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人を組み替える

2016.11.29

「運は引き寄せるもの。頼るものではない」という社長の一言

飯野 たから

経営者のための「運」とのつきあい方

教育 リーダー

経営者のための「運」とのつきあい方
はたから見て、「運がないな」と思う人が確かにいます。その一方で、たった一度のチャンスをものにする「運」の強い人もいます。ここで紹介する社長さんの会社にも、そんな運の強い社員が入ってくることがありますが、必ず釘を刺すそうです。

運も実力のうち?

米大統領選は11月8日、共和党候補の実業家ドナルド・トランプ氏が大方のメディア予想を覆し、民主党候補の前国務長官ヒラリー・クリントン氏を破り、第45代大統領の座を射止めた。

同氏には上下院議員、州知事などの公職経験がなく、その政治的手腕や指導力は未知数で、政策面も不透明。特に外交面、経済面が不安視され、彼が大統領になった場合、米国以外にも混乱が及ぶのではないかとの懸念が拡がっていました。日本においては、在日米軍の駐留経費負担の増額要求やTPPが問題となっています。実際、開票速報でトランプ氏の優勢が明らかになった9日、東京株式市場では900円超下落しました。

事前の世論調査などから接戦が伝えられていたものの、ほとんどのメディアや識者は最終的にクリントン氏勝利と見ていました。しかし、この結果です。トランプ氏勝利の原因を、米国民のエスタブリッシュメントに対する批判、反発としたメディアもありますが、「相手に恵まれた」とか「運が良かった」と考える人も多いでしょう。私もその一人です。

ただ仮に「運」だとしても、トランプ氏はビジネスで培った経営者としての能力があったからこそ、このチャンスをものにできたと言えるでしょう。現に勝利宣言や当選後の紳士然とした言動で、暴言王、手腕不足などと悪評だらけだった彼に対する見方も変化しています。例えば、経済重視を明言したことで株式市場は反発し、10日の東京市場の日経平均株価も前日の下げ幅を上回る1092円高でした。少なくとも株価は、新大統領を歓迎したと言えるでしょう。

運の強い人間は運に頼らない

はたから見て、「運がないな」と思う人が確かにいます。能力も意欲もあり、また努力もしているのに、仕事でもプライベートでも肝心なときに上手くいかない人です。その一方で、たった一度のチャンスをものにする「運」の強い人もいます。

ここで紹介する社長さんの会社にも、そんな運の強い社員が入ってくることがあります。学校を出たばかりで仕事のイロハもよく理解できてないのに、営業マンとして外回りを始めると、いきなり大きな契約を取ってくるのです。しかし「なぜ成約できたか」、その理由を尋ねても、当の本人も「運が良かった」という以外の答えが見つからないケースが大半だと言います。

たとえ「運」でも大きな取引を成約したのですから、その社員は人事考課で高く評価されます。しかし、この社長さんは仕事ぶりを褒めた上で、社員をこう戒めるそうです。

「運は引き寄せるものだが頼るものではない。運で取れた契約は“ないもの”として次の仕事を頑張れ」

できる社員というのは、運に頼るつもりなどなくてもチャンスの方から勝手に寄ってくるものだと、この社長さんは言います。そんな社員は、仕事の上でも、運を引き寄せるのだそうです。その意味では、たとえビギナーズラックでも大きな契約を取った新入社員は「運を引き寄せることのできる人材」と言えるでしょう。ただ彼らは、時として「自分は運がいい」→「運がいい社員=できる社員」だと勘違いしがちです。上司や同僚にチヤホヤされるため慢心してしまい、やがて手抜き仕事をするようになると言います。これでは「運を引き寄せる」どころか、運の方から逃げてしまうでしょう。

そこで、この社長さんは、たまたま成果を出した若い社員は褒めるだけでなく、「運頼みの営業は今回きりだと思え」と、必ず釘を刺すそうです。

「運のいい社員」「運を逃がさず、つかめる社員」「運を引き寄せることのできる社員」は、会社にとって有用な社員です。ただ「運」は不確定な要素に基づくものですから、運を引き寄せる確実な手段などありません。できる社員がチャンスを逃がさずに成果を上げられるのは、常日頃から市場や取引相手の調査・研究といった努力を怠らないからです。「運が強い」を続けている人材は存外、「運」に頼る気持ちを持っていません。

よく「運も実力のうち」と言いますが、意欲と努力を忘れては、その「運」も逃げてしまうのです。そもそも「運頼み」でビジネスの成功などあり得ません。

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験担ぎする社長、運頼みをする社長を嘲笑ってはいけない。孤独に耐えかねて非合理なことに“逃げている”わけではない。下々にも当人にも説明のつかない判断根拠のことを、仮に「運」と呼んでいるだけかもしれないのだ。「科学的に」とは言わない。「運」を正面からとらえてみよう。この特集の終わりには「勝ち運」にまつわる調査報告をメールマガジンでお届けする予定です。

プロフィール

飯野 たから (いいの たから)

1952年山梨県生まれ。フリーライター。生活と法律研究所顧問。慶應義塾大学法学部卒。銀行、出版社勤務を経てフリーに。法律実用書の執筆・編集、劇画の原作等に取り組んでいる。 著書に『有利に解決! 離婚調停』『大家さんのための賃貸トラブル解決法』『著作権のことならこの1冊』『ケーススタディ101で読む・職場のトラブル解決読本』『マンガ法律の抜け穴』等がある。