• ビジネス
  • xTECH
  • クロストレンド
  • 医療
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版
  • 日経BP
21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
トップページ医療コラム矢部武の「孤立死」から「自立死」へ英国の「孤独担当大臣」の新設と日本の孤立死

矢部武の「孤立死」から「自立死」へ Vol.75

英国の「孤独担当大臣」の新設と日本の孤立死

2018.03.16 ジャーナリスト 矢部 武

2018年1月17日、英国のテレサ・メイ首相は「孤独担当大臣」を新設し、声明でこう述べた。「あまりにも多くの人たちにとって、孤独は現代社会の悲しい現実である。私はこの重要な課題に向き合い、お年寄り、介護者、愛する人を亡くした人、自分の考えや気持ちを分かち合う相手がいない人たちが抱える孤独の問題に対処するため、行動したい」。

英国では孤独を感じている人が900万人以上いるとされ、人口6560万人のおよそ7人に1人にあたる。65歳以上の高齢者では、およそ10人に3人が孤独を感じながら生活し、10人に1人は1カ月以上誰とも会話しないことがあるという。「テレビやラジオが唯一の友だち」という人も少なくないようだ。

このような状況を受け、英国は国をあげて孤独の問題に取り組み始めた。一方、世界でもダントツに高齢者の孤立度が高く、悲惨な孤立死が多発している日本はこの問題にどう対応すべきか。英国の経験を踏まえて、改めて考えてみたい。

国をあげて孤独の問題に取り組む

英国の政府とNPOが協力して高齢者の孤独問題に取り組んでいることは、以前、当コラムで紹介した。

“高齢者の孤立”は世界共通の課題~寂しさは健康リスクを高める」(2015年10月22日)。

英国には高齢者向け支援を行っているNPOがたくさんあるが、この記事では英国最大の慈善団体「エイジUK」の取り組みを中心に紹介した。そして政府が積極的にNPOの活動を支援していることにも触れたが、このような協力体制ができていたことも、今回のメイ首相の決定を後押ししたのではないかと思われる。

女性の権利擁護や社会問題などに積極的に取り組んでいたジョー・コックス議員(労働党)は数年前、英国内の孤独問題について超党派で考えるための孤独対策委員会(COL)を設置した。ところがEU離脱をめぐる国民投票直前の2016年6月、コックス議員は白人至上主義者に銃撃され死亡した。

その後、COLの超党派の議員がコックス議員の遺志を受け継ぎ、13のNPO団体の代表らを招いて、孤独問題についての議論を続けた。そして2017年12月、孤独問題に関する国家戦略の策定、孤独担当大臣の新設などを政府に求める報告書を作成。それを受けて、メイ首相が新たな決断をしたのである。

新任のトレイシー・クラウチ孤独担当大臣は今後、NPOの代表らとも相談しながら、国家戦略を策定し、対策を進めることになる。孤独問題は高齢者に限らず、若者や一人親家庭、難民などにも広がっているが、特に高齢者への対応は重要だという。なぜなら高齢者の孤独は複雑で対応が難しいからだ。

若者なら孤独を抱えていても、自ら助けを求めたり、夜遊びに出かけたりして寂しさを和らげることができる。でも高齢者の場合は、身体が弱っていたり、移動手段がなかったり、プライドが邪魔して助けを求められなかったりするケースが少なくない。だから、高齢者が必要な支援を得られるようにするための対策が求められているのである。

このコラムニストの過去の記事

コラムニストプロフィール

矢部武 ジャーナリスト

1954年、埼玉県生まれ。米アームストロング大学大学院修士課程修了。1974年に渡米。「ロサンゼルスタイムス」紙 東京支局記者などを経て、フリーランスに。現在は、日米を行き来しながら、高齢者、雇用、健康、社会問題などをテーマに、取材・執筆活動を続けている。著書に『60歳からの生き方再設計』、『ひとりで死んでも孤独じゃない~「自立死」先進国アメリカ』、『携帯電磁波の人体影響』、『日本より幸せなアメリカの下流老人』など多数。