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時間を味方につける

2015.04.28

終わらないキャリアの掛け算で“レア”になる──お笑い芸人×美容師=?

藤原 和博

社長の[よのなか]科 つなげる力 3分講座

成長戦略 競争 多様性

「つなげる力」をキーワードに、新しい時代のマネジメント、リーダーシップ、イノベーションを指南する3分間動画の連載です。講師は、元リクルートフェローで、東京の杉並区立和田中学で義務教育初の民間人校長を務めた藤原和博さん。経営者としてのコミュニケーション力を研き直せるだけでなく、アイデア溢れる人材の獲得、育成につながる知恵が、ホワイトボードを使った解説とショートエクササイズを通して、自然に身に付きます。

 

“掛け算”が大事な時代だ。価値観が多様化した成熟社会において、何と何をつなげるかということが非常に重要になる。

学校においてキャリア教育が進められているが、そのやり方には疑問を感じるところがある。小学校や中学校で生徒に「どんな仕事に興味があるか」を問い、「それについて調べてきなさい」と課題を出し、発表させたりする。そして大体の生徒はグーグルなどで検索し、最初のいくつかをコピーして資料を作り、皆が同じような発表をする。

しかし、これからの社会においては職業がもっと多様で、さらに入り乱れることになるはずだ。ある職業とある職業が合体し、掛け算で結びつく。こういった傾向はさらに進んでいく。

例えば、お笑い芸人を目指す20代青年の場合。一所懸命にチャレンジして、もしかしたら100人に一人の存在にはなれるかもしれない。しかし、自分のレギュラー番組を持つような1万人に一人の存在にはなれず、明石家さんまやビートたけしのような100万人に一人、1千万人に一人のようなスターとは程遠い存在だ。

そこで失意のまま、故郷に戻ってきたとしよう。しかし、そこで終わりかというと、そんなことは全くない。同じ業界で1万人に一人、100万人に一人を目指さなくても、別の異質なものを掛け算すれば良いのだ。仮にお笑い芸人を目指す以前、美容師の仕事に興味があったとしよう。専門学校に通っていたことがあるとしても、そうでなかったとしても、人は1万時間を費やせば何でもマスターレベルに達し、100分の1程度の存在にはなれる。30代から5〜10年かけて美容師の修業をやり直せば、お笑い芸人×美容師=お笑い美容師というキャリアの誕生だ。髪を切りに来た人を鏡越しに楽しませることができる。そんな人が地方に住んで活躍していたら、すごく人気が出ることだろう。

同じように、20代にツアーコンダクターをしていた場合。働き過ぎて体を壊してしまったとき、もともと犬が好きだったのでトリマーに転身することを決める。ツアコン×トリマーというのは意外な取り合わせに感じるかもしれない。しかし昨今、ペット好きな高齢者が旅に出たいという需要も大きいだろうし、お金持ちであれば豪華客船で愛犬を連れて、色々な街を訪れたいといった要望もあるだろう。犬を愛する人専門のツアーコンダクターといった形で、希少性を発揮する可能性はいくらでもあるのだ。

現に、今ではネイルアーティストやアロマセラピストといった職業が女性の人気を集めているが、20年前にはなかった職業だ。ここまでメジャーになったのは、ネイル×アーティスト、アロマ×セラピストのように職業を掛け合わせ、第一人者と呼ばれる人たちがお金の入る仕組みを生み出し、業界を育て上げていった結果に他ならない。

これからの子どもたちは、さらに掛け算された多様な職業に就くようになるだろう。この考え方を応用すれば、あなたの会社ももっと希少性を高めることができる。レアカードになれば、営業しなくても話が向こうからやってくる。あなたの会社や商品・サービスの付加価値を高めるためにも、どうすればレア感が出るのか、ぜひ掛け算の発想で考えてみてほしい。

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プロフィール

藤原 和博 (ふじはら かずひろ)

1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事の特別顧問、14年~佐賀県武雄市の教育政策特別顧問に。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が『ベネッセ賞』、新しい地域活性化手段として「和田中地域本部」が『博報賞』、給食や農業体験を核とした和田中の「食育」と「読書活動」が『文部科学大臣賞』をダブル受賞し一挙四冠に。著書に『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズがある。ビジネス系では『リクルートという奇跡』、情報編集力の本質を和田中での改革ドキュメントとともに解説した『つなげる力』(ともに文春文庫)。人生後半戦の生き方の教科書『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。最新刊は『もう、その話し方では通じません』(中経出版)。詳しくはホームページ「よのなかnet」に。