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トップページ医療コラム矢部武の「孤立死」から「自立死」へ2人暮らしの高齢世帯の孤立死をどう防ぐか

矢部武の「孤立死」から「自立死」へ Vol.76

2人暮らしの高齢世帯の孤立死をどう防ぐか

2018.04.20 ジャーナリスト 矢部 武

この冬2月から3月にかけて、東京都内で2人暮らしの高齢世帯の住人が共に亡くなり、死後しばらくして見つかったケースが6件相次いだ。世帯構造は夫婦、姉妹、母娘など様々だが、すぐに発見されなかった点で皆一致していた。警察の調べでは、いずれも事件性はなく、また老老介護による「共倒れ」の状況も見られなかったそうだ。それではなぜ、2人高齢世帯の孤立死は起きたのか。これまで高齢者の孤立死といえば単独世帯ばかりに目を向けてきたが、実は2人暮らしの世帯にも大きな孤立リスクが潜んでいることがわかってきた。

高齢の夫婦、姉妹、母娘が孤立死

4月3日付の毎日新聞と、4月5日のテレビ朝日の番組「ワイド!スクランブル」は、これら6件の事案について詳しく報じた。

まずは2月1日、豊島区上池袋で86歳の姉と79歳の妹が和室で倒れているのを、同じアパートの住民から通報を受けた区の職員が発見。いずれも死後約2週間だった。「ワイド!スクランブル」のレポーターが近所の住民に話を聞いたところ、この姉妹はアパートの大家さんで、他にもアパートや土地を持っていたという。少なくとも、2人はお金に困って餓死したということではなさそうだ。

次のケースは2月3日。東村山市に住む76歳の夫が浴槽内で、81歳の妻が寝室で亡くなっていた。夫は心筋梗塞を抱えてペースメーカーを使用し、妻は重度の糖尿病を患っていたという。いずれも死後数日だったが、比較的早く発見されたのは近くに住む息子が時々連絡を取っていたからだ。

続いて2月13日、町田市の姉(85)と弟(77)のケース。弟が寝室で倒れ、姉が浴槽に沈んでいるのを親族が発見。いずれも死後数日~1週間で、死因が特定できず、遺書も見つかっていないという。

4件目は2月19日、豊島区南長崎の86歳の母と60歳の娘だ。母が寝室で、娘が台所の床で倒れていたが、新聞がたまっているのを不審に思った新聞配達員が通報して発覚した。いずれも高血圧など心臓疾患を抱え、死後約2週間だった。

5件目は3月6日、北区浮間の姉(85)と妹(82)。姉が寝室で、妹が風呂場の脱衣所で倒れているのをマンション管理組合から連絡を受けた警察官が発見した。姉が死後約2週間、妹はその数日後だったという。

最後は3月13日、北区滝野川の夫(83)と妻(85)のケース。夫が寝室で、妻が別の寝室で倒れているのを娘夫婦が発見。いずれも死後約2週間だった。

これらの世帯は2人暮らしなのになぜ、同時に亡くなってしまったのか。可能性として考えられるのはインフルエンザである。この冬は記録的な寒さで、インフルエンザの患者報告数が過去最高を記録するなど猛威を振るった。特に高齢者がインフルエンザにかかると、肺炎を併発するなど死亡リスクが高くなるという。

変死事案を調べる東京都監察医務院の福永龍繁院長は、インフルエンザの可能性について、「都市部において高齢世帯は孤立しがち。2人が同時にインフルエンザにかかり、高熱で助けを求めることもできないまま、亡くなったケースもあるのではないか」(毎日新聞、2018年4月3日付)と述べている。

もう1つ考えられるのは、急激な気温の変化によって血圧が激しく上下し、心筋梗塞や脳梗塞などを起してしまうヒートショックである。実際、6件のうち3件は一方が風呂場の脱衣所や浴槽で亡くなっている。しかし、もう一方は別の場所に倒れていたので、2人ともヒートショックということではなさそうだ。

それにしても2人高齢世帯の孤立死が6件も相次いだのは不思議だが、それを言っても始まらない。大切なのは単独か2人世帯かにかかわらず、突然亡くなった場合、数日以内に発見されるように準備しておくこと。そのためには元気なうちから地域とのつながりをつくり、定期的に(できれば毎日か数日ごと)誰かと連絡を取ったり、誰かが家に立ち寄ったりするようにしておくことである。

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コラムニストプロフィール

矢部武 ジャーナリスト

1954年、埼玉県生まれ。米アームストロング大学大学院修士課程修了。1974年に渡米。「ロサンゼルスタイムス」紙 東京支局記者などを経て、フリーランスに。現在は、日米を行き来しながら、高齢者、雇用、健康、社会問題などをテーマに、取材・執筆活動を続けている。著書に『60歳からの生き方再設計』、『ひとりで死んでも孤独じゃない~「自立死」先進国アメリカ』、『携帯電磁波の人体影響』、『日本より幸せなアメリカの下流老人』など多数。