• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

人を組み替える

2016.03.30

体が変わる時を探しながら会話する

高石 宏輔

場の空気を変える「もの」コレクション

コミュニケーション 感情 身体

場の空気を変える「もの」コレクション
会話において、言葉の上では相手が同意しているようなことを言っていても、本当には同意していないことがあります。そうした状態では、相手に自発的な行動は望めません。相手が心から同意しているかどうかを知り、相手の本当の言葉を引き出すために使える技術とは。

会話の技術は人を鑑賞する技術

前回、相手の言葉を拾うことについて書きました。今度は動きについて書こうと思います。

「言葉も、動きも、どちらも気にしていたのでは、ますます話の内容がわからなくなってしまいます」と言われることがあります。たしかに、どれもこれも同時にやろうとしていたら、身につくものも身につきません。こういった会話の技術は、基本的には他人を鑑賞する方法として捉えてもらうことが正しいのだと僕は思っています。「あぁ、そう見る方法もあるな」という程度に。このコラムを読んだことがほんの少しでも頭の片隅に残っていれば、ふと誰かと話しているときに「あぁ、今のが拾うべき言葉なんじゃないか」とか、これから書くところの「たしかに体の動きが変わった」というように、ここで書いたことを思い出してもらえるのではないかと思います。

僕自身も、人から直接学んだり、本から学んだりしたことを、クライアントとの会話や日々の生活の中で自然にやっていると自覚したとき、ふと学んでいたことを思い出します。必死に覚えようとするものは、あまりありません。

姿勢の崩れる相槌、崩れない相槌

「あぁ」とか「たしかに」とか、会話の中で納得を示す相槌があります。

相手の相槌が、姿勢が崩れることなく発話されたときには、相手は自分が話したことをあらかじめ彼がそう思いたいと考えていたように捉え、さらに、それに対して次にどう言おうかまで考えているのではないかと疑います。あるいは、この話に関心がなく、別の話に切り替えることを考えていることもあるかもしれません。

納得というのは不意打ちを食らうようなものです。それがあったかという具合に。そのとき、体の力は抜けます。自分が納得したときの様子を思い出してみると、その感じがわかると思います。

講演会などではよく、一番前の席に座ってたくさん頷いている人がいます。その人はそんなに話を聞いていないのではないかと思います。もし話の内容を新しいものとして受け取ろうとしているなら、そんなに頷く暇はないはずです。その人は自分で思い込んでいるものをより強固にするために、それに近い他人の意見を聞きに行っているように見えます。一定のパターン化された動きをするということは、心理的にも頑なであるように見えます。

相手の動きのパターンが崩れる時

他人と話すときはまず、はじめの動きのパターンを把握します。会話し始めると片手を膝の上に置いて肩が上がった状態になったり、目を離さずじっと見たり、姿勢良くしようと努めるように背筋を伸ばしたり……「さぁ、会話しよう」となると出てくる動きのパターンが、誰にでもあります。

次に、話をしながらそのパターンが崩れそうになるところを探します。例えば、目を見て話さなければいけないと思い、じっと見続けてくる人は多いように感じます。人と話すときは相手の目を見なければいけないと思っているのかもしれません。しかし、それは自然な動きというよりも、習慣的に染み付いてしまった動きです。そういう相手の場合は、その目の力が抜けたときに、彼の感覚や感情がより込もった言葉が生まれるかもしれないと念頭に置きながら話をします。

同様に、肩が上がっている相手の動きが変わる人は、肩がすっと落ちる瞬間、背筋を伸ばしていた姿勢が崩れる瞬間があるかもしれません。そのときに、それまでよりも深い感情や感覚を伴った、その人特有の言葉が出てくることが多いのです。

もちろん、感覚や感情が込もった言葉は、こうした時だけに生まれるわけではありません。相手の体を見ることも、あくまで軽く念頭に置いておくだけにします。もし、目や肩の力が抜ける瞬間を探そうとこちらが集中してしまったら、自分自身の目が緊張してしまうでしょう。

併せて読みたい、編集部からのおすすめ記事
動画で身につける交渉術:話すより、聞きにまわることで信用を得る〈動画〉

国際ネゴシエーターの島田久仁彦氏に、ビジネスにおける交渉術の極意を伝授していただきました。今回からは動画によって、活字ではなかなか伝わりにくかった声のトーンや所作、ニュアンスを実際にご覧いただけます。

プロフィール

高石 宏輔 (たかいし ひろすけ)

1980年生まれ。慶應義塾大学文学部仏文専攻中退。在学中よりカウンセリングのトレーニングを受け、セミナー講師を務める。スカウトマンを経てカウンセラーとして活動を開始。クライアントからの要望により、路上ナンパ講習も始める。著書に『あなたは、なぜ、つながれないのか──ラポールと身体知』(春秋社)、共著に『「絶望の時代」の希望の恋愛学』(中経出版)。