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時間を味方につける

2015.06.16

「PDCA」よりも「DA・DA・DA」でやれ──100回の会議より100回の修正を

藤原 和博

社長の[よのなか]科 つなげる力 3分講座

方法論 成長戦略 意識改革

「つなげる力」をキーワードに、新しい時代のマネジメント、リーダーシップ、イノベーションを指南する3分間動画の連載です。講師は、元リクルートフェローで、東京の杉並区立和田中学で義務教育初の民間人校長を務めた藤原和博さん。経営者としてのコミュニケーション力を研き直せるだけでなく、アイデア溢れる人材の獲得、育成につながる知恵が、ホワイトボードを使った解説とショートエクササイズを通して、自然に身に付きます。

 

古くは、経営学において三つの経営資源を述べよと問われれば「人・物・金」だった。そこに「情報」と「時間」が加わり、五つの経営資源などと言われるようになったのは30年前ぐらいからか。最初に言い出したのはドラッカーだったと記憶している。

そして今日のネット社会では、「スピード」こそ最大の経営資源としてとらえる識者が多い。そこでお話ししたいのが、PDCAサイクルのことだ。いまや教育界においても、教頭先生の研修会などを行えば「どうやってPDCAを回すか」といった話になる。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Act(改善)を経て、またPlanへと回す。そういうサイクルがとても重んじられている。

ここで思うのは、PlanとCheckは頭の中でもできることなので、実際に体を動かすDoとActを、実行と改善、実行と改善というように繰り返したほうが速いということ。「DA・DA・DA(ダダダ)」の経営がスピーディーに実践できる企業こそが勝ち残るのだ。

この連載の初回からずっと語ってきたように、現代社会は既に20世紀の成長社会から21世紀の成熟社会へ突入している。「みんな一緒」から「それぞれ一人ひとり」の時代となり、ビジネスシステムも、ヒューマンリソースマネジメントも、個に焦点を合わせなければならない。昔ながらの正解主義の経営では、もう生き残れないのだ。迅速に修正主義を実践しなければならない。

修正主義の例として、スターバックスの話を挙げておこう。今となっては全国どこでも同様の店舗を目にすることができるが、最初からそういうお店だったと思い込んでいる人が多い。実は当初、アメリカで生まれたばかりのスターバックスは、完璧にイタリアン・スタイルのコーヒーショップだった。店員は蝶ネクタイを締め、店に椅子は無く、イタリア・オペラの音楽が鳴り響くなか、客が葉巻を片手にエスプレッソをくいっと飲んで立ち去る。そういうイメージでお店が作られていた。

しかし、それでは客がどうも集まらないということで、何度も何度も改善された結果として、今日のような待ち合わせにもミーティングにも使いやすく、携帯やパソコンの電源まで取れるようなお店に変化し続けてきたわけだ。最初から正解の姿が出来上がっていたわけではなく、修正主義の結果として今がある。

物心ついたときに最初から完成品をいやというほど目にしてきた若者は、そこを勘違いしやすい。携帯電話であっても、新幹線であっても、すべての商品は修正し続けた結果として、ようやくその形になったのだ。正解が出るまで100回の会議を積み重ねるといった感覚ではなく、まずは小さく始めてしまってから100回修正を続ける姿勢こそが、市場に受け入れられる商品にたどり着くための王道に他ならない。

今日一つ改善したら、明日もう一つ改善する。1年365日、毎日改善し続ければ、300以上の改善を施せる。3年続ければ、1千カ所以上を良くすることができる。それだけ改善できれば、会社でも学校でも、商品だってサービスだって、良くならないわけがない。

こういう感覚で改善の“癖”がつけば、どんなものでも付加価値が高まり、利益も自然と生まれることになるだろう。

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プロフィール

藤原 和博 (ふじはら かずひろ)

1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事の特別顧問、14年~佐賀県武雄市の教育政策特別顧問に。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が『ベネッセ賞』、新しい地域活性化手段として「和田中地域本部」が『博報賞』、給食や農業体験を核とした和田中の「食育」と「読書活動」が『文部科学大臣賞』をダブル受賞し一挙四冠に。著書に『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズがある。ビジネス系では『リクルートという奇跡』、情報編集力の本質を和田中での改革ドキュメントとともに解説した『つなげる力』(ともに文春文庫)。人生後半戦の生き方の教科書『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。最新刊は『もう、その話し方では通じません』(中経出版)。詳しくはホームページ「よのなかnet」に。