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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト

矢部武の「孤立死」から「自立死」へ Vol.76

2人暮らしの高齢世帯の孤立死をどう防ぐか (3/3)

2018.04.20 ジャーナリスト 矢部 武

元気なうちから地域とつながっておく

高齢者が孤立しないためには、元気なうちから地域の専門職などとつながっておくことが大切である。そうすれば単独世帯に介護が必要になった時、スムーズに支援サービスを受けることができるだろう。

介護保険制度は家族がいることを前提に設計されており、単独世帯にとって使いにくいと言われている。介護保険は本人か家族が申請し、要介護認定の審査を受けて認定され、初めて受けられる制度だが、介護が必要になる時期を自分で予測するのは難しい。ある日突然、一人暮らしの高齢者に介護が必要になっても、自分で市役所か地域包括支援センターへ行って申請できる人は少ないだろう。

でも、元気なうちから地域の専門職などとつながっていれば、要介護状態になった時に申請しやすく、支援も受けやすい。また、夫婦のみ世帯で老老介護が始まっても、介護者の心構えなどについて学んだりしているので孤立を避けられるかもしれない。それらを踏まえて高齢者に地域のつながりづくりを支援している自治体があるので、紹介しよう。

東京都大田区の地域包括支援センターは2008年に、「おおた見守りネットワーク」(通称、みま~も)を設立。そこでは地域の医療、高齢者福祉の専門職たちが民間企業や行政機関と連携して、「いくつになっても安心して暮らし続けるまちづくり」を目指し、活動している。

「みま~も」が高齢者の健康、生きがい、医療介護などをテーマに毎月開催している「地域づくりセミナー」については、以前当コラムでも紹介した(「高齢者の“低栄養”と熱中症の予防対策」2017年8月29日)。

「みま~も」では、他に地域の高齢者が元気なうちから主体的に交流し、支え合っていくための様々なプログラムを用意している。地域の高齢者に活動の場と機会を提供するための「みま~もステーション」では、住民のボランティアが荒れ放題だった公園を改修して花壇をつくり、季節ごとの花を咲かせたり、「みま~もファーム」と名付けた菜園で野菜を育てたりしている。また、商店街の空き店舗を改修して住民の集会所にし、パソコン・手芸・手話ダンスなどのミニ講座を行ったり、菜園で取れた野菜などを使って「みま~もレストラン」を開いたりしている。

地域の高齢者が切り盛りする「みま~もレストラン」
地域の高齢者が切り盛りする「みま~もレストラン」

「みま~も」のシステムを発案した前出の澤登氏は、多様なプログラムを用意する意味をこう説明する。「地域づくりセミナーにきている人たちは今すぐ支援を必要としているわけではないので、ある意味心構えを学ぶ場となります。いろいろな事を知って、自分が今の時期に何をすれば良いのか、そうなった時にどうすればよいのかを知っておけば将来役に立ちます。一方、セミナーに興味を持たない人もいるので、レストランやミニ講座など多様なプログラムを提供する必要があるのです」。

さらに「みま~も」では、高齢者が元気なうちから専門職とつながる効果的な方法として、「高齢者見守りキーホルダー」を導入している。これは緊急対応に必要な情報(氏名、住所、医療情報など)を登録し、個々にキーホルダーを身につけてもらうというものだ。そうすれば外出先で倒れて救急病院に搬送された場合でも、キーホルダーに地域包括支援センターの連絡先が記載されているのですぐに身元確認できる。

「安心のかたち」を届ける「高齢者見守りキーホルダー」
「安心のかたち」を届ける「高齢者見守りキーホルダー」

単独・夫婦のみ世帯の高齢者を中心に、元気なうちから地域の専門職とつながることで孤立を防ごうという「みま~も」のシステムは現在、横浜市鶴見区、群馬県太田市、鹿児島県鹿児島市、大阪府岸和田市でも導入されているが、今後他の自治体にもどんどん広がっていくことが予想される。

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コラムニストプロフィール

矢部武 ジャーナリスト

1954年、埼玉県生まれ。米アームストロング大学大学院修士課程修了。1974年に渡米。「ロサンゼルスタイムス」紙 東京支局記者などを経て、フリーランスに。現在は、日米を行き来しながら、高齢者、雇用、健康、社会問題などをテーマに、取材・執筆活動を続けている。著書に『60歳からの生き方再設計』、『ひとりで死んでも孤独じゃない~「自立死」先進国アメリカ』、『携帯電磁波の人体影響』、『日本より幸せなアメリカの下流老人』など多数。