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人を組み替える

2016.03.28

「相手の言葉」をいかに見つけ、使うか(実践編)

高石 宏輔

場の空気を変える「もの」コレクション

コミュニケーション 感情 意識改革

場の空気を変える「もの」コレクション
感情のこもった相手の言葉を引き出し、会話の際の「道具」として使うというカウンセラーの高石宏輔さん。前回に引き続き、今回はその方法を、より実践的に見ていきます。

習慣的な相槌への不意打ち

相手の感情や感覚がともなった言葉はどのように見つければよいでしょうか。例えば、相手の言葉は不意打ちをされたときにも出てきます。

A「会話における道具っていうと、どういうものがありますか?」
B「言葉遣いとか、振る舞いとか……でしょうか。あるいは、特定の具体的な技術とか。例えば、相手の言葉をそのまま返すというのはよくありますよね。『最近忙しくて大変だったんですよ』『そうですか。大変だったんですね』みたいな。でも、こういうことをやろうとすると、会話が円滑に進んでいるように見える形式ばかり気にしてしまって、結局、話の内容をそこまでつかめないということがありますよね」
A「そうですね」
B「そうっていうと?」
A「え? そうっていうのは……技術にとらわれると、かえって身動きがとれなくなるというか。そんな感じかなと」
B「じゃあ……身動きがとりやすくなるような技術があれば良いって感じですね」
A「そう、そういうのがいいですね」

「そうですね」や「なるほど」など、習慣的に打つ相槌をしているときには、思っていることを明確に言語化しているわけではないことが多いものです。そのまま相槌を打たせ続けてしまうと、会話が流れてしまい、相手の言葉を聞けずに終わってしまいます。相槌に対して、どう思うのかを聞いてみると、相手の言葉が聞けることがあります。

相手が新たに使った言葉に注目する

そのときに大切なのは、こちらが使っていなかった言葉、つまり相手が新たに使った言葉です。先ほどの例では「身動きがとれなくなる」という言葉が新たに出てきました。Aにとっては、会話がうまくできないときには「身動きがとれない」という感覚があるのでしょう。その言葉には文字通り、体が固まってしまうという感覚があるのかもしれませんし、また、これまでにもそうなってしまった経験があるのかもしれません。もしそうだとしたら「身動きがとれない」という言葉を使うことで、BはAに会話をしてうまくいかないときの感覚を想起してもらいやすくなります。そうすることで、その後の会話もAにとって実感が伴いやすくなります。

感覚を共有する会話を失ってはいないか

この反対に、相手の言葉を見つけることよりも、自分の話を展開させること、同意をしてもらうことに注意が向いてしまっていると、こうなってしまうこともあります。

A「え? そうっていうのは……技術にとらわれると、かえって身動きがとれなくなるというか。そんな感じかなと」
B「そうだよね。形式を気にしてしまうと、話の内容がつかめなくなるよね」

この例では、せっかく出してくれた相手の言葉を、また自分の言葉に戻してしまっています。そのまま展開すれば、A特有の「身動きがとれない」感覚は会話の中で想起されず、BはB自身の感情と感覚の言語のみによって会話を展開させるだけで、Aとの感覚の共有を行えず、納得してもらうことも難しくなります。

例の中で、Bは「会話が円滑に進んでいるように見える形式ばかり気にしてしまって、結局、話の内容をそこまでつかめないということがありますよね」と言いました。それに対してAは「技術にとらわれると、かえって身動きがとれなくなるというか」と言いました。会話がうまくいかないということの一例が、Bにとっては「円滑に進んでいるように見える形式を気にして、内容をつかめない」であり、Aにとっては「技術にとらわれて、身動きがとれない」なのです。同じようなことを言っているようで全く違います。

Bはうまく話せているように見える形を気にしすぎると中身がつかめなくなってしまうと言っています。Aは技術、つまり自分がとるべき行動にとらわれると、身動きができなくなる、つまりどうすれば良いかわからなくなると言っています。

いったん自分の感覚を捨てること

BがAに納得してもらいたい場合、Bは「そうっていうと?」と質問をするときに、自分の感覚をいったん捨てて、Aがどのような感覚を持っているのかを感じるようにAの答えを聞く必要があります。「そうっていうと?」と質問をしたあと、Bが自分で話したことにとらわれず、Aの言葉から自分とは違うA特有の感覚を感じるようにすれば、Aが新たに使った言葉と、その言葉が内包している感覚を感じることができます。自分の言いたいことをいったん置いて、相手の感覚に耳を澄ましてみます。そうできているときには、自分の中に静けさが感じられます。

会話の技術は他人を思い通りにしたり、自分の意見を通したりするために関心が持たれることが多いように思いますが、感情や考え方なども含め、相手のことを丁寧に知るためのものであると僕は捉えています。会話の技術は、より外の世界に関心を持つためのものとも言えるかもしれません。

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プロフィール

高石 宏輔 (たかいし ひろすけ)

1980年生まれ。慶應義塾大学文学部仏文専攻中退。在学中よりカウンセリングのトレーニングを受け、セミナー講師を務める。スカウトマンを経てカウンセラーとして活動を開始。クライアントからの要望により、路上ナンパ講習も始める。著書に『あなたは、なぜ、つながれないのか──ラポールと身体知』(春秋社)、共著に『「絶望の時代」の希望の恋愛学』(中経出版)。