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人を組み替える

2016.04.28

相手の気持ちを引き出す「目」の使い方

高石 宏輔

場の空気を変える「もの」コレクション

コミュニケーション 感情 意識改革

場の空気を変える「もの」コレクション
「目は口ほどにものを言う」と言われるように、会話において使うことができるのは、言葉ばかりではありません。「目」は会話における道具として、どのように使うことができるのでしょうか。

目の使い方についてのよくある誤解

これまで、言葉のやりとりを軸にしながら、自分自身が何に意識を向けているか相手が何に意識を向けているかを観察することについて書いてきました。今回は言葉ではなく、目線によって何が読み取れるのか、そしてそれに対してどう対応できるのかについて書いていきます。

話しているときには、自分がどんな目をしているのか、わかりません。自分自身の目の周りの筋肉がどれくらい力んでいるか、その様子に注意が向けられるようになると、ある程度はわかるようにはなりますが、それでもやはり話すことに必死になればなるほど、そういった目の周りの感覚を把握することからは離れていきます。

目の周りの力みにはいろいろあります。たとえば、相手に何かを訴えたい、わからせたいと思っているときの目の周りの緊張もあれば、わかってもらいたい、気にかけてもらいたいと思っているときの目の周りの緊張もあります。自分は自分、相手は相手と、自分にも相手にも関心を払えているときには、リラックスした優しい目になります。

僕は人と話すとき、はじめは特に目に注意を向けます。「人と話すときは目を見なければいけない」と礼儀正しくあろうと努めている人、会話の中で間違いを犯さないように気を張っている人は、こちらの話を聞いているとき、じっと目を見続けてきます。彼らは頷いたり、同意したりを形式上はしてくれるのですが、話を聞いてくれているかというとそうでもありません。なぜなら、他人の目をじっと見ながら、相手の言葉や動作によってイメージを思い浮かべることは難しいからです。話の内容をイメージしながら聞いていると、どうしても相手の目をそのようにじっと見ることはできなくなるものです。

目を見ていても、本当は話を聞いていない

実際に、そうして目を見たまま話を聞いている人に対しては、「聞いてどう思いました?」と聞いてみることがあります。すると大抵「え?」と少し戸惑われます。それから、記憶を頼りにしながら僕が言った言葉を反復する人もいます。これは男性が女性から「私の話、聞いてる?」と言われたときによくする反応です。彼女の話をイメージを浮かべながら丁寧には聞いていないけど、言った言葉は一応把握している。そうやって話を流し聞きしているときに「こういうことでしょ?」と聞いていることをなんとかアピールします。しかし、実際には聞いていません。それを女性は見ていてわかるので、油断していると「聞いてる?」と問い詰められてしまいます。

先ほどの「聞いてどう思いました?」という質問に対して、「実はあんまり聞いていませんでした。とりあえず聞いているフリをしてしまう癖があるんですよね」と正直に言ってくれる人もいます。

しかし、「必死にこっちの目を見てるけど、ちゃんと聞いてないでしょ?」と言っても仕方がありません。本人は無自覚だからこそ、そういう目の使い方をしているのです。

自分の話をして褒められたい人は、話しているときも、話し終えたあとにも、反応を待つように、じっとこちらの目を見続けてくることがあります。こういう話し手に出会うと、期待された反応を示さなければいけない感じがして苦しくなります。「何か反応を求めてるの?」と返せれば楽ですが、これも本人は無自覚でしょうし、なかなか口にはできません。

どちらの場合も、相手の目をじっと見るタイプの目の緊張は、相手の評価を気にした場合に起こることが多いように僕は捉えています。

視線をあえて外し、周辺視野で見る

目をじっと見られた場合、相手の目を見ることをやめてみるようにしています。しかし、ただ見ないというだけでは、相手の様子がわからなくなってしまうので、視線を外し、視界の端で相手の目の動きを捉えておきます。

視線を外すと相手も安心するのか、僕の目を見ることをやめて、下を向いたりし始めます。そうすると、相手が聞き手の場合は僕に気を遣うことをやめて、こちらの話に対してその人自身が感じたことや、思っていることを少し話してくれるようになります。相手が話し手の場合は、ある事実を述べてこちらの反応や評価を求めるような話し方ではなく、この場合もまた、自分自身が感じたことや、思っていることを率直に話す、こちらの反応や評価を求めない話し方に変わります。

どちらも劇的に相手の動きや話し方が変わる、というものではありませんが、会話しているときの自分自身の目線を変えるだけで、相手の目線や話す内容も少し変わります。こういったこちらの動作の小さな積み重ねで、相手に自分自身の気持ちを話しやすくなってもらえることが、コミュニケーションの技術の面白さだと思います。また、互いにこういったことを認識し合った者同士なら、互いの目を見ながら、より相手の心情を気にかけ合いながら話をすることができるでしょう。

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プロフィール

高石 宏輔 (たかいし ひろすけ)

1980年生まれ。慶應義塾大学文学部仏文専攻中退。在学中よりカウンセリングのトレーニングを受け、セミナー講師を務める。スカウトマンを経てカウンセラーとして活動を開始。クライアントからの要望により、路上ナンパ講習も始める。著書に『あなたは、なぜ、つながれないのか──ラポールと身体知』(春秋社)、共著に『「絶望の時代」の希望の恋愛学』(中経出版)。