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人を組み替える

2016.03.24

相手の言葉を拾って使う

高石 宏輔

場の空気を変える「もの」コレクション

コミュニケーション 感情 意識改革

場の空気を変える「もの」コレクション
一対一で会話をする時、使える道具のようなものはあるのでしょうか。カウンセラーの高石宏輔さんはそれを、こちらが発する特定のセリフなどではなく、「相手の言葉」であると言います。

相手の感情が詰まった言葉はどこにあるか

会話はいつもそのとき限りのもので、これを使えば必ずうまくいくという方法を僕は知りません。それではいつも何も策を持たずに臨むのかというと、そうすることも不可能であると感じています。なぜなら、自分の経験から、会話の癖が出来上がってしまっているからです。その癖の中でも、まだ手放せずにいるものは、それなりに有効だと思っている方法なのかもしれません。そのうちの一つ、大切にしているものについて書いていきます。

人と話すとき、僕はまず相手の言葉を拾います。言葉といっても、なんでも良いというわけではありません。その人の感情や感覚が詰まった言葉です。注意深く聞いていると見つかります。拾って欲しい様子が、発話の仕方に表れています。例えば、会話の中で感情を込めて強く発された言葉や、その反対に隠されているようにか細く聞き取りづらい言葉、一段深い声で、あるいは高い声で発された言葉、沈黙のあとに発された言葉……いろいろありますが、話し手のベースの話し方からそれたところで発された言葉です。

感情抜きに納得が得られることはない

説得をするときにも、理解をしてもらうときにも、必死になるとこちらからたくさん話してしまいます。自分が使い慣れた言葉でいくら伝えても、反発されるか、良くてもわかったふりをされてしまいます。理屈で考えさせて「わかった」と言わせるのではなく、「なるほど、そうだよな」と納得してもらうためには、感情や感覚とともに思ってもらう必要があります。

相手の言葉を拾うのは、その中にその人特有の感情や感覚が込められているからです。だから、その言葉を使うたびに、その言葉に結びついた感情や感覚はついてきます。同様に、それを本人ではなく、こちらが使うときにもその感情や感覚は聞いている本人の中で自然と想起されやすくなります。

他人に感情や感覚を想起させることは難しいことです。こちらの描写力や、こちらの言葉を信頼してもらえる関係性が必要です。その点、本人が使った言葉は既に感情や感覚を想起させるものです。特に会話の始まりのときに相手の言葉を拾うように意識をすると、感情や感覚の共有ができ、スムーズに話が進みやすくなります。

相手の言葉の音に注意を向け、静けさの中で会話する

相手の言葉を見つけるために大切なのは、自分の中に静けさがあることです。

人と話していると、いろいろなことを思ったり考えたりします。「こんな話をされて参ったな」「もうちょっとこう思ったらいいのに」「なんでこうしないんだろう」「何を話したらいいんだろう」……そんなことが自分の中に勝手に生まれてきます。それらを無にするというと無理があります。なかったことにしようとしても、それは嘘になってしまいます。「あぁ、また余計なこと考えちゃったな。まぁ仕方ない、それは今の自分に自然と浮かぶ考えだ」とそれを認めて、すぐに相手の話している声に耳を傾け直せれば十分です。

相手の声の音に注意を向けると、自然とまた相手の話が聞こえるようになります。反対に、自分が相手の話に対して勝手に考えてしまっていることを認められないと、その自分の中の独り言が続き、相手の話を全く聞き取れなくなってしまいます。

そうして落ち着いて聞いてみると、相手の言葉の音が様々であることが感じられます。強く発されて強調された言葉、反対に弱く発されて隠そうとされた言葉、それらが自分に想起させるイメージは違うはずです。気に入った歌手の歌を聴くような感じかもしれません。

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プロフィール

高石 宏輔 (たかいし ひろすけ)

1980年生まれ。慶應義塾大学文学部仏文専攻中退。在学中よりカウンセリングのトレーニングを受け、セミナー講師を務める。スカウトマンを経てカウンセラーとして活動を開始。クライアントからの要望により、路上ナンパ講習も始める。著書に『あなたは、なぜ、つながれないのか──ラポールと身体知』(春秋社)、共著に『「絶望の時代」の希望の恋愛学』(中経出版)。