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人を組み替える

2015.10.27

勝利が脳を育てるか

米山 公啓

脳に学ぶ経営戦略

成長戦略 競争

テレビが世の中に出てきたときは、街頭テレビで力道山が外国人レスラーをやっつけることが見る側の快感だった。しばらくしてプロ野球の王・長島の活躍に驚喜していた。そしてオリンピックで金メダルを取るようになると、世界一ということに価値を見出すようになり、そこまでいかないと見る側の本当の快感にならなくなってきた。

団塊世代の勝負についての快感はそのように変化してきたのだろう。だからフランチャイズ色が強くなりすぎたプロ野球に興味が持てず、ワールドカップの予選で苦労している男子サッカーをつまらなく感じてしまうのだ。

一方、テニスの錦織選手は世界ランキング10位以内に入ってきて、世界一に手が届きそうである。弱くて世界に通用するとは思われていなかったラグビーがワールドカップで南アフリカに勝利したり、3勝したりすると、その快感は今までの国内プロ野球で満足していた脳とはすっかり変わってきていることに気がつく。

世界で勝利することに意味がある

頑張ったから素晴らしいとか、努力することが大切といった精神論でカバーしながら世界に負けるということでは、満足できない勝負脳になってきている。世界を舞台に活躍するゴルフ、テニス、卓球では、やはり世界を相手に勝たなければ駄目なことに気がつくし、そこまでいかないと見る側も本当の快感を得ることができなくなってきている。

これは脳内のドーパミンの受容体が次第に大きくなって、ちょっとしたことでは快感を得られなくなってきている証拠である。それは如実にテレビの視聴率に反映して、地上波でプロ野球の中継はなくなり、サッカーJリーグも地上波のゴールデンタイムから消えた。それはやはり、勝利の快感を国内リーグ戦ではもはや得ることができなくなっているからだ。

本当の勝利が脳を作り替える

やはり世界一を目指すことで、そこで勝ってこそ、達成感やら満足感を見る側も得ることができる。つまり勝利に対する貪欲さは、次第に強くなるし、高度になってくる。満足させるには、選手側が高度な練習をしたり、今まで以上の努力が必要になるはずだ。それは当然、選手のレベルアップにつながっていく。

国内リーグの勝利で満足できたいた脳は、すでに選手より先に世界を見てしまっている。つまり世界一がいかにすごいことか分かってきているのだ。見る側もその快感を求め、それを満足させてくれるスポーツを見たくなってくるものだ。

見る側も、やる側も、快感のレベルをアップしよう

サッカーの中田選手がワールドカップで敗退したとき、グラウンドで仰向けになって呆然としているシーンは今でもはっきり覚えている。世界の中で勝っていく快感を知っていた中田は、あのワールドカップの敗退ですっかりサッカーへの意欲を失ったように見える。世界での勝利を知っている者にしか分からない快感であろう。

私たちも錦織のテニスや、ラグビーを見ることで、世界の中で勝利していく快感を覚えてしまった。しかし、その快感こそが私たちの勝利への意欲を高め、スポーツ選手も同じように、その快感を求めて努力するようになるはずだ。

国内リーグの勝利で終わってしまうスポーツは衰退していくだろう。人間の勝利への欲望のレベルは、どんどんアップしていく。それを満たすプロスポーツは、さらなる飛躍をしていくしかない。

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プロフィール

米山 公啓 (よねやま きみひろ)

1952年山梨県生まれ。作家、神経内科医。元聖マリアンナ医科大学第2内科助教授。現在までに280冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修なども行う。日本老年学会評議員、日本脳卒中学会評議員、日本ブレインヘルス協会理事。