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モノと道具を再構築する

2016.06.29

暗いオフィスの秘密

森田 美紀

コペンハーゲン流「幸せ」なオフィスデザイン

デザイン 国際 効率

デンマークのオフィスが暗い理由

気持ちの良いオフィスインテリアで欠かせないもの、もちろん机や椅子などの身の回りのものが快適であることが大事ですが、その前に、明るさについて書きましょう。

オフィスの明るさに、推奨される基準があるのはご存知でしょうか。国際規格のISOやデンマークの規格Dansk Standardでは、作業平面上の明るさを500ルクス程度であるようにと定めています。

でもこれは、日本のJIS規格よりも低い基準です。その上、夜のデンマークのオフィスは絶対に規格を満たしていないのではと思うほど、どこもなんとなく暗いんです。窓が大きく取られているおかげで昼間は明るかったオフィスも、夜は薄暗く、雰囲気が大きく変わります。日本では天井に明るく大きなシーリングライトや蛍光灯がついているのが一般的ですが、そういったオフィスはあまり多くはないのです。

一般家庭も同じで、どこのお宅にお邪魔しても薄暗い。北欧デザインの素敵なペンダントライトやスタンドライトがテーブルやソファをほんのりと照らしてはいるものの、全体として輪郭がくっきり現れない、まるで中世の絵画を思い出すような空間です。もちろん電気代の節約のために我慢をしているわけではなく、そういった落ち着きを感じる空間を、皆が好んでいるのです。

本当に「明るいオフィス」が正解?

日本のオフィスインテリアに関するJIS規格では、作業平面(つまりデスク上の明るさ)を、明るい自然光が降り注ぐ昼の屋内と同じくらい目に刺激を与え、最も作業パフォーマンスが上がると言われる750ルクス程度にすることを定めています。しかし、光は光源に近くなるほど強くなります。つまり、机の上が750ルクスのとき、それより高い位置にある眼球は750ルクス以上の明るさを受けています。

でも、オフィスは明るくしておけばそれで良いというわけではありません。長い勤務時間の間、シーリングライトや蛍光灯の明るい光の下にいたとしても、ずっとパフォーマンスの高い、アクセル全開の状態で働くのはちょっと難しいでしょう。さらに、働く人の目には照明の明かりに加えて、パソコンディスプレーの光も合わせて入ってきます。基準よりも強い、一様な光をずっと受け続ければ、視神経は緊張した状態が続き、疲れ目や肩こりなどの原因になるとも言われています。

あなたのオフィスの机に、デスクライトはありますか?

人間も動物なので、太陽の光が強い昼には明るい光、夜にはやや暗い空間を快適に思うことは想像に難くありません。しかし、いくら快適で素敵に見えたとしても、夜のオフィスが暗過ぎれば書類が読めず、仕事になりません。それに、せっかく考えられている規格を遵守していないとしたら、問題がありそうです。

実は、デンマークの規格ではISO同様、作業平面上で500ルクスを保持することを求めてはいるものの、横に注意書きがたくさんあります。その一つは、作業机では必ずデスクライトを使うこと。これは、人によって十分な明るさのレベルが違うことを前提とした措置なのです。

理由ははっきりしていませんが、青い色の瞳を持つ人は日本人のような黒色の瞳を持つ人よりも明るさを感じやすいと言われます。デンマークには青・黒を含め、いろんな色の瞳を持った人がいて、明るさの好みもバラバラです。手元のデスクライトでパーソナルに明るさを変えられるのは、とても合理的な回答ではないでしょうか。

ISO規格でもデンマークの規格でも、作業平面が明るければ、オフィス全体の明るさは自由。デスクライトを使って作業平面のみ明るくしているために、デンマークのオフィスは規格は守りながらも、全体として暗く感じられるというわけなのです。

さらにデンマークの規格では、オフィス全体の照明として必ず日光を最大限に生かすこと、やわらかな光(天井からの光・間接照明)・しっかりとした光(デスクライト・ワークライトなど)を組み合わせ、用途に合わせた光の種類を考慮するようにも書かれています。

多くの種類の照明を組み合わせることで、自分の好きな明るさを選べますし、明るいところ・暗いところが生み出され、リラックスしながらも明るい気分にさせてくれるオフィス空間をつくることができます。光を組み合わせる、その具体的な方法については、次回に続きます。

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「素」を引き出す会議室

私がデンマークのデザイン会社で建築士として働きだしてから、2年以上が経ちました。でも外人として働くオフィスの日常は、手に馴染むどころかいまだに驚くことの連続です。その始まりは面接を受けるために会社に訪れた日のこと。あまりにも日本とは異なる、オフィスに漂う雰囲気に驚きました。

プロフィール

森田 美紀 (もりた みき)

大阪市立大学で建築家・竹原義二の元で建築意匠を学び、2012年からデンマーク王立芸術アカデミー建築学校留学。修士課程を修了し、デンマークの建築家資格取得。大学院在学中からブランディングエージェンシーで、現在はインテリアデザインオフィスspace copenhagenにて建築士として勤務。同時に、2015年よりmok architectsを共同設立、コペンハーゲンを拠点に活動中。