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特集

2015.04.15

新規投資は、経営者だけに与えられた楽しみのはずだが

小さな組織では何が経営課題か?

〜「経営とITに関する調査」から〜

IT 成長戦略 小さな組織

2014年12月、本サイトの想定読者層にあたる企業、特に従業員100人未満の企業の経営者を対象に、「経営とITに関する調査」を実施した。回答数は300件。調査の目的は、経営者の自社企業に対する「経営課題とその重要性と対応」、および「経営を支えるためのIT基盤」と「経営に活かすためのITの活用実態と方向性」を分析すること。このコラムでは、その調査結果に基づき、「企業を継続するためには、儲けるためには経営者として“何をどう考えるべき”か?」、そして「ITを経営に活かすためにどうすべきか?」について分析していく。
「中小企業及び小規模企業 経営とITに関する調査」概要(PDFダウンロード

調査結果からは、中小企業は投資に保守的であるように見える。まずは中小企業の現状を明確に示す、下記の結果を見ていただくとお分かりになるはずだ。

(1)新規事業を重要だと考えている企業は4割に満たない(36.7%)
(2)海外展開を重要だと考えている企業は約2割(22.0%)
(3)50代以上の経営者が約7割(69.4%)

小さな会社にとっての「投資」とは何を指すのか?

「中小企業の約7割は、後継者について考えていない」で述べたように、経営者の約7割(69.4%)が50代以上の年代に偏っている。これは事実として受け止めざるを得ない。しかも創業者となる社長の割合が過半数を占める。いわゆる創業社長だ。だからといって投資に消極的で保守的であるという結論を出すつもりはない。

企業はもともと創業する際にコアな事業があったわけで、その事業を継続して今に至るという歴史を持っている。そのような一般的な企業において、一律に新規事業や海外展開を押し並べて目指すべきというのは乱暴と言わざるを得ない。企業の性格によっては、新規事業や海外への販路開拓などへと進むべき企業もあるだろうが、多くは限定的な展開となるだろう。基本はコア事業をじっくりと育て、継続するということになる。

経営課題別重要度

無論、新規事業でも海外展開でも、そうするだけの意味があればもちろん目指す方向としては間違いではないが、経営者の保守的・堅実な考え方も肯定すべき一つの性向だ。大半の中小企業は事業の継続が重要であり、会社や事業の拡大は、経営の進捗・発展結果でしかない。

あえて投資をしないのも企業の立派な考え方

中小企業経営者との意見交換に参加いただいた老舗食品製造小売業の4代目経営者であるA社長は、投資について独自の見解を持っている。これは業種による特性も関係しているだろう。

海外展開について、自社の和菓子を世界に広めたいという思いはある。しかし和菓子の性格上、製品輸出は賞味期限の関係から難しい。従って海外で製造・販売しなければならないが、それはリスクが大き過ぎる。結局、仕入れルートの決定から製造、販売店への配送といったロジスティクスまで、すべて一貫して新たに作ることになる。また、現地でのマーケティングや啓蒙活動も必要になる。つまり市場を一から作らなければならない。

新たな投資を行わないのは、新規事業にしても海外展開にしても、それより先に「やるべきことがあるから」だという。つまり優先度の問題だ。自社の主力事業の更なる安定・拡大が優先される。投資するにしても、その方がリスクは少なく、確実性・安全性・信頼性は高い。

まず現状を守るのが当然

下請け主体の小さな広告代理店のB社長は、さらに守りを優先している。新規投資についての重要度はもちろん理解しているが、現実的な中小企業にとっての優先度は相当に低いという。新たなことにチャレンジしたいと考えることはあっても、実際に投資するまで至ることはほとんどない。ROI(投資対効果)を突き詰めて考える慎重なB社長は、投資以上に利益が取れる保証がないと動かない。

B社長の考え方は、中小企業というよりも日本企業の典型的な考え方なのかもしれない。常に日々の仕事で手一杯の企業は、こなすことに集中するあまり、新規事業や何かに投資するというところまで気を回す余裕がない。そしてどんなに忙しくても、社員を増やすのはリスクと考えている。

面白そうな新規事業にピンときても、現在の事業に支障を与えて失敗したら、その事業どころか会社自体が危なくなると真っ先に考えてしまう。大企業のように事業部単位でテスト的に試してみて、その結果を見て会社全体で新規事業や投資的な施策を実行するなんてことは、中小企業にはできないと断じてしまう。

投資を決めるのは経営者だけの楽しみのはずだが

全体の調査結果で「新規事業が重要」が4割弱(36.7%)というのは、やや少ない印象だ。実際に取り組むか否か以前に、その思いすらが4割弱に過ぎないということになる。

経営者は事業拡大について、頭のどこかには常に置いてあるだろうが、実際に始めるとなると、小さな会社では“誰”が担当するかということが問題になる。結局は自分でやるにしても、現在の主力事業における既存商品の改良、新規顧客やルート開拓で手一杯だろう。

保守的な体質のなかで、投資的な動きに踏み込めない経営者がそこにいる。公的な機関やコンサルタント、メディアなどが、高所から中小企業へ向けて新規事業・海外展開などをたきつけたところで、現実感の乏しい意見としか映らないのかもしれない。

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プロフィール

小さな組織では何が経営課題か?

小さな組織の未来学では2014年12月、想定読者層にあたる企業、特に従業員100人未満の企業の経営者を対象に「経営に活かすITの活用実態に関する調査」を実施しました。ここでは、その調査結果を紹介し分析していきます。調査を行ったのは株式会社ノークリサーチ。