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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
トップページ医療を変える【開催報告】ウェルビーイング イノベーション シンポジウム 〜次世代ヘルスケアが実現する、新しい社会を探る〜

【開催報告】ウェルビーイング イノベーション シンポジウム 〜次世代ヘルスケアが実現する、新しい社会を探る〜

2017.08.08 構成:21世紀医療フォーラム取材班 安井透 文責:同事務局長 阪田英也

2017年6月23日(金)、東京・三田の慶応義塾大学西校舎において、「ウェルビーイング イノベーション シンポジウム~次世代ヘルスケアが実現する、新しい社会を探る~」が開催された。“well-being society”とは、「誰もが等しく、健康かつ安心に、生き生きと誇りを持って暮らすことができる社会」を指している。こうした社会の実現は、持続可能性を高めるだけでなく、テクノロジーとシステムの革新による新しい価値や産業の創出、より豊かな社会の創造に繋がるものであり、技術革新による新産業を育成することで超高齢社会を乗り越えていくという意図がある。本シンポジウムでは、国内外で進行しているウェルビーイング イノベーションの事例を紹介すると共に、産・官・学でディスカッションを行い、次世代ヘルスケアのあるべき姿について議論を行うことを目的としている。

慶應義塾大学塾長の長谷山彰氏の挨拶、慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教授の宮田裕章氏の基調講演、パネルディスカッションについてリポートする。

産学公が参加し、新産業の創出を目指す
慶應義塾大学殿町タウンキャンパス

冒頭、慶應義塾大学塾長の長谷山彰氏は、2016年4月、川崎市殿町国際戦略拠点キングスカイフロントに開設した慶應義塾大学殿町タウンキャンパスについて、次のように語った。

このキングスカイフロントは世界的な成長が見込まれるライフサイエンス・環境分野を中心に、世界最高水準の研究開発から新産業を創出するオープンイノベーション拠点であり、羽田空港の対岸に位置している。すでに公益財団法人実験動物中央研究所、川崎生命科学・環境研究センターLiSE、ナノ医療イノベーションセンター(iCONM)といった中核施設が活動を開始しており、ここに研究機関として慶應義塾大学殿町タウンキャンパスが昨年4月に開設された。同タウンキャンパスは、産・学・公の協働を旗印としており、産(富士フイルム、サイバーダイン)、学(東京大学、東京工業大学、横浜市立大学)、公(神奈川県川崎市、横浜市、大田区)が参加している。

2035年を見据えた社会保障制度を構築
日本流プラットフォームビジネスを生み出せ

続いて、「ICTの変革が実現する、次世代ヘルスケア -ビッグデータ時代、第3次AIブームの先のスタンダード」をテーマに慶應義塾大学医学部医療政策・管理学教授の宮田裕章氏が基調講演を行った。

宮田裕章 氏
宮田裕章 氏

宮田氏によれば、「少子化、高齢化、人口減少がネガティブに捉えられるのは先進国では日本だけだ。これまで日本は他の先進国の政策を真似れば良かったが、今後は最初に解答を見つけなければならない」と課題を挙げ、その解決策の鍵を握るのは1600兆円の個人資産だという。この資産のほとんどを高齢者が持っており、団塊の世代が医療消費者になる頃には、1600兆円がシルバー市場に出回り、少なくとも10年間は医療・福祉分野はバブルのような状態になる。「ただし、それだけを見越してシステムを構築すると、その後の日本は社会保障に押し潰されてしまう。そうならないために、2025年の高齢化のピークにシステムを合わせるのではなく、10年後の2035年を見て社会保障制度を構築すべきだ」と宮田氏は危惧する。これが塩崎厚労相の下、宮田氏も委員として参加した「保険医療2035」の考え方である。

もう一つ、宮田氏が少子高齢化や人口減少を乗り越えるイノベーションの核として挙げたのがICTである。「日本のICTは弱いと言われているが、得意とするモノづくりと融合したり、プロフッショナルの技術とICTを融合したりすることで、日本流のプラットフォームビジネスが生み出せる」と強調する。

その日本流のプラットフォームビジネスの可能性があると宮田氏が推すのが、滋賀県で展開中の「クラウドを用いた病理診断ネットワーク」だ。当初は病理医の偏在を解決するため検体画像をクラウドに上げ、病理医が遠隔診断するという仕組みだったものが、数十施設、数百施設から病理データが集まることで、全国の病理医が精度の高い診断をし、AIが作れることに気づきはじめた。

「このまま拡大していけば将来的に日本の病理医が、自分たちで作ったAIのサポートを受けて世界中の病理診断を行えるようになる。これがプロフェッショナルの技術とICTを組み合わせた日本流のビジネスモデルになるのではないか」と宮田氏は提示する。

加えて、少子高齢化の日本の中だけでシステムを考えると、店じまいという結論になるが、世界を巻き込んだ形でビジネスを始めれば展開が変わってくるという。その一例として、「AMEDでは、この遠隔病理診断事業や、放射線学会や消化器内視鏡学会が行っているデジタルデータのクラウド上での解析事業を合わせたJEDI(Japan Excellence of Diagnostics Imaging)という医療ビッグデータのプラッイトフォーム事業に予算を配分している」と述べた。

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