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人を組み替える

2015.12.02

人の不幸を喜ぶ脳が、仕事の意欲を作り出す

米山 公啓

脳に学ぶ経営戦略

感情 モチベーション

トップに立つ人にもっとも必要なものに、「オリジナリティ」と「人を驚かせる面白さ」がある。

スティーブ・ジョブズはまさにその天才、常に消費者を驚かせるものを作り続けてきた。それはマーケティングだけでは決して得ることができないだろう。なぜなら、消費者は自分の知る範囲、あるいは想像の範囲でしか物を考えることができない。「こういうものがあれば便利」と考えることは容易にできても、「そんなものがあったのか」と驚かせる発想はそうそう思いつくものではない。そういう思考は“必要がない”からできないのだ。

一流のアーティストもやはり驚かせることに長けていて、それが感動につながる。それを才能と呼ぶ。次々に「こんな描き方があったのか」「これをモチーフに使うのか」というような驚きを生み出す。いったいどうすれば、それが可能になるだろうか。

1)自分が本当に驚くことなのか

自分が面白いと思う時こそ、本当に感情が動かされて瞬時に記憶へと残っていく。他人の評価を元に考えるのではなく、「他人の評価とは関係なく面白い」と言える勇気も必要だろう。

現代の社会では、多くの人が面白がっている情報はいわゆる手垢のついた情報であり、それ自体に価値がなくなってきてしまっている。世界中で何百万回と再生された動画というには、その時点で情報としての価値を失っているわけだ。

2)専門外の情報、人脈を持てるか

仕事が専門になればなるほど、人脈は狭くなり、情報が限られたものになってしまう。方法論や目的が同じである場合、その専門家からの意見を聞くという情報収集の方法がある。例えば新しいナイフを開発する場合、技術者だけでは全く違う視点から物を作り出すことはまずできない。外科医、コンビニの店員、画家、料理人などを集めて意見を聞くほうが、想像もできないものが生まれるはずだ。

自分が優位に立てる同じような人間関係の中では、どうしてもブレイクスルーすることが難しくなってしまう。

3)それは楽しくなれるものか

ウエアラブル端末、最近では腕時計型の様々なタイプが出ているが、なかなか爆発的な普及とはいかない。一般の人は、万歩計の情報を毎日知りたいとは思わない。多くの人はそのメカを必要としていないのだ。

効率だけを求めたものは結局、商品として成功しない。

4)ポジティブな妬みを生み出せる情報か

高級外車は、妬みを生む商品だ。と同時に、「いつかは自分もあんな車に乗りたい」と思わせ、買うために努力をしようと思わせる商品だ。

脳には羨望を感じ、他人の失敗を喜ぶ部分がある。その場所は脳の線条体という場所であることも分かってきた。線条体は報酬系の一つであるので、人の不幸が快感となる。人の不幸に対するうれしさの強い人ほど、線条体の活性が高い。

妬みが強い人は腹側前部帯状回の活性が高い。同時に、人の不幸に対しても帯状回の活性が高い。つまり、人の不幸が自分にとっての快感を作り出してしまうわけだ。妬みの対象となる人が不幸になると、その人の優位性が下がり、逆に自己の劣等感が軽減され、心の痛みが緩和し、心地良い気持ちになる。

しかし、進化の過程で妬みという仕組みが失われていないからには、何か人間の脳にプラスになっているはずである。広い視点で妬みについて考えれば、努力して優位性を持とうとする衝動に結びつき、その人の進歩につながっていくはずだ。羨望は、さらなる飛躍のための脳の仕組みでもある。他人の失敗を喜んでいるだけなら脳の進歩はない。

そして「欲しいな」「いいな」と思える情報を提供することは、他人に意欲を作り出すきっかけにもなる。まずは自分が本当に欲しいと思えるものを、どれくらい知っているかが問題となるだろう。

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プロフィール

米山 公啓 (よねやま きみひろ)

1952年山梨県生まれ。作家、神経内科医。元聖マリアンナ医科大学第2内科助教授。現在までに280冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修なども行う。日本老年学会評議員、日本脳卒中学会評議員、日本ブレインヘルス協会理事。