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人を組み替える

2016.11.28

採用運は「キラキラワード」じゃ上がらない

八十 雅世

経営者のための「運」とのつきあい方

人材 教育

経営者のための「運」とのつきあい方
日本商工会議所の調べによれば、中小企業の半数以上が人材不足に悩んでいます。人と企業の出会いには、いくつもの偶然と必然の積み重ねがあるものですが、適した人材と出会うことができるかどうかは、企業の明日の命運を分かちます。今回は、採用における運気を上げるにはどうすれば良いのか、考えてみます。

「最近、イキのいい新卒が入ってこないんだ……」と、お嘆きな社長はいらっしゃいませんか? 仕事に前向きで、率先的に動いてくれるような社員が入らず、暗い顔で、もそもそと仕事をする若手ばかり。そんな貴社は、採用運が落ちているのかもしれません。イキのいい若手を引き寄せる、ツキのある会社にするためにはどうしたら良いのでしょうか。

大企業の「採用キラキラワード」は真似ても無駄

「2017年卒 大学生就職企業人気ランキング」で上位企業となるような採用Webサイトには、軒並み「グローバル展開」「挑戦」「ステップアップ」「女性活躍」といった、キラキラした言葉が輝いています。確かに、こうした言葉に惹かれる学生は仕事に前向きであることが予想できるので、採用できたら言うことありません。ただし、ここで「人気企業と同じ言葉で学生にアピールすればいいんじゃない?」と思うのは早計です。

多くの企業の人材育成に携わっている方に伺ったところ、「大企業でさえ、社員の内向き志向に悩んでいる。それに、今の学生にはアグレッシブな言葉が響かない」とのこと。世間的に20代は保守化傾向が進んでいるようです。私の周囲を見回すと、やりたいことのために海外に行ったり、地方移住したり、恋愛より仕事優先だったり、趣味に邁進したり、どうもアグレッシブな友人が多いので実感は薄いのですが、アラサーはきっと対象外なのでしょう。

確かに、博報堂生活総合研究所の「生活定点」によれば、20代で「仕事をするなら、やりがいよりも安定性で会社を選びたい」と答えた人の割合は、1998年では23.9%だったのに対し、2016年では32.7%。そして、これは他の年代と比べても高い上昇率となっています。また「海外で働くことに抵抗はない」と答えた人の割合は、他の年代が微増か変化なしであるのに対し、20代は減少傾向です(余談になりますが、「能力主義は合理的な制度だと思う」と答えた割合は、全世代で減少傾向でした)。

こうした状況の中、キラキラした言葉はかえって学生を遠ざけてしまう可能性があることがお分かりいただけたでしょうか。先の人材育成企業の方は、「人気企業の採用では、ある程度の母集団が確保できる。イキのいい学生はその中で探すことができるので、アグレッシブな言葉を打ち出す余裕もある」とおっしゃっていましたが、中小企業ではそうもいきません。

保守化した若者に効く「超地域密着」「転勤なし」

人気企業の真似をしてキラキラした言葉でアピールするのはうまくいきません。でも若者が保守化している昨今、「超地域密着型企業」や「転勤なし」という言葉を使うと、比較的集まってくるようです。「ウチの会社は小さいから、そもそも転勤する先なんてないよ」と恐縮する必要はありません。事実は事実。充分ウリになるので、がんがんアピールしていきましょう。

この地域密着型の保守化傾向は、「マイルドヤンキー」を彷彿させます。もしかしたら、彼らが好むという“地元”“地縁”“親”“仲間”というキーワードが、求人活動にも役立つのかもしれません。海老原嗣生氏は、「学生に付き合ってあげる、助けてあげるという論理」が中小企業の新卒採用活動に必要だと述べています。言ってみれば、企業が学生にとっての親的立場、仲間的立場になるとも言えるでしょう。

それでもアグレッシブな人材が欲しいなら

ここまで読んで、「若者が保守化していることは分かった。それでもアグレッシブな人材が欲しい」と考える方もいらっしゃるでしょう。その場合は、保守化する世間の若者と逆行する、あまのじゃくで好奇心旺盛な人をターゲットにしてみてはいかがでしょうか。

早い話が、いわゆる「変人」。統率が求められる普通の大企業では馴染めずに辞めてしまいそうな、「尖った人材」の受け皿になる覚悟を決めるのです。例えば、面白法人カヤックバーグハンバーグバーグは、そのコーポレートサイトから分かるように会社そのものが個性丸出し。個性を出す企業には、個性の強い人材が集まります。

ただし、過去に実際「変人採用」と謳う採用を行ったことがあるカヤックのサイトによれば、「『変人』の定義があいまいであったため、応募者と採用を考えていた人とのミスマッチが発生。中止となりました」とのこと。いわゆる変人を採用したいと思っていても、文字通り「変人採用」と謳うと、あまりいいことがないのかもしれません。

また、アグレッシブな人材が欲しいなら「副業OK」とするのも一案です。一部の企業では認められ始めていますが、なかなか大手企業には踏み出せない制度です。私自身、会社に許可を取った上で、この執筆活動をしています。「副業OK」に惹かれる人材は、少なくとも働くことに積極的であるでしょう。

ところで、そもそも自社のコーポレートサイトに情報が少なくて、ぱっと見でどんな会社か分からないようならば、今すぐ見直しを行うことをお勧めします。もちろんスマートフォンで快適に見られるための適正化も必須です。サイトは企業の顔。学生にかなり読み込まれていますよ?

採用運を上げるべく書き連ねてみましたが、実際に効果が出るかどうかは社長や採用担当者次第。でもきっと、神頼みよりは現実的でしょう。

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験担ぎする社長、運頼みをする社長を嘲笑ってはいけない。孤独に耐えかねて非合理なことに“逃げている”わけではない。下々にも当人にも説明のつかない判断根拠のことを、仮に「運」と呼んでいるだけかもしれないのだ。「科学的に」とは言わない。「運」を正面からとらえてみよう。この特集の終わりには「勝ち運」にまつわる調査報告をメールマガジンでお届けする予定です。

プロフィール

八十 雅世 (やそ まさよ)

SIer企業勤務。1986年東京生まれ。早稲田大学第一文学部卒。美術史学を専攻しながらも、気がつけばIT企業に入社し、技術職を経て企画職へシフト。そして新規事業担当に。会社では上司に遠慮のない物言いをする、いわゆる生意気な若手。