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人を組み替える

2016.01.20

相手を引かせず、惹きつける ネガティブワードの使い方

高石 宏輔

「非モテ系社長」改造レッスン

リーダー コミュニケーション 感情

「取引先にモテない」「異性にモテない」という中小企業社長の「モテ」に関する悩みを、路上ナンパ講習まで引き受けるカウンセラーの高石宏輔さんが引き出し、「モテ」へのヒントを与えるこの企画。

恋愛相談がきっかけで知人の女性と一気にイイ仲になれたものの、その後、もう一度会うことを拒否されてしまった山田社長(仮名)。前回、その時のことを思い出していくうちに、「拒否」されてしまった理由が少し見えてきました。その日の山田社長は、女性の話を親身に聞こうとするあまり、自分から「攻める」ことがなかったと言います。

「非モテ系社長」改造レッスン

「5時間話を聞いていたけど、何を言えばいいか分からなかった」

高石:「攻められなかった」というと、「受けていた」ということでしょうか?

山田:はい。

高石:「受ける」というと、実際にはどういうことをしていたんでしょうか?

山田:聞いていただけって感じですかね。

高石:なるほど。攻めずに受けて聞いていたってことですね。聞いているときに、攻めていた瞬間はありましたか? 例えば、「こう言われたら彼女は感情的に反応するだろうな」というようなことを言ったりとか。

山田:それはないんですよね。ずっと話を聞いていた感じ。

高石:なるほど。では、何か「これを言われたら嬉しいだろう」、「気になっただろう」みたいなのってありますか?

山田:具体的に考えると、難しいですね。でもそう言われると、何かあったんじゃないかなという気がするんですが……。

高石:ぼんやりと「あるような気がする」という感じですか?

山田:はい。

高石:ぼんやりと、このタイミングでは言えたんじゃないかな、というのはありますか? 隙間がないと言えないですよね。相手が途切れなく話しているとなかなか言えない。そういうことが言える隙間はありましたか?

山田:確かに隙間はあったと思うんですよ。ただ、そこで何を言えば良かったのかと考えると、何も出てこない気がするんです。

高石:その隙間はあったんですね。

山田:だいたい向こうが話をし終わった時にありましたね。例えば「結局、その人には彼女がいたんだけど、家に行かせてもらえなかったり、連絡が返ってこないときが多かったりして、怪しいとは思っていたんだけど……」みたいな話をされて、私が「そうだね」と返すようなタイミング。そういう隙間は確実にあったなと思います。

高石:「怪しいとは思っていたんだけど」という話がでた時には、どう返したんですか?

山田:「そっかー。それはねぇ……」みたいな感じで。ほんとに相槌くらいの感じで流しちゃっていたんで。

高石:そこには、他にもう少し山田さんが思っていたことがありそうですね。

山田:まさに。

相手の感情を揺さぶる「攻め」の言葉

高石:少し話が変わるのですが、「攻める」って、どういう感じでしょうか。イメージとしては、優しく攻めることもできるし、グサッと刺し込むこともできるし、攻めたからといって、必ずしも人を傷つけるわけではないと思うんです。

「怪しいとは思っていたんだけど」と言うことは、彼女は「相手はそうやって私のことを騙そうとしていたんだ」ということを言いたいわけですよね。つまり、相手のせいにしたいわけですよね。その男性が悪いことをしていたとしても、「気づけなかった私が悪い」というのではなく、「相手が悪い、私は悪くないんだ」という感じで言ったわけじゃないですか。そこを攻めるとしたら、どうしたら良かったと思いますか?

山田:でも……そこで攻めてもしょうがないですよね。嫌われてしまいますし。

高石:そうですね。お前が悪いと責めるような攻めになるといけないかもしれないですね。ただ、もう少し突っ込んだ感じのことを言える可能性はありそうでしたか?

山田:そうですね……。確かに彼女も騙されたと言えなくもないんですけど……でも、その時は「怪しいと思っていたのになんで聞かなかったの?」とちょっと思いながら、流してしまっていましたね。

高石:その本音がいいですね。「なんで聞かなかったの?」のままだと少し冷たい感じがあるかもしれないですけど。

山田:うーん。そこで「攻める」のはキツいのかな、と思って流していたんですけど。なんとなく恋人がいるかどうかを気にしながらも、いないことを期待していたのかなー、とか。何とも言えないですけど。

「攻め」の言葉の選び方

高石:それ、いいですね。今のは使えるんじゃないですか。

山田:ですね。っていうか……そうか、そう言えばよかったのか。「期待してたんだね」って。

高石:その言葉をどういう雰囲気で言うのか、というのも大切かもしれないですね。突き放すように言うこともできるし、優しく言うこともできますし。山田さんの中に、なんとなく、こういう風に言ってみたいなと思い浮かぶ感じはありますか?

山田:たぶん、相手が攻撃されていると思わないように言わなきゃダメだと思うんですよね。だから優しく言うしかない。やっぱり「彼に他の女性がいないことを期待したのかな?」みたいに軽い感じで言うのがいいのかなぁ。

高石:優しく言うしかない……。

山田:ちょっと引いてますね(笑)。確かにその時、私は彼女に対して「馬鹿じゃん」と思っていました……今、思うと。

高石:その本音もいいですね。

山田:それ、いいですか?

高石:その「馬鹿じゃん」と思った自分を抑えると、「そうだね」しか言えなくなると思うんですよね。彼女に期待があったわけじゃないですか。そこをチクっとできて、なおかつ「私の気持ちを分かってくれているなぁ」となるのがいい攻めなんだと思うんですよ。

山田:そうですねぇ……。「ちょっと焦っちゃったね」という一言はどうですかね。そしたら、頭のいい人ではあるので「あー、確認すれば良かったんだな」くらいは自分で感じたかもしれない。

自分の考えも伝えながら、うまく話を聞く方法

高石:それもいいですね。でも、ちょっとお父さんみたいですね(笑)。お互い本当に色恋なしで、向こうがお父さん的なものを求めている場合だったら、今の「焦っちゃったんだね」の感じはすごくいいと思うんですけど。

山田:確かに、相手がお父さんを求めているならいいのかもしれないですが、そうじゃないので……。実は私、ずーっと同い年以上の年齢の人としか付き合ったことがなかったんですよ。年下相手だと、どう話したらいいか分からなくて。それでお父さんになっちゃっているというのは正直感じるんですね。

そっか……あまり意識していなかったですけど、言われてみると、お父さんぽい言葉をかけていたのかもしれませんね。お父さんだと魅力がないですよね。

高石:魅力がないことはないと思いますよ。お父さんみたいな感じが好きだという人もいるでしょうし。山田さんが「お父さんぽくしよう」と思ってやっているのなら、良いのかなと思うんです。でも、知らない間にやってしまっていたというなら、変えたい時に変えてみるのも面白いかもしれないですね。例えば年下の人に対して、年上という立場ではなく、同じ立場にしてみるとか。

山田:そうですね。こっちが逆に自分を上からで固定しちゃっているというか、そういうのがあるのかもしれないですね。年齢差があることを前提に話してしまっている。

高石:もし、その女性が山田さんと同じ年齢だったとしたら、なんて言いますか?

山田:「それ焦り過ぎじゃないの?(笑)」くらいのもっと攻める感じで、素直に言ってたと思いますね。「それ、ふつー確認するでしょー」みたいな。

高石:それもいいですね。ちょっと強くなっちゃう気がしますけど(笑)

山田:強くなっちゃいますね(笑)。もうちょっと優しく言いたい。でも同い年くらいだとそういう言い方になっちゃうかもしれない(笑)

高石:「それ、ふつー確認するでしょー」って言っちゃうと……ちょっと強いですね。アドバイスになっちゃう。それは男性がついやってしまいがちなことかもしれないですね。

山田:ですよね(笑)。上から目線に見えてしまう。

高石:そうですね。「焦り過ぎじゃないの?」と言うのは、いい……かもしれないけど、山田さんがせっかく持っていた優しい感じがなくなってしまいますね。どうでしょうか。攻めながらも優しい感じを保つとすると、どんな風になるでしょうか?

山田:なるほど……。「寂しかったんだね?」って聞くってことですかね。

高石:それはいいですね。

山田:そうですか(笑)。今のは自分でも納得のいく、いい言葉が出たなと思いました(笑)

相手との関係は、批判的な気持ちから深まることがある

山田:確かに、引き気味に「そうだねー」くらいで終わらせていたので、そういう攻めの部分がなかったのかもしれない。

高石:相手に対して批判的に思ったことを隠してしまうと「そうだねー」しか言うことがなくなってしまいますよね。ご自身の優しい部分も大事にしながら、批判的な気持ちを蔑ろにしないでいることで、山田さんの“気持ちが入った発言”が生まれてくる。そういうことは、もしかしたらあるのかもしれないですね。

山田:あ、そうか……。ほんとに「ただ遠くから見守るだけのお父さん」になっちゃってたんですね。今、思うと、上からであることを否定しないで、彼女に対して思ったことを出しても良かったんですね。話してる時は、こっちが思ったことを全然出さない感じになっちゃったんです。

高石:そうかもしれないですね。

山田:自分の気持ちを出さずに話を聞いて、いいとこまで行ったけど、それで相手から連絡がなくなって、何だったんだろうと思っていたんですね。何してたんだろうと。もし、こっちもちゃんと思ったことを言っていたら、次があってもなくても、納得していたかもしれませんね。

高石:もし今度、山田さんの思ったことを言って相手との関係性を深めた感じがあったら、どうしていくのが良いか、方向性がつかめそうですね。

山田:今、思うと、会話ではこちらから攻める要素が入っていなかったので、いわゆる「カラダだけが目当て」と捉えられてしまったんじゃないかという気がします。彼女としては「“話を聞いてもらった代”をカラダで払った」みたいに感じたのかもしれないですね。

高石:なるほど……。さっきのようにご自身の批判的な感覚から攻めの言葉を見つけていく、という感じは面白いですね。

山田:そっか……。面白いですね(笑)

 

嫌われることを恐れ、彼女の言葉に対して、ただ聞くだけに徹してしまった山田社長。カウンセリング全体を通じて、山田社長は取引先とのコミュニケーション(リンク)と女性相手のコミュニケーションで、「相手への批判的な気持ちを押し殺してしまっていた」という同じ問題を抱えていたことが見えてきました。

しかし、問題点を指摘されたところで、改善することは難しいものです。カウンセリングでは、これまで意識していなかったこの問題に、山田社長自身が徐々に気づいていったことに意味がありそうです。結果的に山田社長は今までの優しい持ち味を活かしながら、上手な「気持ちの伝え方」「会話の流れのつくり方」を見出したようです。

必ずしも利害が一致しない取引先との交渉でも、このように相手に自らの現状、問題点、改善点を見出してもらう話術が活かせるのではないでしょうか。

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プロフィール

高石 宏輔 (たかいし ひろすけ)

1980年生まれ。慶應義塾大学文学部仏文専攻中退。在学中よりカウンセリングのトレーニングを受け、セミナー講師を務める。スカウトマンを経てカウンセラーとして活動を開始。クライアントからの要望により、路上ナンパ講習も始める。著書に『あなたは、なぜ、つながれないのか──ラポールと身体知』(春秋社)、共著に『「絶望の時代」の希望の恋愛学』(中経出版)。