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時間を味方につける

2015.04.30

人生の“棚卸し”──エネルギーカーブを描くことで見えてくるもの

藤原 和博

社長の[よのなか]科 つなげる力 3分講座

成長戦略 教育 リーダー

「つなげる力」をキーワードに、新しい時代のマネジメント、リーダーシップ、イノベーションを指南する3分間動画の連載です。講師は、元リクルートフェローで、東京の杉並区立和田中学で義務教育初の民間人校長を務めた藤原和博さん。経営者としてのコミュニケーション力を研き直せるだけでなく、アイデア溢れる人材の獲得、育成につながる知恵が、ホワイトボードを使った解説とショートエクササイズを通して、自然に身に付きます。

 

経営者・マネージャーの方だけではなく、すべてのビジネスパーソンに人生の「エネルギーカーブ」を描いてみてもらいたい。

まず、縦軸と横軸から成るグラフの枠を、横長に用意しよう。いちばん左下には“生”の字を。いちばん右下には“死”の字を書く。横軸が人生のライフサイクルだ。真ん中あたりは平均寿命から考えて40代ということになる。そして、縦軸がエネルギーレベルだ。エネルギーレベルとは、知力・体力・精神力の総合力と考えても良いし、モチベーションのレベルと考えても良い。

グラフに“死”などと書くのは縁起でもないと思うかもしれないが、いきいきとしたライフデザインを考えるためには、死というものをきちんと見据える必要がある。さて、ここにどのようなエネルギーカーブを描くかということをお話ししたい(詳しくは拙著「坂の上の坂」にて説明しているので、そちらもご覧いただきたい)。

私の場合で説明すると、まず生まれてから、小学生のときまではすごくエネルギーカーブが上がっていった。近所のお兄さん、お姉さんたちと一緒に木の上に基地を作ったり、野球に熱中したり、めくるめく楽しいことばかりに包まれた日々だった。

それが小学校高学年の頃、釜本選手の影響を受けてサッカーに興味を持つも、なんと中学校にサッカー部がなかった。ここで私のエネルギーカーブはいったん“谷”を描く。間違って剣道部に入るが性に合わず、エネルギーをぶつける対象が見当たらなかった。中学生にはありがちなのだが、ちょっとワルぶるのがカッコいいと勘違いして、一所懸命に悪い子をアピールしていた頃である。

しかし高校では上り調子に。バンドを組んでビートルズを演奏し、リードボーカルだった私は“モテ期”にあった。それが大学に入るやいなや、下の下まで落ちることになる。今でこそ分かるが、それは重い5月病だった。目標を見失い、授業も出ずに引きこもった。運転免許を取りに行くということで外に出始めたのが、助かったきっかけだったと思う。

不安定だった学生時代をなんとか乗り越え、リクルートに入社してから私の“山”はぐいぐいと盛り上がることになるが、30歳でまたずっしりと凹む。メニエール病を患ったのだ。役職もあがり、年収も高まっていたところで、心身症の一種にかかってしまった。日曜日に寝ていたところ、寝返りをうつときに天井がぐるんと回って見えた。これは絶対におかしいということで病院に行くも、なかなか原因が分からず、ようやく内耳性の問題ではないかと診断された。

それから5年ほど後遺症に悩まされることになるが、また新しい山が盛り上がりを見せ、民間校長としてもうまくいったことで、山あり谷ありの私の人生は今に至る。そして以前にもお話ししたように、今後はいくつもの山を「八ヶ岳型」のように描きたいと考えている。

さて、小さい波にあまりこだわらず、こういった人生の大きな山と谷を描き、自分の人生を一度“棚卸し”することで、実は自分の人生の谷となる部分が深ければ深いほど、それは反転し、その後の人生に大きな影響を与えていることに気付くはずだ。そして、失敗・挫折・病気といったマイナスモードの経験を乗り越えてきた自分をあらためて意識し、他人に面白おかしく話せるようになれば、それは人を引きつけるために有効な、自分の“資産”となる。山の部分として描かれた自分の自慢話ばかりを話しているようだと人は離れていき、やがて寂しいオヤジになる。

こういう図をもとに、上司の方は部下へ、両親は子どもに、ぜひ自分が“正解の束”ではないということを説明してもらいたいのだ。部下や子どもたちからは、あなたが正解主義の完成品に見えている。そうではなくて、いろんな谷を乗り越えて今があるのだということを分かってもらえば、その人の人間味が伝わり、人望も厚くなる。ぜひ人生のエネルギーカーブを見直し、マイナスモードの自分を確認して、それを豊かに話せる人になってもらいたい。

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プロフィール

藤原 和博 (ふじはら かずひろ)

1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事の特別顧問、14年~佐賀県武雄市の教育政策特別顧問に。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が『ベネッセ賞』、新しい地域活性化手段として「和田中地域本部」が『博報賞』、給食や農業体験を核とした和田中の「食育」と「読書活動」が『文部科学大臣賞』をダブル受賞し一挙四冠に。著書に『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズがある。ビジネス系では『リクルートという奇跡』、情報編集力の本質を和田中での改革ドキュメントとともに解説した『つなげる力』(ともに文春文庫)。人生後半戦の生き方の教科書『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。最新刊は『もう、その話し方では通じません』(中経出版)。詳しくはホームページ「よのなかnet」に。