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デンマークで生まれた照明ブランド「ルイスポールセン」のコペンハーゲン本社・大会議室

モノと道具を再構築する

2016.07.13

快適なオフィスの「光のムラ」の作り方

森田 美紀

コペンハーゲン流「幸せ」なオフィスデザイン

デザイン 国際 効率

バーのあかりから、オフィスの「光のムラ」を考える

前回、明るすぎる空間が快適に働く妨げになってしまうことをご説明しました。とはいえデンマークのオフィスも、多くの場合は日本と同様に大きなワンフロアで、細かく場所が仕切られているわけではありません。それでは、デンマークの人々はどのような方法でオフィスの光環境を作っているのでしょうか。

ポイントは、その場その場にあった照明器具を活用して、一つの空間の中に光のムラを作ること。例えば、バーのインテリアを想像してみてください。壁に並んだお酒のボトルを照らすスポットライトは明るく、バーテンダーとのおしゃべりを楽しむバーカウンターも、お互いの顔がわかるくらい、ほんのりと明るくなっています。離れたところにあるソファ席は暗く、リラックスした雰囲気を演出します。

もちろんバーは、オフィスとは用途がだいぶ異なります。働くにはさすがに暗いため、ついつい居眠りしてしまいそうです。でもオフィスも、その場所場所に適した明るさ、つまりムラを作り出すことによって、全体の快適な空気感を作り出すことができるという意味では、バーと一緒。目の神経も肩や腰などの筋肉と同様、ずっと同じ光の強さを見ていると、凝って疲れてしまうのです。

デスクではデスクライト、会議室にはペンダントライト

それでは、オフィスの中それぞれの空間について考えてみましょう。オフィスで最も長い時間を過ごすであろう、個人の机。通常、書類を読んだり、一人で集中して物事を考えたりするのに使われます。ここでは光が最も濃いデスクライトを活用し、目線よりも下で点灯させることをお勧めします。目線より下に向かって光を点灯することで、光がデスクの上だけに落ち、光源に目が触れないので視神経を過剰に刺激することなく、明るい机の上で快適に作業をすることができます。

次は会議室。会議室では、集まってアイデアを出し合うことが大切です。前回も紹介したように、シーリングライトの一様な明るさは目の連続した緊張状態を作り出し、無意識のうちに疲れを引き起こしてしまいます。緊張して凝り固まった頭では、なかなか良いアイデアは出ないもの。そこで、リラックスできる環境を作るために、家庭で使うような、天井から吊り下げるペンダントライトを使うのはいかがでしょうか。

冒頭の写真の会議室は、デンマークで生まれた照明ブランド「ルイスポールセン」のコペンハーゲン本社・大会議室です。天井から釣り下がっているペンダントライトは「PHランプ」。デンマークを代表する照明デザイナー、ポール・ヘニングセンがデザインし、発売後50年経った現在でも名作として人々に親しまれています。このPHランプの特徴は、ランプをどこから眺めてもその中心にある電球が見えない設計にあります。

PHランプでは、光源から強く放たれた光線が、ゆるやかな曲線を持つランプシェードに反射して、目を直接刺激することなく周囲を優しく照らします。この柔らかな光は会議室の机を中心に、まとまりのある親密な空間をつくりだします。一方で、ライトの真下だけは穴が空いているので多くの光が落ち、時には机の上に置いた小さな字が並ぶ書類も明るく照らしてくれます。機能性もきちんと保ちながら、リラックスして会話のできるような環境を作り出す。まさにペンダントライトは会議室にうってつけの照明なのです。

オフィスにもっと「陰翳」を

デンマークの規格 Dansk Standard では、廊下や階段などの人が滞在しない動線となる場所は、50ルクス以上(夜の商店街アーケードくらいの明るさ)であれば良いと決められています。屋内の割にかなり暗いようにも感じますが、見えずに怪我をするなんてことさえなければ、移動中に明るく見やすい空間である必要はないのかもしれません。

このように、一つの繋がった空間の中でも、照明器具の種類・電球のワット数などを考慮することによって、明るい場所・暗い場所のメリハリをつけることができます。谷崎潤一郎も「陰翳礼賛」の中で、日本的な美は陰の中に宿ると語っています。一度、オフィスの明るさだけでなく、陰についても考えてみてはいかがでしょうか。

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暗いオフィスの秘密

気持ちの良いオフィスインテリアで欠かせないもの、もちろん机や椅子などの身の回りのものが快適であることが大事ですが、その前に、明るさについて書きましょう。オフィスの明るさに、推奨される基準があるのはご存知でしょうか。

プロフィール

森田 美紀 (もりた みき)

大阪市立大学で建築家・竹原義二の元で建築意匠を学び、2012年からデンマーク王立芸術アカデミー建築学校留学。修士課程を修了し、デンマークの建築家資格取得。大学院在学中からブランディングエージェンシーで、現在はインテリアデザインオフィスspace copenhagenにて建築士として勤務。同時に、2015年よりmok architectsを共同設立、コペンハーゲンを拠点に活動中。