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特集

2015.04.03

次世代への企業継承とは何か?

小さな組織では何が経営課題か?

〜「経営とITに関する調査」から〜

小さな組織 後継者 事業承継

2014年12月、本サイトの想定読者層にあたる企業、特に従業員100人未満の企業の経営者を対象に、「経営とITに関する調査」を実施した。回答数は300件。調査の目的は、経営者の自社企業に対する「経営課題とその重要性と対応」、および「経営を支えるためのIT基盤」と「経営に活かすためのITの活用実態と方向性」を分析すること。このコラムでは、その調査結果に基づき、「企業を継続するためには、儲けるためには経営者として“何をどう考えるべき”か?」、そして「ITを経営に活かすためにどうすべきか?」について分析していく。
「中小企業及び小規模企業 経営とITに関する調査」概要(PDFダウンロード

経営者の後継ぎが決まっている会社は3割に過ぎない

今回からは調査結果に基づき、従業員100人未満の中小企業経営者の現実と希望を探ってみる。さて1回目は、会社にとって次の社長が決まっているか、つまり継承者が決まっているかどうかについて。そもそも会社は継続することを大前提としているが、現在の企業を継続するのは(現経営者である)自分の代だけなのか、あるいは世代を超えて自分の子どもなどに継がせて継続するのか、この観点で調査結果を見てみる。

一般的に後継者を決めている、考えている企業のほうが雰囲気的には肯定的な前提として見られがちだが、とりあえずそのあたりの事実を検証したい。

「企業が継承者をすでに決めている」かどうか、結果は想像しにくかったが、実際に後継者を考えている会社は32.7%と意外に少なかったという印象だ。中小企業の過半数は創業社長であり、年齢的にも50代以上が多く、しかもまだ現役プレイヤーであるいうことを考えれば、当然の結果といえるかもしれない。

会社継承予定者の有無

そもそも経営者の年齢はどの層が多いのか。経営者の年齢を見てみると50代以上の経営者が約7割である。しかも創業者である割合が53.7%と過半数を占める。つまり中小企業の過半数は自分の代で会社を起こした、50代以上の創業社長が多数を占めているという前提で見ると雰囲気がつかめる。

経営者の創業・継承状況
経営者の年齢層

継承の価値と理由は何か?

「会社の売り上げの伸び」と「会社の継承者が決まっている」ということの因果関係について有意差がありそうな結果が出ている。もし継承者を考えることが企業活動にとって有益な働きを及ぼすのならば、会社は継承者を決めればいいわけだが、継承者を決めるにはそれなりの条件が必要となる。その条件には次の3点があげられる。

1. 引き継ぐための理由がある
2. 引き継ぐだけのリソースがある
3. 引き継ぐための準備を進めている

つまり、ビジネスとして継続的に活動するための思い(企業方針、理念)と実績と顧客。加えて継承するための人材や仕組みなどの備えを進めている必要がある。日々の売り上げや資金繰りに追われがちな創業企業にとって、今後の継承を想定の上で経営を行うことは、現実的には限定的と言わざるを得ない。

おそらく多くの方が、後継者を考えている会社のほうが考えていない会社よりも売り上げが伸びていると想定するのではないだろうか。その仮説としては、
・会社を継続させるために、経営課題により積極的に対応
・IT化への対応にも積極的で、会社組織・経営基盤を強固にしようとしている
などのビジネス書的な解答を思い浮かべる方が多いはずだ。

実際に継承者を決めている会社とは、どういうものなのだろうか。継承者が決まっている企業では、前年の売上高に対して調査時点(2014年12月)での売上実績は48.0%が前年を上回る結果となった。一方、継承者が決まっていない会社は42.6%であった。継承者が決まっている企業のほうが良い結果になっているが、決定的な差があるとは言えない結果となっていることが分かる。ただし売上減小という点でみると、継承を決めていない企業は32.2%と確かに目立つ。

会社継承予定者有無別の売上伸び率(直近決算時)

儲けていれば、後継者も含めて未来を展望できるのか

少なくとも売り上げが伸びて収益が安定していれば、おのずと企業継承を考えるようになるということなのか。調査結果を受けて、実際の中小企業経営者との意見交換を行った。3名の簡単なペルソナを紹介しよう。

進行役(IT系リサーチ企業経営者):経営者であり、自ら調査分析も行う。経営者がITをうまく使えていないことに憂えている。年齢50代後半。

A(食品製造企業経営者):地方にある代々同族経営をしている老舗小売業の4代目経営者。3代目までは全くアナログな仕事ぶりだったが、就任と同時にITを活用する老舗として変貌中。年齢50代前半。

B(サービス企業経営者):首都圏にある広告代理店の経営者。従業員3名で5年前に設立。経営者としてITを割と使いこなしているつもりだが、実際に売上には結びつかず、クラウドなども含め日々模索中。年齢40代後半。

後継者と業績の良しあしは直接関係ない

跡取り社長Aから見ると、この調査結果は“微妙”なものに映るという。会社を継ぐことを前提としている会社経営者としては、継承するのが当たり前。Aは4代目で、相変わらず利益はなんとか出ているが、毎年カツカツである。でも自分の代で家業を潰したいとは思わない。

自分が会社を継承するということが既に決まっている状態で会社とかかわってきており、先代も後の世代に引き継ぐのを既定事実として経営していた。経営全般のリソース・従業員への教育なども含め、分かりやすい形で息子にノウハウを残してくれていたという。

しかし、それで経営がうまくいくかどうかは別の問題だ。Aも先代からの流れを受け、次の世代につなぐことを前提として経営しているが、継承を既定の路線として経営を行うことと、事業をさらに発展・拡大させることとは別であり、後者は後継者自身の手腕による問題だと自他共に認めている。

必死な経営者にとっては、継承を考える前提がない

Bにとって、必ずしも現在は良い状況ではない。アベノミクス的な景気の回復は、少なくともBのような中小企業にとって、限定的にしか影響を感じることがない。むしろ相変わらず全体的に景気は良くない状況のように映る。

大手代理店の下請け的なBの会社としては、仕事を出してくれる大手企業次第。なので、この調査で定義している後継者がいるかどうか、会社を引き継ぐかどうかを考える状況にない。つまり来月の資金繰りをどうするかなどの切迫した現状に日々直面している。継ぎたいと考える社員もいなければ、息子たちには別の事をやって欲しいとも思っている。

経営者の引退時に会社が廃業する可能性は高い。調査結果の全体の約7割が後継者を考えていないというのは納得できる結果と映る。中小企業は厳しい状況が続いているので、今のような苦しい状況を後世に繋げたいとは思わない。Bの会社における問題は他力本願的な体質であり、有望な元請けを確保するべく、自社の優位性を保持し、アピールするための戦略が必至となる。

 

良く言われるような、次の世代に引き渡す、いかにして2代目社長に引き渡すか、世襲の妙という捉え方も間違ってはいない。しかし、その前提として、継承する考えを持っていない大多数の中小企業経営者の実情をとにもかくにも理解することが、この種の継承問題についての基礎的な認識とすべきではないだろうか。

併せて読みたい、編集部からのおすすめ記事
〜「経営とITに関する調査」から〜:中小企業の約7割は、後継者について考えていない

多くの企業は経営課題に対して思いはあるが十分に取り組んでおらず、思い切った経営戦略のために投資するという段階にはないようだ。まずは現状のままで、少しでも改善できれば良いという、極めて保守的な経営マインドが感じられる。

プロフィール

小さな組織では何が経営課題か?

小さな組織の未来学では2014年12月、想定読者層にあたる企業、特に従業員100人未満の企業の経営者を対象に「経営に活かすITの活用実態に関する調査」を実施しました。ここでは、その調査結果を紹介し分析していきます。調査を行ったのは株式会社ノークリサーチ。