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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
トップページ医療を変える自分の限界が患者の命の限界であってはならない 多職種が連携して、最善の治療を尽くす

自分の限界が患者の命の限界であってはならない 多職種が連携して、最善の治療を尽くす

筑波大学医学医療系循環器内科学 教授 青沼和隆 氏 第4回

2016.07.14 取材:21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也 構成:同取材班 但本結子
青沼 和隆 氏
青沼 和隆(あおぬま かずたか)氏

1977年 山口大学医学部卒業。1982年 東京医科歯科大学大学院医学研究科 内科学修了。同年、米国フロリダ州マイアミ心臓研究所(Miami Heart Institute)へ、Clinical Research Fellowとして留学。1984年11月、東京医科歯科大学第二内科医員。同年12月、武蔵野赤十字病院内科副部長。1987年 土浦協同病院内科科長。1991年 横須賀共済病院内科部長。1996年横須賀共済病院 循環器センター主任部長併任。1999年 東京医科歯科大学医学部臨床助教授。2001年 聖マリアンナ医科大学非常勤講師。2002年 東海大学医学部非常勤講師。2004年 筑波大学人間総合科学研究科病態制御医学循環器内科講師。2006年より現職

○専門領域 
臨床電気生理学 臨床不整脈学 循環器病学 心臓病学
○研究分野
臨床電気生理学 不整脈の非薬物治療 不整脈の薬物治療
○学会
日本循環器学会理事 日本不整脈心電学会理事 臨床電気生理学研究会幹事 日本成人病(生活習慣病)学会理事 日本心不全学会評議員 日本臨床生理学会評議員 Circulation Journal Associate Editor アメリカ心臓病学会臨床心臓病会員 Journal of Cardiology Associate Editor  Journal of Arrhythmia Editor in chief Heart Rhythm正会員 

 不整脈カテーテル・アブレーションの分野において、全国の大学でトップの症例数と治療成績を有する筑波大学医学医療系循環器内科教室。高度な手技を実践できる数多くのスタッフを揃え、新たなアブレーション法を開発するなど、専門的な治療体制を確立している。特に難治性不整脈では年間400例以上を完治させ、埋め込み型デバイス治療では年間150例以上の実績を持つ。

 その筑波大学医学医療系循環器内科教室を2006年から率いてきた教授の青沼和隆氏は、同大学の21に及ぶ各関連病院と共に、教育や研究をテーマに対話を重ね、より良い関係構築を模索してきた。青沼氏は「異なる要素の調和」を目標に掲げ、大学病院の連携や地域医療のあり方など、異なる要素の協調と融合に尽力している。

 連載4回の第4回は、筑波大学医学医療系循環器内科学教授の青沼氏に、ヨーロッパの事例をもとに、若い医師がどのように経験を積んでいけば良いのかなどについて、お話を伺った。

自分のサイロを満たすために
様々な経験や考え方を吸収

より細分化された医療の中で、今後、若い医師はどのように経験を積んでいけば良いでしょうか。

青沼 例えば、心血管外科や循環器内科全体で行うカンファレンスで、個々の症例に対してディスカッションしていけば、「これは外科でやった方がうまくいく」「このケースは内科が入った方が簡単だ」あるときは、「ハイブリッド治療として内科・外科合同で行った方が良い結果が得られる」といったことがわかるようになってきます。たとえ自分の経験は少なくても、このような多職種によるカンファレンスを通じて、他科の医師たちが経験を基に話し合ったことを聞くことで、その立場になったときに活かすことができます。様々な立場の人の豊富な経験や考え方を吸収すれば、各サイロの間を埋めることができ、かつ満たしていくことが可能になります。

ただ、外科がない施設でPCIばかりやっている医師や、外科との良好な関係がない施設で育った医師は、外科に送る、あるいは心臓リハビリを行うなどの選択肢がなくなります。早いうちから一点に深くエネルギーを集中することも大切な反面、幅広い視野と多くの治療アイデアを持っていることも非常に重要です。むしろ細かいところだけを見ていては、自分の限界が患者さんの命の限界になる。しかし、広い見識を持てば、自分の限界を超えて様々な人の力やアイデアで治すことができます。

新しい治療法や医療機器が登場してきたことで、若い医師はこれまでより学ぶ量が増えたのではありませんか。

青沼 学問を体系的に学ぶ量は、昔に比べて格段に増えています。例えば私たちが研修医であった時代は胃カメラが普及しておらず、ほとんどの施設で胃透視だけで診断していましたし、当然、大腸カメラもないから大腸造影でしか診断できませんでした。現在は胃カメラや大腸カメラによる診断のみならず、ポリープも切除でき、がんもESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)で切除できる時代になりました。そうなると今度はどのような症例をどう治療するのか、そこまで学ばなければならなくなり、勉強する知識量が膨大になっています。

しかし、学問の進化・進歩にもプロセスがあります。それはあたかも生物が1つの細胞から分化し、魚類から両生類、爬虫類、やがて哺乳類となり、ホモサピエンスへと進化したことと同じように、やはりプロセスがあるのです。最初から進化・成長した現代人として誕生するのではないため、進化のためのプロセスを繰り返すのと同時に、たとえ人間がどれほど進化しても、医学がどれだけ進歩しても、基礎から学ぶというプロセスは変わりません。

医学が進歩したのであれば、6年の医学部教育では足りないと思われませんか。

青沼 もちろん医学部の6年間では不十分であって、医師として卒後研修を開始した時が医師としての勉強の始まりです。つまり、初期研修から一人前の医師としての学びが始まるのであって、その後どのように継続して学ぶのかが、最も重要です。医師という職業はそのキャリアを終えるまで、学び続けるものだと思います。

私たちの時代は医局に入っても月5万円ほどの給与で、大学院に入学したら無給でした。また少し前の世代ではインターン制度があり、卒業後2〜4年間、28歳頃まではずっと無給で働いていたようです。そんな時代とは違い、いまは研修医で30万円以上、後期研修医になれば40万円以上は支給されます。こうした状況は、以前の日本とは比較にならないほど改善していますし、また欧米に比べても研修医の待遇は良いといえます。

以前の定年は60歳で、35歳で一人前になっても25年しか働けなかったところ、現在は65歳まで定年が延び、いまの医学生が定年を迎える頃には70歳以上が定年になって、35歳からでも専門医として35年は働けるようになっているでしょう。若い人たちには、「何をそんなに焦っているのか。10年ぐらい勉強や下積みしたっていいじゃないか」と伝えたいですね。その10年が、その後の30年、35年を実りあるものするための土台となるので、そうした土台となるものをしっかりと学ぶ道筋をつくってもらいたいと思います。

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