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人を組み替える

2015.04.21

【問4】子育てに正解はないとし、ベクトルを描くべき家族プロジェクトを見つけよ

藤原 和博

社長の[よのなか]科 つなげる力 3分講座

社会 コミュニケーション 教育

「つなげる力」をキーワードに、新しい時代のマネジメント、リーダーシップ、イノベーションを指南する3分間動画の連載です。講師は、元リクルートフェローで、東京の杉並区立和田中学で義務教育初の民間人校長を務めた藤原和博さん。経営者としてのコミュニケーション力を研き直せるだけでなく、アイデア溢れる人材の獲得、育成につながる知恵が、ホワイトボードを使った解説とショートエクササイズを通して、自然に身に付きます。

 

前回お話ししたような「結婚」だけでなく、「子育て」まで“正解主義”で進めると、子どもにとってはとても苦しい環境となる。正解ありきで規律を重んじる職場、例えば警察、あるいは学校などに親が勤めている場合、正解主義で追い込まれた子どもが耐えきれずに道を踏み外すケースが少なくない。

そこで子育てにも「ベクトルの和」という考え方を応用してほしい。全く違う育ち方をしてきた夫婦なのだから、さて子どもを育てようというときにも、お互いのベクトルが違う方向を向いているのは当たり前のことだ。同じベクトルでいきなり意見が一致するということは、まずない。夫と妻の、そして親と子どもの「ベクトルの和」を、無限に合わせ続けることが必要となる。

ただし、このベクトル合わせも、子どもが高校を卒業する頃からちょっと様子が変わってくる。その頃までは、子どもの敵はだいたい夫婦共通の敵として見なすことができるものだ。一緒に悪口を言える対象(例えば学校の先生など)がいたり、皆で盛り上がれる“プロジェクト”があれば、個々の課題がはっきりと見えて、ベクトル合わせも行いやすい。

しかし、子どもが大学に入る頃にもなると突然、共通の敵という存在もなくなってしまう。すると夫婦の会話なども減ってしまうのだ。以前に「坂の上の坂」型という人生観についてお話ししたが、ここでも子育て以外の新しい“プロジェクト”を探してみてほしい。スポーツや、一緒に何かを研究しても良いし、被災地支援のコミュニティーに参加しても良い。そもそも家族経営で仕事をされている方ならば、それほど話題に困ることもないかもしれない。

もし子育てが一段落してから、まだ新しいプロジェクトが見つからないという方には、犬を飼うことをお勧めしている。夫婦がお互いの名を呼ばなくなって久しくとも、犬の名前は一日に何十回と呼ぶことになる。そして「エサはあげたか」「散歩には行ったか」と、とにかく犬にまつわる会話は必ず毎日起こる。そうこうしているうちに、また次のプロジェクトが見つけられれば良い。

夫婦ともに何かのプロジェクトに取り組み、不断のベクトル合わせを続けていれば、それを目にする子どもや、あるいはお孫さん、そして従業員などにも、正解主義ではなく“修正主義”の人生観が伝わることになる。ぜひあらゆるプロジェクトに向けて、「ベクトルの和」を積極的に活用してほしい。

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プロフィール

藤原 和博 (ふじはら かずひろ)

1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事の特別顧問、14年~佐賀県武雄市の教育政策特別顧問に。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が『ベネッセ賞』、新しい地域活性化手段として「和田中地域本部」が『博報賞』、給食や農業体験を核とした和田中の「食育」と「読書活動」が『文部科学大臣賞』をダブル受賞し一挙四冠に。著書に『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズがある。ビジネス系では『リクルートという奇跡』、情報編集力の本質を和田中での改革ドキュメントとともに解説した『つなげる力』(ともに文春文庫)。人生後半戦の生き方の教科書『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。最新刊は『もう、その話し方では通じません』(中経出版)。詳しくはホームページ「よのなかnet」に。