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人を組み替える

2015.10.01

怒りは本当に敵なのか

米山 公啓

脳に学ぶ経営戦略

リーダー 感情

「怒りは敵と思え」は徳川家康の遺訓ということになっているし、江戸時代から怒りは人生においてマイナスということになっている。カッとなって判断力が鈍り、感情的な決断をしてしまうというのはよくあることだが、本当に怒りはいけないものなのだろうか。

怒りで脳はどうなっているか

感情が高まるとき、脳の中ではノルアドレナリンが過剰に分泌される。本人の感覚では頭がカーッとなっている感じである。そんな時には冷静な判断ができなくなって、かえって損な選択をすることもある。だから「怒りは敵と思え」ということになる。

しかし、怒りによって脳の働きは活性化されて、うまく利用すれば普段の能力よりもすばらしい結果をもたらすこともある。扁桃体と呼ばれる脳の部分があり、ここは感情センサーであり、コントロールをするところでもある。

例えば、考えている時間がない危機的な状況では、考える前に行動しなければならない時もある。誰かに襲われそうになったら戦うか逃げるかと考えるが、扁桃体は運動神経に命令を送って体を反応させることができる。大脳皮質まで情報を送って分析していたら遅くて間に合わないとき、即対応しなければいけないときには、脅威に対して怒りで反応する扁桃体の働きが重要な意味を持ってくるわけだ。

長い怒りは脳にマイナス

カッとなって怒ってしまうが、そのあとは根に持たないという上司であれば、部下もむしろ安心して仕事が続けられる。怒りをずっと持ち続けることは、脳にとってストレスを生み出すことになり、脳の機能も落ちてきてしまう。

怒るときはあくまでも一時的な行動であると認識すべきだ。常に怒っているという状況は部下にも自分にも大きなストレスを作ってしまうことになり、脳の機能は低下してしまう。

悔しさをうまく使う

怒りより、悔しいという感情はもう少し弱い状態であろう。これは「悔しさをバネにして」という言葉があるように、仕事などへのモチベーションとなっていく。

大きな成功を得た人は必ずといっていいほど、自分の悔しさを仕事へのモチベーションに切り替えている。これは脳にある否定的な感情を、うまくドーパミン系の働きに切り替えているからだ。悔しさを晴らすことが快感となっているので、仕事への情熱が継続するのだ。

怒りを忘れてしまった現代

現在では、感情にまかせて部下を叱ればパワハラということになってしまい、なかなか部下を叱ることができなくなった。

しかし、人間の感情はそう簡単に抑えることができない。理性を作り出す大脳皮質は、扁桃体から送られてくる怒りの感情を必ずうまく抑え込めるとも限らず、時には机を叩き、相手に怒鳴り散らしてしまうということになる。

上に立てば立つほど、怒りたくなる場合が増えてくるが、それをコントロールして直接部下にぶつけるのではなく、自分の脳の中の葛藤にすべきである。優秀な上司ほど感情をコントロールできるのだ。ある意味、精神的にタフな脳が必要になってくる。

世界のトップに君臨するプロテニスプレーヤーは、自分の感情を常に抑え、失敗に対しても顔色一つ変えない。あのすばらしい精神力がなければ、トップにはいられないのだ。怒りは決して悪いものではないが、それをコントロールする脳を持っていてこそ、優秀な経営者たりえるのではないだろうか。

怒りのしずめ方

(1)口にする前に6秒待つ

怒りが持続するのは想像以上に短いので、ちょっと間を置くことで、感情的にならないですむ。

(2)その場から離れ、10分歩いてみる

ノルアドレナリンが過剰に脳の中で出てしまえばコントロール不能となるので、素早くその場から離れ、ウォーキングしてみること。歩けばセロトニンも増えて、脳が冷静さを取り戻す。

(3)怒る理由や価値を考える

なぜここで怒るのか、感情を表す前に、その理由を考えることで時間が稼げるので、怒りも収まってくる。

(4)怒ったあとのことを考える

部下を叱ってしまったあと、それを修復するには時間もかかり、いま我慢するほうがずっと楽だと思えば、感情は収まってくるはずだ。

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プロフィール

米山 公啓 (よねやま きみひろ)

1952年山梨県生まれ。作家、神経内科医。元聖マリアンナ医科大学第2内科助教授。現在までに280冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修なども行う。日本老年学会評議員、日本脳卒中学会評議員、日本ブレインヘルス協会理事。