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人を組み替える

2015.04.02

現代は“坂の上の坂”型で生き抜く──人生の後半を豊かにする視点

藤原 和博

社長の[よのなか]科 つなげる力 3分講座

老後 リーダー 成長戦略

「つなげる力」をキーワードに、新しい時代のマネジメント、リーダーシップ、イノベーションを指南する3分間動画の連載です。講師は、元リクルートフェローで、東京の杉並区立和田中学で義務教育初の民間人校長を務めた藤原和博さん。経営者としてのコミュニケーション力を研き直せるだけでなく、アイデア溢れる人材の獲得、育成につながる知恵が、ホワイトボードを使った解説とショートエクササイズを通して、自然に身に付きます。

 

会社とは不思議なところで、仕事をする場でもありながら、人生の大半を過ごす場でもある。経営者であっても従業員であっても同様であり、経営者が自分の人生を開かれたものにすることはもちろん、自分の会社の従業員の人生についてもかかわらざるを得ない。それをよく考えている経営者は人望が厚くなる。

今回からは、この人生というものについて、どう捉えればよいかを考えていきたい。人生の何たるかまで教えられるとは思わないが、経営者および従業員について、特に人生の後半を活力あるものにするためのちょっとした知恵や視点があるので、それをいくつかご紹介しよう。

まず、私たちが今生きている時代は、私たちのおじいちゃん、おばあちゃんたちが生きていた「坂の上の雲」の時代ではなく、「坂の上の坂」だということだ。私たち日本人の人生観というのは、実はまだ明治期を生きた人たちの人生観にとらわれ過ぎている。そこを見直さなければ人生が開かれない。

どういうことかグラフで考えてみよう。生まれてから死ぬまでの時間を横軸、そして縦軸は、人生のエネルギーレベル、あるいは知力・体力・精神力のすべての総合力、もしくはモチベーションのレベルと考えてもらっても良い。横の時間軸における中間点は、現代ならば40から45歳ぐらいということになるだろう。

そこに、どんな感じで勢いが増して、どんな感じで勢いがなくなるのか、いわば人生のエネルギーカーブを描いてくださいと言うと、大抵の方が真ん中を頂点とした山を一つ描く。これを「富士山型一山主義」と呼んでいる。30代、40代と脂が乗っていき、ピークを過ぎれば後はもう下るばかりという人生観を持つ方が多い。この人生観は「坂の上の雲」世代の人たちならば良いが、現代の人には相応しくない人生観となる。

明治時代の人たちには、山頂にビジョンや夢といった雲があった。頂上の40代に向けて山を登り、あるいは走り抜き、そこで一仕事をなし得たところで、人生が終わりを迎えた。例えば、「坂の上の雲」はNHKでドラマにもなったのでお好きな方が多いと思うが、本木雅弘が演じた海軍軍人の秋山真之は、49歳で亡くなっている。夏目漱石は48歳。あのドラマでいちばん格好良かった総参謀長の児玉源太郎は53歳で亡くなっている。乃木希典のように60過ぎまで長生きした人もいるが、多くの兵士が山の頂点である40代で亡くなっている。

ところが、明治時代から現代までの100年で、平均寿命は40代から80代まで約2倍に延びている。寿命が延びている現代において、「富士山型一山主義」の人生観では後半が寂しくなるばかりだ。こういう時代には、後半からも山を重ねる必要があるはずだ。坂の上に坂があっては大変だなと考えるのではなく、山が下がるところにまた小さな山をいくつも用意すると考えてほしい。これを「八ヶ岳型」と呼んでいる。

社長としても親としても、人生観を改めて後半にも豊かな人生を歩もうとすれば、後からついて行くことになる部下、もしくは子どもたちも人生が開かれることになる。人生の後半は「坂の上の坂」というイメージで、豊かに生きてもらいたい。

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プロフィール

藤原 和博 (ふじはら かずひろ)

1955年東京生まれ。78年東京大学経済学部卒業後、株式会社リクルート入社。東京営業統括部長、新規事業担当部長などを歴任後、93年よりヨーロッパ駐在、96年同社フェローとなる。2003年より5年間、都内では義務教育初の民間校長として杉並区立和田中学校校長を務める。08年~11年、橋下大阪府知事の特別顧問、14年~佐賀県武雄市の教育政策特別顧問に。キャリア教育の本質を問う[よのなか]科が『ベネッセ賞』、新しい地域活性化手段として「和田中地域本部」が『博報賞』、給食や農業体験を核とした和田中の「食育」と「読書活動」が『文部科学大臣賞』をダブル受賞し一挙四冠に。著書に『人生の教科書[よのなかのルール]』『人生の教科書[人間関係]』(ちくま文庫)など人生の教科書シリーズがある。ビジネス系では『リクルートという奇跡』、情報編集力の本質を和田中での改革ドキュメントとともに解説した『つなげる力』(ともに文春文庫)。人生後半戦の生き方の教科書『坂の上の坂 55歳までにやっておきたい55のこと』(ポプラ社)は12万部を超えるベストセラーに。最新刊は『もう、その話し方では通じません』(中経出版)。詳しくはホームページ「よのなかnet」に。