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人を組み替える

2016.12.20

消極的で決断を先延ばししたがる人間には、選択肢を突きつける

安恒 理

エレガントな〈手抜き〉

教育 組織 生産性

エレガントな〈手抜き〉
指示を待つばかりで能動的に動こうとしない「指示待ち族」。そんな社員を変えたきっかけが、社長のある行動でした。社員の自立を促すことに成功したその秘訣を、孫子の兵法をもとに解説します。

電子機器販売会社を率いる下村智一さん(=仮名)は、かねがね部下たちの働きぶりに不満を持っていました。指示されたことに対しては素直に一所懸命動くのですが、自ら能動的に動こうとしないのです。

かつて「指示待ち族」という言葉がありましたが、まさに下村さんの部下たちがそう。この点に関しては下村さん自身にも反省するところがありました。なぜなら、下村さん自身が創業し、ワンマン経営で会社を切り盛りしてきたからです。

例えば現場で想定外の事態が発生したとき、些細な問題でもいちいち上司に判断を求めてくるのです。そのため、なかなか仕事がはかどらないケースも目立つような状況でした。その様子は社内会議にも現れます。

数値的なデータは報告するものの、「では、どうしたらいいのか」という戦略的な方向性といった具体策を挙げる社員はいません。誰もが責任を取りたがらないという姿勢が見え見えでした。ああでもない、こうでもないという堂々巡りの議論がだらだらと続き、結局は下村さんが決めるというパターンで終わります。

しかし、これから会社を発展させるにはこれではいけないと思い、下村さんは社員に自立を促すようにしました。まずは会議のやり方から変えます。あらかじめ議題の中から結論を出さなければならないテーマを挙げ、事前に文書で出席者に配布します。

テーマごとにA案、B案……と予想される結論を列記し、社員に各案のメリット、デメリットを考えさせ、結論まで求めたのです。このやり方を取り入れてから、次第に社員たちは自らの頭で考え、動くようになります。

会議もスピーディーに進み、それはそのまま会社全体の仕事ぶりに反映されます。以前は、いちいち現場から下村さんへ判断を求めてきたのが、大体のことは現場の人間が判断できるようになっていきました。やがて現場で的確な判断が下されるようになり、業務に費やされる時間も大幅に短縮できる企業体質となったのです。

「われと戦わざるを得ざるは、その必ず救う所を攻むればなり」 『孫子』虚実篇

自軍が有利な情勢で、相手は守りを固くしていて戦いに消極的という状況──そんな時は、敵が救援を出さざるを得ない急所を攻めて、敵を誘い出して叩くようにせよ、という教えです。

消極的で動こうとしない人間には、逃げ道をふさいで動くように仕向けるのです。部下たちのボトルネックを解決し能率を上げるのも、指揮官の一つの役目です。

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エレガントな〈手抜き〉

社会はますます“手抜きを許さない”方向へと進み、絶え間なくリスク回避のストレスに追われています。逃げ道はないのか。小さな組織の未来学では別の選択肢を検討してみます。成果を上げるプラスの「手抜き」とは何か、ヒントが見えてくるかもしれません。この特集の終わりには「エクセレントな手抜き」にまつわる調査報告をメールマガジンでお届けする予定です。

プロフィール

安恒 理 (やすつね おさむ)

現代ビジネス兵法研究会。オフィスミックスナッツ代表。1959年、福岡県生まれ。慶應義塾大学文学部国文学科卒業。出版社に勤務し、主にビジネスマン向けの雑誌編集の仕事に携わる。1997年にフリーとして独立。ビジネスや株式投資関連の執筆を中心に、歴史から経済、スポーツ、サブカルチャーと幅広い分野に精通する。主な著書に『「孫子兵法」のことがマンガで3時間でマスターできる本』(共著)『ビジネスに効く教養としての「中国古典」超一流の常識』『トップになる人のためのプロフェッショナル仕事術』『「ゲリラ戦」で勝つ!反撃経営』(共著)『いちばんカンタン!株の超入門書』ほか多数。