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人を組み替える

2015.05.19

象徴のマネジメント──case 3「開けゴマ!な教育改革」

藤原 和博

社長の[よのなか]科 つなげる力 3分講座

教育 イノベーション 意識改革

「つなげる力」をキーワードに、新しい時代のマネジメント、リーダーシップ、イノベーションを指南する3分間動画の連載です。講師は、元リクルートフェローで、東京の杉並区立和田中学で義務教育初の民間人校長を務めた藤原和博さん。経営者としてのコミュニケーション力を研き直せるだけでなく、アイデア溢れる人材の獲得、育成につながる知恵が、ホワイトボードを使った解説とショートエクササイズを通して、自然に身に付きます。

 

組織改革を進めるときのツボとして、象徴(シンボル)のマネジメントについてご紹介してきた。「人事」「技術」に続く三つ目は「教育」について。今回はちょっと趣向を変えて、もしあなたが私のように教育改革を志す人であった場合で想像してみてほしい。

自分が住む市区町村で初の民間校長となり、とにかく学校をオープンにして、子どもたちに様々な機会をより多く与えたいと望むとき。あなたなら、一番最初にどんなアクションを起こすだろうか。どのようにすれば、学校が以前より開かれたものになったという噂を、一発で広めることができるだろうか。

入学式などの挨拶で方針を語ったり、各種広報に所信表明を掲載するだけでは、なかなか通じるものではないだろう。より具体的なアクションとして、先生や保護者や、もちろん生徒たちにも、あっという間に開かれた意識へと改革できるような象徴的な施策を、15秒ほどで考えてみてほしい。あなたが民間校長として4月に学校へと赴任し、まず最初に起こすアクションは何か。

 

もちろん様々なアクションが考えられる。例えば学校で使われているお金。生徒数が300人程度の学校だと、生徒一人あたりにおおよそ100万円の税金を投じるので、3億円ぐらいのお金がかかっていることになる。そのお金がどのように使われているのか、予算に関する情報をすべてオープンにするという考え方もあるだろう。もしくは、とにかく自治会長や商店会長と飲みまくってコミュニケーションすることで、自分がやりたいことを知ってもらい、オープンに進めていくなんて方もいるかもしれない。

私が入学式の日に初めて行ったアクションは、「これから校長室をオープンにします。いつでも遊びに来てください」と伝えることだった。「本も用意するし、マンガも用意しておくので、いつでも来てください」と。私が学校を観察して思ったのは、学校自体もだいぶ外から閉ざされている感が強いが、特にドアが常に閉められている校長室は、その象徴なのではないかと感じた。それを開け放つことによって、新しい施策の象徴としてイメージが伝わるのではないかと考えたのだ。

朝に伝えると早速昼には、3年生のおませな女子生徒が「こんにちは……」と様子を探りに来た。気持ちよく迎え入れて、どんな本やマンガがあるのかを確認しているところに、気さくな会話を交わす。するとその子は、後で「今度の校長はちょっとなんだか面白い」といったことを友人たちに伝える。今ならばSNSなどで伝えるかもしれない。帰ったら親にも話すことだろう。そんなわけで、昼休みには校長室に20人ぐらいの生徒が訪れ、私の前でマンガを読むようになった。

それともう一つ、壊れたコンピューターをさらにメチャクチャに壊させるというイベントもやったことがある。私の世代では、置き時計が壊れると親から許しをもらって全部分解したものだ。これはノーベル賞を受賞した小柴昌俊先生も行っていたそうで、物の構造や理科に興味を持つきっかけになったとお話しされていた。

メチャクチャに壊させてあげると、最後に黄金色に輝くコンピューターのチップが出てくる。それを本当に大事そうに「先生、これもらって帰っていいですか?」とお願いする生徒がいたので、「もう壊したものだから、いいよ」と言って、それをあげた。後から聞いた話だが、それを持ち帰った子は卒業するまで、その黄金色に輝くチップを家の神棚にあげて拝んでいたという。その後、理系に進んだかどうかは分からない。

象徴となるものを的確に捉えて変化を加えると、閉ざされていたものが開かれ、目に見える効果を生み出す。ぜひ、意識改革のツボとなる「象徴(シンボル)」を探してみてほしい。

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プロフィール

藤原 和博 (ふじはら かずひろ)

1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事の特別顧問、14年~佐賀県武雄市の教育政策特別顧問に。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が『ベネッセ賞』、新しい地域活性化手段として「和田中地域本部」が『博報賞』、給食や農業体験を核とした和田中の「食育」と「読書活動」が『文部科学大臣賞』をダブル受賞し一挙四冠に。著書に『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズがある。ビジネス系では『リクルートという奇跡』、情報編集力の本質を和田中での改革ドキュメントとともに解説した『つなげる力』(ともに文春文庫)。人生後半戦の生き方の教科書『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。最新刊は『もう、その話し方では通じません』(中経出版)。詳しくはホームページ「よのなかnet」に。