノ大学、オランダ・ユトレヒト大学留学を経て、1988年 秩父中央病院理事長院長。2003年メディカルケア虎ノ門院長。2008年 うつ病リワーク研究会代表世話人
○公職
日本デイケア学会副理事長 日本産業精神保健学会理事 日本外来臨床精神医学会常務理事 など

メディカルケア虎ノ門では薬物療法に加え、デイケアやカウンセリング、リワークプログラムなどにより、心身療法面から復職を支援している。特にリワークプログラムでは、産業医としても豊富な経験を持つ精神科医をはじめ、保健師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士、臨床心理士らの多職種がチームとなり、総合的な視点からサポートしている。

連載2回の2回は、ストレスチェック後の問題事例、精神科医と産業医、プライマリーケア医との連携のあり方、コーディネーターを配置する連携の形などについて、引き続き同クリニック院長の五十嵐良雄氏にお話を伺った。
(取材:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也 構成:同取材班 但本結子)

制度を悪用して
高ストレス者を装うことも

五十嵐先生が面談されて困ったケースについて、詳しく教えてください。

五十嵐 高ストレスであるにもかかわらず面談を申し出ない労働者は、本当に病気かもしれないため、企業にとっては対応が厄介です。一方で、高ストレスと判定されて面談を申し出たものの、本当にこの人は病気なのか疑問に思われる人もいます。チェックするだけですから、点数が高くなるようチェックすることは可能です。

実際、ストレスチェックの結果、ある企業の社員Aが高ストレスと判定され、面談を申し出てきました。面談の条件として仕事内容や勤怠状況など、会社から情報を提出してもらって、私は1対1で面談をしました。

本人の話を聞くと、残業も多く仕事が大変で朝起きられない、気分が悪い、体調がすぐれないというので、うつ病を疑い就業制限をかけました。さらに医療機関への受診も勧め、定時勤務として1カ月後に会う約束をしました。

定時勤務を勧めた五十嵐先生の意見書は、人事部に届きますね。

五十嵐 はい。人事部から話を聞いたAの上司は驚きました。なぜなら、上司はAの行っている業務について、本人がやりたくないと思っていることを知っていたからです。しかし、上司は私の指示通り、定時勤務にして黙って様子を見ていました。しばらくすると、Aは定時で帰宅し夜は好きなゲームができるから調子が良くなり、昼間も会社に出てくるようになって、勤怠は劇的に改善しました。それを見ていた周りの社員から、「一体、この制度は何だ」という不満があがったそうです。

そして、1カ月後の面談では上司とA、それぞれ個別に面談をしました。上司から「Aは困難な仕事をさせると以前から具合が悪くなる」と聞いて、それを本人に確かめると、そうだと認めました。そこで私は再度、就業制限を外して、今までのように仕事をするよう指示しました。

この社員は、ストレスチェック制度を悪用したと思われますか。

五十嵐 そこまでは言いませんし、いまの時点ではこの人が病気かどうかもわかりません。就業制限を外してから1カ月後にまた面談を行うので、そのときに彼の働き方と体調などをチェックしないと結論は出せません。ただし、また同じ状況で同じ症状が出てくれば、精神科医を受診させて、これまでの経緯や彼の性格などをチェックし、病気かどうかが初めて判断されます。

彼が嘘を言ったとは思いませんが、利用した節はあります。今後もストレスチェック制度によって、こうした困った例があぶり出されてくるのではないかと危惧しています。

面談では最初から精神科医に診てもらうことが必要ではないでしょうか。

五十嵐 確かにその通りですが、高ストレス者の面談に関与できる精神科医は極めて少数でしょう。ただ、問題のようなケースはやはり精神科医の協力が必要だと思います。