トップページインタビュー季節性うつ病やいわゆる「現代型うつ病」に、どう対応するのか
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ストレスチェック制度を考える(4)

季節性うつ病やいわゆる「現代型うつ病」に、どう対応するのか

2016.04.27   社団医療法人北九州病院・北九州古賀病院院長 産業医科大学名誉教授 中村 純 氏

社会医療法人北九州病院・北九州古賀病院院長 産業医科大学名誉教授 中村純氏
社会医療法人北九州病院・北九州古賀病院院長 産業医科大学名誉教授 中村 純 氏
1975年 久留米大学医学部卒業。1979年久留米大学大学院医学研究科博士課程修了。1979年米国テキサス大学ガルベストン校留学(2年半)。1994年久留米大学医学部神経精神医学講座助教授。1998年産業医科大学医学部精神医学教室教授。2015年3月 産業医科大学 定年退職。2015年4月 産業医科大学名誉教授、社会医療法人北九州病院・北九州古賀病院勤務。同年6月より現職

ストレスチェック制度の義務化から約4カ月が過ぎた。保健同人社とヒューマネージの調査によれば、施行後2カ月半の時点で準備状況について「ほぼ完了している」と回答した企業のメンタルヘルス担当者は5%未満で、「検討中/情報収集中」と回答したのは60%を超えていたという。また、制度導入にあたって懸念される点については、トップが「高ストレス者への対応」、次いで「規定の整備」「ストレスチェック実施後のフォロー体制」と続いた。専門的な知識を要する制度への理解、運用に対応する周囲との調整や連携など、様々な課題が浮き彫りとなっている。

連載3回の2回は、引き続き、社団医療法人北九州病院・北九州古賀病院院長 産業医科大学名誉教授の中村純氏に、制度の目的、うつ病が疑われる人への対応などについてお話をお伺いした。
(取材:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也 構成:同取材班 但本結子)

増え続ける精神疾患
1997年以降、労働の場が変化

中村先生は、「ストレスチェック制度は、途中から一次予防(発症予防)としての制度に性格が変わった」と言われましたが、精神疾患で発症予防はできるものでしょうか。

中村 精神疾患の予防ができれば、当然、病気を発症しないことになりますが、精神科医側から見ると、発症予防のエビデンスが十分にあるのかどうか疑問を感じざるを得ません。

では、この制度を導入することによって、うつ病患者を減らすことにつながりますか。

中村 難しいでしょうね。やはり一定以上の人は発症します。例えば双極性障害は遺伝負因が強い疾患であり、残念ながら自殺の問題もゼロにはなりません。厚労省は、この制度をメンタルヘルス不調者の発症予防と言っていますが、まずメンタルヘルス不調者の定義はあまりに幅が広く、精神疾患をはじめ、自殺、パワハラ、セクハラ全てが入るとしています。

それらを1つに定義してしまうことには、無理がありますね。

中村 それは、働く場での問題が深刻化していることが考えられます。制度導入の背景について前述した通り、近年、労働の場は大きく変化してきました。働くことに対する意識も若い世代と中高年では随分違う上、女性の社会進出も喜ばしい反面、実際の職場ではまだ女性の社会進出を認める空気が醸成されていません。

それを裏付けるように厚労省の調査によれば、1997年以降、働くことの不安や悩み、ストレスを感じている人は全体の6割に及び、これは体の問題で悩んでいる人よりも多くなっています。しかもそのほとんどが職場の人間関係と仕事の量や質によるストレスです。そして、自殺者の増加の問題もあります。

それから、精神疾患による社会的なコストですね。

中村 そうです。直接費用のかかる統合失調症とはまた異なり、うつ病や不安障害にかかる間接費用が3兆円近くにも及んでいます。また、うつ病の診断が増えてきたことも問題です。これは精神科医にも責任がありますが、難治性のうつ病が増えたのではなく、軽症、いわゆる現代型うつ病や適応障害によるうつ状態と診断されることが増えてきました。

加えて、労災の中では脳卒中や心臓疾患、心筋梗塞が800名程で落ち着いていくのに対して、精神疾患だけはずっと増え続けています。こうした事実から、対策が必要になってきました。そして、2006年から私も参加してまとめた「労働者の心の健康の保持増進のための指針」では、「セルフケア」「ラインによるケア」「事業場内産業保健スタッフ等によるケア」「事業場外資源によるケア」が、こころの健康づくり計画として策定されました。そして、職場環境等の把握、メンタルヘルス不調への気づきなど、これに対応するのが今回のストレスチェック制度ということになっています。

労働者の心の健康の保持増進のための指針(概念図)(クリックすると拡大)