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時間を味方につける

2016.12.19

“ど忘れ”についての新しい考え方

米山 公啓

脳に学ぶ経営戦略

方法論 老化

ど忘れはまったく腹立たしいし、年のせいと思ってしまう。むろん、ある意味でそれは正しい。覚えているはずなのに思い出せない。それがど忘れである。

ところが、「思い出す」と「思い出せない」の“中間の状況”があることが分かってきた。つまり「少し思い出せている状態」が無意識のうちに作られている。70%まで思い出していても、感覚的には思い出せないということになり、そこでイライラができてしまう。

思い出そうとする過程にはいろいろな要素が付加されていて、同時に関連することも思い出されるので、それで「知っているはずだ」という感覚ができてしまい、思い出せないイライラを作り出す。関連することばかりを思い出してしまうので、そこばかりにスポットライトが当たり、肝心の単語が出てこなくなる。

赤い、甘い、果物、丸いなどの言葉が出てきてしまうと、肝心のリンゴという単語が抑制されてしまうのだ。あることを思い出すと、それに関連したことが思い出せなくなる。そんな状態である。

消えてしまう一瞬の記憶

もの忘れと関連するもう一つの記憶は、一瞬の記憶、つまり「今さっきの記憶」である。今さっきの記憶は海馬にためられる。そこで神経細胞が新しく作られていないと、今さっきの記憶は忘れない記憶へと変化していけない。

年齢とともに海馬の神経細胞を新しく作りにくくなるので、そこでの容量が一杯になってしまい、新しいことが入らなくなっていく。これが年齢とともに今さっきの記憶を忘れてしまう理由の一つとされる。

つまり、神経細胞を増やすことが必要になる。むろん、これには脳を刺激したり、運動をしたり、脳の動脈硬化を防ぐための生活習慣病予防が必要になる。

ど忘れの防止

私たちの一瞬の記憶には限界がある。電話番号の8桁前後が一瞬の記憶の限界である。しかし、この仕組みをうまく使えば、もっと多くのことが記憶できる。

チャンクという考え方がある。チャンクというのは意味のある一つのまとまりのことを言う。意味のないことは覚えられないが、いくつかの情報をまとめて意味のあるものにすれば、より多くのことが記憶できる。7つの言葉を意味なくランダムに覚えようとすると難しいが、その言葉でストーリーを作ってまとめてしまえば暗記は可能である。

容量のきまった棚に、ランダムにしまうとすぐに一杯になってしまうが、並べ方を考えて入れていけば、より多く収納することができる。それと同じことだ。

精緻化

チャンクと同じようなものだが、さらに情報を付け加えていくことも有効だ。単語が5つあって、その中で2つの分類をすれば、そこに別な情報を付加することになる。どんな分類や情報を付加していくかは、個人が得意とする、あるいは好きなことに持っていけばいいわけで、ルールはない。

例えば、好きな音楽のアーティストがランダムに記憶されている場合、1970年代のアーティストでひとまとめにすれば思い出しやすくなる。ビートルズと同世代ということになれば、もっと思い出しやすくなる。そういう意味では、最近のネット音楽配信はキーワードでの「くくり」をすぐに自動的にやってくれるし、あらかじめ「1970代の音楽」として紹介されていたりするので、記憶の整理にも都合がいい。

そういったことを繰り返せば思い出しやすくなり、アーティストの名前にもすぐにたどり着けるようになる。思い出しにくい理由を理解したり、記憶のテクニックでど忘れを気にしないことが重要だろう。

併せて読みたい、編集部からのおすすめ記事
“度忘れ”の瞬間、試すべき5つの方法

ついさっきのことを思い出せないという“もの忘れ”もあれば、いつも使っているのにどうしてもその言葉が出てこないという“度忘れ”も年齢とともに多くなってくるものだ。この原因は、やはり脳機能の年齢的な衰えであることに間違いはない。しかし、その場ではそうも言っていられない。さて、どうすれば良いのだろうか。

プロフィール

米山 公啓 (よねやま きみひろ)

1952年山梨県生まれ。作家、神経内科医。元聖マリアンナ医科大学第2内科助教授。現在までに280冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修なども行う。日本老年学会評議員、日本脳卒中学会評議員、日本ブレインヘルス協会理事。