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人を組み替える

2015.04.07

社員が若くして描く“後半の山”は、会社をも豊かにする

藤原 和博

社長の[よのなか]科 つなげる力 3分講座

成長戦略 老後 教育

「つなげる力」をキーワードに、新しい時代のマネジメント、リーダーシップ、イノベーションを指南する3分間動画の連載です。講師は、元リクルートフェローで、東京の杉並区立和田中学で義務教育初の民間人校長を務めた藤原和博さん。経営者としてのコミュニケーション力を研き直せるだけでなく、アイデア溢れる人材の獲得、育成につながる知恵が、ホワイトボードを使った解説とショートエクササイズを通して、自然に身に付きます。

 

社長もマネージャーも、そして部下の従業員たちも、後半の人生を豊かにするイメージをお互いに共有できると、上に立つ人間の人望も非常に厚くなる。そのときに重要となるのが、前回ご紹介した「坂の上の雲」型ではない「坂の上の坂」型の人生観だ。

「坂の上の雲」型は単線型、「坂の上の坂」型は複線型と言い換えても良い。人生の半ば、40代を頂上として登りきり、あとは下るだけの一山を描く人生ではなく、人生の後半にいくつもの小さな山を描き出すような人生。そういう人生観が大事だ。

会社に入り、努力して偉くなり、退職すればあとは下り。転職すれば二山、三山と描く方もいるだろうが、基本的に人生の山を、仕事における組織内での高低差と重ねる人は多いだろう。しかし、複線型の人生においては、後半の山は組織の山ではない。コミュニティーの山となる。山の高さはコミュニケーションの量、山の豊かさはコミュニケーションの質なのだ。

この後半に見据えたいくつもの山だが、頂上だけをぴょんぴょんと渡れるかというと、そんなことはない。例えば八ヶ岳の景色を横から見れば、確かに頂上だけが並んだ連山のように見える。しかし、その一つひとつの山の下には、もちろん見えないところに裾野が広がっている。

つまり、人生の後半に見据えたいくつもの山を渡り歩くためには、若いうち、組織に属しているときから主峰となる仕事とは別に、後半にあたる新たな連山の尾根を描きはじめていなければならない。地域社会における自分の足場を築いたり、子どもの学校で交流を深めたり、あるいは被災地支援のコミュニティーに参加しても良いだろう。

プラスモードの趣味を生かして、自分からコミュニティーを立ち上げても良いし、今どきはネットで調べれば無数のコミュニティーが存在しているから、そういったものに参加しても良い。無いならば、今から趣味を作ったって良いのだ。何でも1万時間かければ、山の上部まで登ることができる。それが5年後、10年後、20年後だったとしても、後半の人生を豊かにしてくれる新たな山となる。

こういった複線型の意識を会社の従業員が持ち始めると、ただ単に自分の会社に尽くすというだけではなく、広い視野で物事を見ることができるようになり、人的なネットワークも広がる。それはアイデアを豊富にし、本業への貢献へと確実につながっていくのだ。

多様な山から流れ込む川の水のように、様々なアイデアが社外の多様なリソースから流れ込めば、会社もより豊かになる。そういった社員を育てることにより、社長やマネージャーの人望も厚くなる。会社にアイデアが満ちあふれるように、複線型の人生、「坂の上の坂」型の人生観について、ぜひ意識してもらいたい。

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プロフィール

藤原 和博 (ふじはら かずひろ)

1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事の特別顧問、14年~佐賀県武雄市の教育政策特別顧問に。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が『ベネッセ賞』、新しい地域活性化手段として「和田中地域本部」が『博報賞』、給食や農業体験を核とした和田中の「食育」と「読書活動」が『文部科学大臣賞』をダブル受賞し一挙四冠に。著書に『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズがある。ビジネス系では『リクルートという奇跡』、情報編集力の本質を和田中での改革ドキュメントとともに解説した『つなげる力』(ともに文春文庫)。人生後半戦の生き方の教科書『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。最新刊は『もう、その話し方では通じません』(中経出版)。詳しくはホームページ「よのなかnet」に。