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カネを活かす

2015.06.04

学校の授業1コマは何円か──“皆”経営者主義における情報共有とコスト意識

藤原 和博

社長の[よのなか]科 つなげる力 3分講座

教育 モチベーション 意識改革

「つなげる力」をキーワードに、新しい時代のマネジメント、リーダーシップ、イノベーションを指南する3分間動画の連載です。講師は、元リクルートフェローで、東京の杉並区立和田中学で義務教育初の民間人校長を務めた藤原和博さん。経営者としてのコミュニケーション力を研き直せるだけでなく、アイデア溢れる人材の獲得、育成につながる知恵が、ホワイトボードを使った解説とショートエクササイズを通して、自然に身に付きます。

 

リクルートには「“皆”経営者主義」という言葉が昔から根付いていた。一部の経営者以外はすべて使用人という考え方だと、その使用人が働くための動機付けが問題になるし、どうやってコスト意識を持ってもらうかといったことまで、心配事が絶えない。

ならば、社員が3千人いたら3千人すべてに経営者の意識で仕事をしてもらったほうがいい。これが皆経営者主義の考え方だ。実現するためには二つの大きな条件がある。

一つは、情報が徹底的に共有されること。リクルートではアルバイト・パートに至るまで、ほぼ社員と同じくらいの情報を持たせる努力を怠らなかった。当時、社内広報についてはお金も投資し、特に優秀な女性たちに担当させていた。広報を担当した女性たちは現在、外でも様々に活躍している。

もう一つは、プロフィットとコストの意識をどう持たせるかということ。これが大事なのは経営者なら分かるだろうが、コスト意識を持たせにくい市場もあるかと思う。私が注力している義務教育改革の世界でも、学校の先生というのはなかなかコスト意識を持ちにくい。

現在、私は全国の校長先生を集め、「校長先生の校長」として、ドラッカー経営学を取り入れたマネージメント研修を教員研修センターなどで行っている。その中で、校長先生たちに「夏にプールを水で満たすと、いくらになるか知ってますか?」といった質問をするが、ほとんどの先生は答えられない。答えは20万円ほどだ。

ちなみに理科室に置いてある骸骨はいくらだろうか。これは6、7万円が学校の相場だと思うが、ネットで検索をかけてみると、1万数千円ぐらいで買えたりする。「お一つ、ご自宅にいかがでしょうか」といった価格だ。“シャレ”で会社に置いてもいいかもしれない。

さて、学校の例で、私がどのように先生方にコスト意識を持ってもらったか、一例としてお話ししておこう。公立校といえども、学校はタダで運営できるわけではない。当然、お金がかかっている。先生の人件費が大きいし、教科書代もかかる。長い目で見ると校舎の改修費なども考慮しなければならない。

いろいろ計算すると、だいたい義務教育の児童生徒1人あたり、年間100万円の税金が投与されていることになる。そしてどこの学校でも、年間1千コマほどの授業が行われている。100万円を1千コマで割ると、1人1コマ1千円という非常に分かりやすい値段になる。

例えば、授業が終わった先生をつかまえて、30人の生徒がいたとしたら30人×1千円=3万円、「3万円が支払われるだけの授業ができましたか?」と聞いてみたらどうだろう。よく理解できなかった生徒にとっては100円の価値しかなかったかもしれないし、居眠りしていた生徒には1円の価値もないはずだ。逆に予習をしてきた生徒であれば、千円を超える価値を享受するだろう。

私はこういうことを繰り返し先生たちに尋ねることで、授業1コマあたり1人1千円という原価意識を持ってもらった。1千円という金額は、ちょうど中学生が映画を1本見るのと同じ料金だ。果たして先生の1授業が子どもにとって、どれほど価値があり、いくら支払ってもらえる内容なのか。そういった疑問から原価意識というものが芽生える例もある。皆さんの会社でも、どのようにプロフィットとコストの意識を持たせれば良いか、できるだけ象徴的な施策を考えてみてほしい。

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プロフィール

藤原 和博 (ふじはら かずひろ)

1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事の特別顧問、14年~佐賀県武雄市の教育政策特別顧問に。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が『ベネッセ賞』、新しい地域活性化手段として「和田中地域本部」が『博報賞』、給食や農業体験を核とした和田中の「食育」と「読書活動」が『文部科学大臣賞』をダブル受賞し一挙四冠に。著書に『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズがある。ビジネス系では『リクルートという奇跡』、情報編集力の本質を和田中での改革ドキュメントとともに解説した『つなげる力』(ともに文春文庫)。人生後半戦の生き方の教科書『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。最新刊は『もう、その話し方では通じません』(中経出版)。詳しくはホームページ「よのなかnet」に。