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特集

2016.11.09

「小さな国際都市」を目指す仙北市──若者が達成する未来(後編)

創生する未来

〜地域支援プロジェクト〜

地方創生 技術 成長戦略

仙北市を目覚めさせるために必要な唯一の条件は「若者」

「仙北市は、国から近未来技術実証特区に選定されましたが、ただ実証していれば良いというだけでなく、実用を明示しなければならないという責任があると思っています。1歩も2歩も今までの産業に必要な技術集積を図りながら、実態として産業を大きく前進させる力になる、というところをしっかり見せなければなりません。さらに、その産業の集積を仙北市もしくは秋田県内で進めていくということが大きな目標だと思っています。世界基準の産業構造──まさにど田舎の仙北市が世界に匹敵するフィールドになっていくことを、この数年で成し遂げなければならないという思いを強く持っています」(仙北市長 門脇光浩氏)

2016年10月20日、近未来技術実証特区における2回目の協議会が開催された。その冒頭で門脇市長が上記の内容を宣言し、仙北市の世直し施策が始まった。近未来技術実証特区に選定された仙北市は、話題のドローンを活用した市場創造で若い人をこの地に引き寄せることを狙っている。ただ、すでに秋田県内を見ても、秋田市に近い五城目町でドローンスクールが行われており、決して近未来技術実証特区だからといって先んじているという状況ではない。冷静に見れば分かるように、仙北市は先行事例の背中を見てスタートしなければならないと考えている。そして施策を継続していきながら、ここ数年で世界のトップランナーになろうと目指している。

協議会の様子
協議会の様子

「すでに一部の企業から、仙北市をターゲットに最先端技術の実証フィールドにしたいというお話もいただいております。これを絵空事で終わらせてはいけない。興味本位ではなく、仙北市そして秋田県の人口流出に歯止めをかけるために、若い方々が大きな期待を持てるような動きにしていかなければならないと思います。そのために、まずは分かりやすい成功事例を一つでも多く、早い時期に具現化していくという取り組みに対して、皆様から最大のご努力をご傾注願います」(仙北市長)

「ドローンバレー」で若者に明るい未来のトビラを

近未来技術実証特区の核と位置付けられているドローンは、すでに確立している技術やノウハウの集積体であり、製造と活用の両面を通じてドローンビジネス、ひいては産業全般をどのように見せるかというスケールで検討されている。若い世代はドローンに対して好意的であり、嫌悪感を抱く人は少ないためにアピールしやすい。ドローンは、若い世代に明るい未来のトビラを示す役割も担っている。

そして最終的には仙北市を、シリコンバレーのようなドローンバレーにする構想だ。この事業は1社だけ誘致して終わりではなく数社が入り乱れて、ある意味、競争状態となることが望ましい。ぶどうの房のようにそれぞれの粒が主張しあって存在する。それがドローンバレーとしての姿であり、その第一歩をこの事業で踏み出しているわけだ。

ドローンに限らず、人間の仕事がAIによって奪われるかもしれないと言われているが、仙北では今まで行われてきた「人間の仕事」すら担う人がいなくなっている。つまりは既存の事業を継承する人がいないのだ。そのためにも若い人が留まる、外部から来てもらえるようにする施策が必要であり、その一つがドローンに代表される近未来技術を用いた事業を創ることなのだ。

仙北市は2015年8月に「地方創生・近未来特区」の指定を受けている。そして「仙北市近未来技術を活用した新たな産業づくり支援協議会」第2回目が10月20日に仙北市役所において行われた。筆者も委員として参加した。今回は具体的な実証事業と実際にドローンを用いての研修が二泊三日の合宿研修として行われた。参加者は県内でドローン関連の事業を検討している事業者で、約20名が参加した。

第一回秋田県仙北市 近未来産業創造研修が、仙北市役所において二泊三日の日程(2016年10月21日から23日)で行われた。県内でドローン関連の事業を行っていたり検討している企業・個人約20名を対象にしたものだ。講師陣はドローンに関して全国・国外でも実績を有する4名を招いて、3日間ほぼ終日拘束の内容で行われている。

ドローン研修会
ドローン研修会

初日は、ドローンを取り巻く社会、経済、地域、業種など幅広い観点での講座。各講師陣による専門分野での講義。全体を通じての進め方に関する講師陣と参加者によるパネルディスカッション。夜は全員による懇親会でコミュニケーションを図り、本音ベースでドローン事業について議論した。

翌日二日目は、映像を中心とする実技指導である。実技での講師はドローン撮影によるCMで著名なイノマタトシ氏による実践的な映像研修だ。場所は田沢湖畔の廃校で行った。

最終日は土木・建築におけるドローン実技である。講師は土木計測分野においてドローン活用の第一人者である、日創建の創業者・渡邊真人氏による土木建設関連のドローン撮影実技だ。

その他、実技指導では、この地でドローンの教習を担当するskyer代表の宇佐美孝太氏、ドローンのレース「ドローンインパクトチャレンジ」を企画運営するFPV Robotics代表の駒形政樹氏らが講師として参加した。8月には仙北市で国内初のドローン国際競技大会「ドローンインパクトチャレンジ」が実施され、今回の特区事業の先行イベントとして全国的に報じられていた。

自然、文化、そして産業の、三位一体のシナジーを図る

「我々は過去の先人が残してくれた財産のうえで暮らしています。自然、観光、産業、これを次の世代にどう継承していくか。ここは高齢化と人口減少が大きなネックになっています。地元の企業が拡大するというよりも現状維持が精一杯で、従事している人も高齢化で給料も高いため、若い人を雇って育てる余裕も余りありません。しかし嘆いていても始まりません。旧態の経済環境の中から、若い人を誘引するきっかけや動機付けを促す新たなきっかけとして、若い人が中心となり、わくわくできるような環境を提示してサポートすること。それが仙北市の役割であり、ドローン特区はその具体的な施策の一つとなります」(仙北市長)

自然、文化、そして産業の、三位一体のシナジーを図ることが仙北市の再生プランの基本である。むしろ仙北市は、自然、観光、文化資源というアドバンテージを持っており、ここに新たな産業振興として観光や農林業など従来の基盤事業に加え、外部から付加価値を呼び込むための施策の筆頭がドローン関連事業となるわけだ。

これに加えて、以前から行っている企業の誘致やUIターンは、テレワーク推進という流れに沿った動きとして、田沢湖畔の民宿などの施設を活用したサテライトオフィスを展開している。仙北市全域に光ファイバーが敷設されており、しかもWi-Fiスポットは70カ所と東北一の実績を持っている。田沢湖畔の風光明媚な環境でテレワークできることは魅力的と感じ、現在多くの企業が視察に訪れているということだ。

さらには、民宿や空家などをリタイアしたシニア世代への展開がある。シニア世代は、いろんなスキルや人脈を有しているので、移住してもらうことで、さらに外部からの人を呼び込むチャンスになると期待されている。これらの施策によって、一気に人口を増やす方向に向かわせることは難しいかもしれないが、人口減少のスピードを抑えることはできる。

最後に。取材を進めているこの最中にも、人口の流出という現実は確実に進んでいる。急激な効果が出るような施策ではないため、一定の期間を想定して進める必要がある。この地に人、特に若者を留まらせる。外部から招き入れる。そのためにも実効のある結果を早めに示しながら、そして継続的な活動を続ける先にこそ、本当の狙いとする再生への道が開かれることになる。

文:創生する未来事業 事務局 代表 伊嶋謙二

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無くなりつつある地方都市では、本質的な経済の巻き返しや地元の人の流出を防ぐような、より根治的な施策を打つ必要があるはずだ。今回はその秘策を打ち出した仙北市長にインタビューしてきた。わらび座の記事で「文化を産業(お金)にする」と言った当人である。

プロフィール

創生する未来

《創生する未来とは何か?》「創生する未来」とは、ノークリサーチが提唱する地域支援のための活動です。地域自治体、地域経済団体、大学などと連携し、地域のITを提案する企業、ITを活用して事業の推進・拡大を目指す地元企業に向けて、IT/クラウド/IoTなどの最新技術をツールとしたセミナーなどの企画、運営、実行する事業を行います。また、調査やコンサルティングも行いながら、地域におけるITの認知、啓蒙、活用による地域企業を支援し、それによる地域活性化を目標としています。