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21世紀医療フォーラム 良い医者、良い医療を創るプロジェクト
トップページ医療を変える眼疾患の早期発見、治療効果の解析に重要性を増す OCT(Optical Coherence Tomography)

住友病院眼科部長 五味 文氏 インタビュー 第2回(連載2回)

眼疾患の早期発見、治療効果の解析に重要性を増す OCT(Optical Coherence Tomography)

2015.06.10 構成:21世紀医療フォーラム取材班 但本結子 文責:日経BP社 21世紀医療フォーラム事務局長 阪田英也
五味 文 氏
住友病院眼科部長 五味 文 氏
1989年大阪大学医学部卒業、大阪大学眼科入局。1990年大阪労災病院眼科。1997年大阪大学大学院入学、2001年同大学院終了、大阪大学眼科助手。2006年大阪大学眼科講師。2012年住友病院眼科部長、大阪大学医学部招へい准教授
○所属学会 日本眼科学会 日本網膜硝子体学会 日本眼循環学会 日本糖尿病眼学会 日本眼科手術学会 American Academy of Ophthalmology

日本は世界でも類を見ない超高齢社会に突入している。健康長寿を延伸するためには、視覚、聴覚、嗅覚といった感覚器の機能を維持することが重要である。中でも、視覚が衰えることで、QOLの質は著しく低下する。中高年の20人に一人が緑内障を煩っているとされるが、視野に異常が出る早期の段階で自ら眼科での検査を受けることが求められる。

その早期発見、早期治療において、注目を浴びているのが、「OCT(Optical Coherence Tomography:光干渉断層計)」である。OCTの登場によって、従来の眼底検査では見ることができなかった網膜の断面が見られるだけでなく、網膜の出血の範囲や深さ、むくみまで確認することが可能になった。OCTを必要とする代表的な疾患として、緑内障、加齢黄斑変性、黄斑上膜、黄斑浮腫、糖尿病網膜症などが挙げられる。検査は専用の台に顎を乗せるだけで、器械が直接目に触れることもなく、数分程度で済むため、患者への負担も少ない。

連載2回の第2回は、OCTの構造から、活用することで何が解析できるのか、さらに進化する機能などについて、住友病院眼科部長の五味文氏にお話を伺った。

OCTは今後の眼科領域に不可欠
自覚症状のない初期の緑内障も発見

五味先生は、OCTの登場と治療がリンクしていると言われました。OCTが使われるようになったのも同じ頃ですか。

五味 1990年に山形大学元教授の丹野先生が日本の特許を出願されましたが、ほぼ同時期にMITの学生が米国出願し、1996年に発売が開始されました。その後、この10〜20年であっという間に進化しました。当初は解像度も良くなく、網膜の層構造も粗く見えているだけでしたが、今は非常に高画質の画像になりました。

OCTで得られる画像について、教えてください。

五味 OCTでは光干渉の原理を使い、細胞の構造や微妙な層構造を信号の強弱として捉えます。

眼底をOCTでみる場合、網膜という組織は約300μmの厚みを持っていますが、10層の層構造からなっています。その1層1層をOCTで区別することができます。黄斑の中心は、中心窩とよばれるくぼみがありますが、OCTでこのくぼみも観察できます。OCTでこれだけ詳細な構造がわかるので、網膜にむくみが生じたり、層構造に乱れが出たりといった異常も、容易に確認できます。

本来、OCTは断面図ですが、それを連続して撮ることで3Dの画像が得られます。地図の等高線のように腫れて山になっている箇所を検出したり、別の方向のスライスで切って所見を見たりすることもできます。

CTやMRIと似ていますね。

五味 どれも体の内部の構造を見ることができるわけですから、よく似ていますね。私たちはOCTのことを患者さんに説明するときに、「目のCT」ということがあります。通常のCTはComputed Tomographyの略で、OCTのCoherence Tomographyとは違いますが。

OCTの検査は手間がかかるのでしょうか。

五味 被験者は数秒間中心を見つめるだけです。技術の進歩のおかげで測定時間が短縮されたため、視線の安定しない視力の悪い人でも、網膜の断層像をきれいに映すことができるようになりました。また、眼底の広い範囲をカバーできるようになったことで、中心から離れた場所の異常も検出できるようになりました。解像度の向上とソフトウェアの進化もあり、得られた画像をさまざまな切り口で解析できるようになってきています。

例えば、視神経とその周囲の神経線維を立体的に見ることで、自覚変化がない初期の緑内障でも捉えることが可能です。それに、詳しい眼底検査は瞳孔を開いて行うため数時間眩しい状態が続きますが、OCTは瞳孔を開かなくても撮れます。

ということは、OCTは検診向きといえますね。

五味 はい。通常の健診では無散瞳カメラで眼底写真をとって評価をします。瞳孔を開かないので写りが悪いといったことがありますが、OCTでバックアップすることで異常所見の見逃しが避けられ、より確実に見つけられます。当院では3年前から検診にオプションでOCT検査をとり入れています。

OCTで病気が見つかることが多い年代はありますか。

五味 50代から上の方ですね。中心性脈絡網膜症もそうですが、黄斑疾患や緑内障も40代くらいから発症率が上がります。当院の検診でも、眼底写真だけでは判別がつきにくかった糖尿病の黄斑浮腫の方、初期の加齢黄斑変性の方など、OCTを併せて撮っていたことで病気が見つかった例を経験しています。検診のOCTで異常が検出されたのは、OCT検査を受けられた方の約10%です。

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