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人を組み替える

2016.12.16

社長! その手抜き、バレてます。

八十 雅世

エレガントな〈手抜き〉

コミュニケーション リーダー 教育

エレガントな〈手抜き〉
経営者が手を抜くとき、若手社員はそれをどう見ているのでしょうか。バレているのか、バレていないのか、怒っているのか、諦められているのか……。今回はご自身も中堅SIerで働く八十雅世さんが、過去に周りから聞いた様々な企業における経営者のダメな手抜きを振り返りながら、美しい手抜きのあり方を考えます。

経営者だからといって、いつでもビジネスシーンで全速力という訳にもいきません。たまには手抜きが必要です。ただし、手を抜くときはあくまでもエレガントに。一歩間違えば、手抜きは社員の士気を一気に下げてしまいます。

ダメな手抜き1:部下の報告に「忘れた」

「新しい業務管理システム導入のお話ですが、順調にベンダーが3社のうちから1社に決定し、こちらが今後の導入スケジュールとなります」
「え、なんだっけそれ。勝手に進めるなよ。ちゃんと社内調整をしてから……」
「いや、社長。先日ご報告しましたよね……?」
「忘れた。そんな報告知らない」

社長がお忙しいのは百も承知です。しかし、過去の部下の報告に「忘れた」と言った日には、部下の忠誠心が一気に下がります。自分と同じことを若手が言ったら、と想像してみましょう。沸々と怒りが湧いてきましたね。その場の一番エラい人物でなくては、自身の至らなさを「知らない」「忘れた」というような言葉で言えないもの。「忘れた」という言葉は、会話における最大のマウンティング行為なのです。

経営者だって人間です。報告内容をうっかり忘れてしまうこともあるでしょう。ただ、悪びれずに「忘れた」と言ってはダメな手抜き確定です。たった数分の報告をするために、部下は数時間、下手したら数日かかって情報をまとめていることも多いのです。その時間をむげにするような言い方をしてはいけません。申し訳なさそうに、素直に「もう一度説明してほしい」と言いましょう。

ダメな手抜き2:管理職の「すっとばし」

「仕事をするのは、どうせ現場の若手社員。間にいる管理職に話をする時間がもったない……」

現場を動かす管理職とのコミュニケーションを面倒に感じたことはありませんか? たしかに管理職ばかり多く、動きが鈍くなるのは典型的な大企業病。スピード感は小さな組織の強みです。

しかし、あなたが経営者で、若手社員に直接指示をする場合は要注意です。その会社がとてもフラットだったり、本当に規模が小さな組織ならば問題ないのですが(筆者調べでは、社長が現場に直接指示をして誰も問題に感じないのは、見渡すと顔が一望できる程度の社員数30〜50名のようです)、少しでも階層的な組織になっていると、そううまくはいかず、ダメな手抜き確定です。ある広告会社の方は「結局、管理職が『自分は聞いてない』と言い始めて、話がこじれる」とぼやいていました。

指示をするまでの時間は短縮されても、実行にかかる時間が長引いてしまっては意味がありません。ご自身が作られた社内オペレーション手順に則るか、完全フラットに組織を変更してください。ただし完全にフラットな組織は、社員全員がプロフェッショナルで自律性を持っていないと、若手社員への教育が追いつかなかったり、社長の業務がパンクしたりする、という悩みを聞きます。ご自身の会社がそれに向いているのかどうかは、よく検討されたほうが良さそうです。

ダメな手抜き3:困った時の「君に任せた」

「先日の新プロジェクトの件、そろそろ準備しないといけませんが、どうしましょうか?」
「ああ、そうだった。君に任せた」

やることが多いからといって、特に深く考えずに「君に任せた」と言いながら、部下に仕事を渡すダメな手抜き。心当たりのある方も多いでしょう。そして任せた割に、出てきたアウトプットに対して意見が多く、最後には「当事者意識を持て!」なんて言っていたとしたら重罪。そんな風に部下を振り回していては、次第についてこなくなります。

ただ一方で、「部下に仕事を任せる」という行為そのものは、部下の士気を上げることもあります。では、良い仕事の任せ方と悪い仕事の任せ方の、どこに差があるのでしょうか。

良い手抜きは「謙虚さ」とともに

これまで多くの企業の社長に会ってきた人事関連企業の方によれば、それは「謙虚さの有無」とのこと。たしかに、上から目線で「私はできるが、君にはできるかね?」というスタンスで来られれば、その分だけ、それが深い考えなしの行動だと感じた時には即、信頼の低下に直結します。でも、「プロフェッショナルである君に任せたい」という対等な(むしろ下手に出る)スタンスであれば、仮に多少手抜きと感じても許せてしまうもの。

いずれにしても、経営者の手抜きはご自身が考えているよりずっと部下にバレています。手抜きと見透かされたときに許してもらえるか、許してもらえないか。このあたりが、良い手抜きと悪い手抜きの境目になるのです。

もちろん、手抜きは手抜きでも無駄な業務を効率化するようなものであれば、経営にとっては合理的ですし、それが分かれば社員だって納得します。ただ、管理職でも現場でも、部下の仕事に対するプライドを傷つけると、途端に興ざめされてしまうよう。手抜きをするときは、総じて下手に出るのが鉄則です。

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社会はますます“手抜きを許さない”方向へと進み、絶え間なくリスク回避のストレスに追われています。逃げ道はないのか。小さな組織の未来学では別の選択肢を検討してみます。成果を上げるプラスの「手抜き」とは何か、ヒントが見えてくるかもしれません。この特集の終わりには「エクセレントな手抜き」にまつわる調査報告をメールマガジンでお届けする予定です。

プロフィール

八十 雅世 (やそ まさよ)

SIer企業勤務。1986年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒。美術史学を専攻しながらも、気がつけばIT企業に入社し、技術職を経て企画職へシフト。そして新規事業担当に。会社では上司に遠慮のない物言いをする、いわゆる生意気な若手。