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人を組み替える

2016.07.12

中小企業のEU進出、最初の第一歩

川崎 英一郎

EU各国に進出する前に──ドイツのオフィス事情

国際 多様性 コミュニケーション

イギリスが離脱してもEUは、人口においてもGDPにおいても、いまだ大国アメリカに伍する規模ですし、実質的な経済圏ということで言えば、まだアメリカを上回ります。それは一見、魅力的な市場に思えますが、ただ単に規模だけを尺度にして比べることはできません。

アメリカは人種のるつぼと言われるものの、米語(英語)が事実上の公用語で、ビジネス慣行も当然それに従ったものになっています。それに比べてEU圏は、様々な国が集まる多様性のあるグループです。島国育ちの日本人には理解が難しいのですが、国、言語、文化や習慣が異なる国々を十把一絡げにすることはできません。

例えばラテン系の人たち。地中海沿岸諸国の人たちは陽気で、友達としての付き合いなら良いのですが、期日を守るという、ビジネス・ルールにおいてはどうしても外せない点でルーズなのです。少し大袈裟かも知れませんが、お金がからむことについて言えば、彼らは日本人にとっては“宇宙人”と言ってよい。

例えば請求書の支払期日。ドイツでは30日以内の支払いが一般的です。そして実際に、ほとんどの企業がそのように支払ってくれます。それどころか、僅か数日から1週間ほどの短期間で支払ってくれる会社もよく見かけます。僅か2%程度ですが、1週間以内に支払うとディスカウントされるシステムになっていることもあります。

それが地中海沿岸諸国では、90日や120日後払いが当たり前で、その期日さえ守られないことがしばしば起こります。製品の納期などでも同じように、遅れが頻繁に発生します。故意や悪気でやっているわけではありません。物事に対する考え方、常識が違うとしか言いようがありません。

そういう問題点を前もって知っていれば、注文の際には納期に余裕を持たせる、販売の際には前払いに限る、などという手を打てると思いがちですが、いざ実際に商売をしてみると、注文欲しさ、お客さん欲しさにつられて、ついついそのタブーを犯してしまいます。そして結局、痛い目に遭うのです。EUが抱えているギリシャ問題などは、そういうことを考えると簡単に答えが出て来ます。常識の違う人とは、最初からビジネスをしないのも一つの方法です。

弊社にも地中海沿岸諸国にお客さんがいます。彼らに対しては前払いのみの商売に徹しています。例外なくです。そうしないと火傷を負います。では大手企業ではどうしているのでしょうか。大手では、各国に子会社を置いています。でもそれは資金も人材も豊富な大手でのお話。中小企業はどうしたら良いでしょうか。欧州全体に対してどこかの国に子会社を置き、その国からEU全域に販売するには、どの国に子会社を置くのが一番良いでしょうか。

例えばオランダという選択があります。オランダには欧州一のロッテルダム港があります。小国の特徴で、オランダ人は一般的に英語ができます。第3番目の言語ができる人たちも結構います。それでいて人件費はドイツよりやや安く、物流に長けた企業が集まっています。なぜかそれでも、日本の会社のヨーロッパ代表現地法人がオランダにあるというお話はあまり聞きません。

ではドイツはどうでしょうか。ご存じの通り、ドイツはEUを経済的に引っ張っている牽引国です。地理的にもほぼ中央に位置していて、欧州中の物凄い数の物流トラックが、ドイツのアウトバーンを東西南北交差しています。日本商工会議所の会員数も、ロンドン、パリのそれを凌ぎ、デュッセルドルフが欧州で一番です。

ドイツの良い点は、ドイツ人が日本人に似ているという点がまず最初に挙げられます。両者をただ単に比べてみれば全く違う人種ですが、勤勉性や約束を守るという点で、EUの国々の人たちの中では日本人に一番近いと言えます。まじめさと約束を守るという、ビジネスにおいては欠かすことのできない点で、ドイツ人はEUで最も頼れる人種に属します。そういう国でビジネスをスタートするなら、安心して進められるのではないでしょうか。

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プロフィール

川崎 英一郎 (かわさき えいいちろう)

1959年生まれ。1979年渡独、食料品業界、工作機械業界、自動支払い機器関係での経営畑が長く、現在は4U GmbH社の代表取締役。最もページビューが多いドイツ総合情報サイトの一つ「ネットdeデュッセル」や、ドイツ人向け日本総合情報サイト「Likejapan.de」、進化にもとづいた健康論サイト「進化健康論」、元気のない日本の応援サイト「ganbarenihon.com」といったサイトも運営中。