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モノと道具を再構築する

2016.09.28

席替えで社長の隣!? 「ゆるやかにオープン」なオフィスの作り方

森田 美紀

コペンハーゲン流「幸せ」なオフィスデザイン

国際 コミュニケーション 生産性

席替えで社長の隣になってびっくり

社内で異動などがあれば、新しい座席に移動して、新しい風景の中で仕事をする日々が始まります。しかし、社長ばかりは社長室があって、席がずっと変わらなかったりするものです。

もちろん、同じ席で落ち着いて仕事をすることは大切なこと。でも、もしかしたら、いつも変わらない風景の中で仕事をするうちに、知らないうちに考え方が凝り固まっていたり、社員たちのことが見えなくなっていたりするかもしれません。

私が以前に働いていたデンマークのデザイン会社では、なんと3カ月に1回、「社員総席替え」がありました。大きな1フロアに50人ほどが座っているオフィス内で、皆が自分のコンピューターと備品を運び、新たに決められた席に座ります。書類の多い経理さんなど、どうしても動けない人はそのままですが、それ以外の社員は全員、社長ももれなく席替えをします。

ある席替えの日のこと、新しい席を見ると、なんと社長の隣でした。本当に驚き、もちろん緊張しました。でも、それまであまり話す機会のなかった社長と、毎日さらっと挨拶ができるようになったり、自分が今抱えている小さなプロジェクトについても、社の代表の意見を聞ける機会を持つことができたり、とても貴重な経験でした。

コミュニケーションも、自分の居場所も大切にする

席の配置を決めるのは、社長に次ぐ実務レベルの責任者、デンマークでいうところのデザインダイレクターで、プロジェクトでの繋がりや、今まで見ることのなかった新しいことが起こりそうな組み合わせ、新人とベテランの組み合わせなど、会社のこれからの行く末を左右する重要な仕事として、いろいろな思いを巡らせて決めていきます。

しかし、実は歴史を振り返ると、北欧では大学教授の部屋のように一人、二人の少人数が机と棚だけ配置された小さな個室を持ち、静かに仕事をすることが普通でした。お昼ご飯の場などでコミュニケーションはあっても、それ以外はほとんど人との交流はありません。古い建物を長く用いている市役所や学校などでは、いまだによくある構成ですが、チームの仕事における質の高いコミュニケーションが大切と考えられている現代では、この形式でつくられるオフィスはあまり見かけなくなりました。

とはいえ、デンマークではそれを心地良いと思う人が多いのも事実です。なので、先進的なIT企業でよく取り入れられているフリーアドレス(特定の席がなく、毎日自由に席を選べる仕組み)のオフィスはあまり聞いたことがありません。個人主義が確立しているデンマーク人にとって、やはり自分の居場所がないのはちょっと心細いのかもしれません。

「ゆるやかにオープン」なオフィスはどうやって作る?

フリーアドレスよりも、デンマークで最近活躍している会社のオフィスで多く見られるのは、オープンな1フロアを背の低い可動式の収納家具で、空間を仕切りながら席を配置する構成です。仕事の大きさや特性によって柔軟にチームを組み替えたり、皆が座れる大きな机やソファーを置き、憩いのスペースを作ったり、使いながら必要に応じて居場所をその都度、変えていくことができるのが特徴。居心地の良いプライベートなスペースを確かに確保しながらも柔軟性をもった席配置のオフィスで、皆が自分の領域をゆるやかに定義して、快適に働いています。

デスクでの挨拶が小さなミーティングに発展して、もっとじっくり話し合いたくなれば、ゆったりとしたラウンジチェアのあるコーナーに移動する。そして親密なリラックスした空間で、たくさんの新しいアイデアをぶつけ合ってみる。イノベーションは、こういった場面から始まるのかもしれません。

日本に比べてデンマークでは、働く場での上下関係が圧倒的に希薄で、上司にも率直に自分の意見を言える環境があります。その気質が、この柔軟な席配置を可能にしている面はあるでしょう。

でも、職場の雰囲気はレイアウト一つで変わるもの。ましてや日本のオフィスによくあるような、1フロアに机が並ぶオープンなレイアウトならば、意外と簡単に取り入れられるのではないでしょうか。社長室を抜け出して普通の社員の横に座り、皆と同じような心持ちで仕事をしてみれば、きっと新鮮な発見があるはずです。

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