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時間を味方につける

2016.09.14

脳が「後回し」したがる面倒なことに、手をつけるには

米山 公啓

脳に学ぶ経営戦略

老化 モチベーション

若いころなら面倒だと思わなかったことも、年齢とともに面倒になり、慣れないことはやりたくなくなってくる。携帯電話からスマホへ切り替えるというのも、新しい操作が分からなそうなので、そのままにする。今の基準で言えば使い勝手の良くないノートパソコンも、昔から使っているのでそのまま使っている。

人間には変化を好む部分と好まない部分がある。そして年齢とともに次第に変化を好まなくなってくるものだ。音楽でも自分の青春時代の歌を歌うばかりで、最新のヒット曲などには興味を失ってしまう。それは、やはり脳の機能の衰えと、そのメカニズムに関係している。

慣れるということの意味

当たり前のようであるが、同じことを繰り返していくと、脳の中の神経回路は次第に効率良くなっていく。無意識のうちに何かができてしまうというのは、まさに脳の中にできあがった神経回路のおかげである。家から駅まで歩くとき、道を考えながら歩くことはないはずである。すでに脳の中に地図が出来上がっていて、別なことを考えていても駅には到着する。

慣れによって脳への負荷が減り、効率は良くなる。脳への負荷が減れば苦にならなくなる。これが多くの日常生活での動作である。まさにルーティン化することで、目的を正確に遂行できるようになる。しかしその分、その行動は脳への刺激にはならなくなっていく。

めんどくさいことを嫌う脳

一方、新しいことをやれば、それだけ脳を使うことになり、脳への負荷が大きくなる。その負荷は年を取れば重いものとなる。脳の一時的な記憶装置の機能が年齢とともに低下してくると、同時に何かをできなくなったり、今まで面倒だとは思わなかったことも、あまりやりたくなくなってくる。

これこそが、まさに加齢によって脳の機能が低下している証拠である。「新しいスマホに切り替える手続きが面倒そう」「操作をまた新しく覚えるのも大変だ」と感じてしまうのは、やはり脳の中に新しい神経回路を作りにくくなっている証拠である。

かといって楽なほうに走り、何でもいつも通り、同じことの繰り返しでは、脳はますます機能の低下を起こしていく。

面倒なことに挑戦する精神

以前は、テレビゲームをすると脳が衰えてしまうという意見もあった。それが最近の研究では、反射神経を使うシューティングゲームのようなものは、衰えるどころか脳の集中力を強化して、認知機能を改善するという研究も出てきた。そのテレビゲームも、ずっと同じゲームをした場合、うまくはなるが刺激としては次第に弱くなる。ある程度上達したら、新しいゲームに挑戦していくほうが脳には良いのである。

面倒だなと思ったことこそが、脳を刺激し、老化に抗することである。仕事もあえて面倒なものに取り組み、手続きなどもあえて複雑なものをやり遂げるという気持ちで当たりたい。脳を刺激することは、今、楽であること以上のプラスを運んでくれる。使い慣れた携帯電話を気軽に新しいものに切り替える意欲があるなら、あなたの脳も安心だ。

脳の活性度テスト

以下の10の質問に6個以上YESがつくなら、まだまだ若い脳と言えるだろう。衰えたなと感じた人は、YESが増えるように行動してみてほしい。

1)最近の流行語を3つ言える。
2)2年以内に新しいスマホにしている。
3)新しい海外ドラマを2つ以上見ている。
4)1カ月以内に新しいレストランへ行った。
5)フェイスブックを使っている。
6)インスタグラムを使っている。
7)都内にできた新しいホテルに泊まった。
8)最新の映画を映画館で観た。
9)最近、仕事以外で友人ができた。
10)新しい習い事を始めた。

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私たちはある特定の行為が好きになると、それを自分が繰り返してやっているとは思わなくなってしまう。仕事が好きでたまらないということであれば、それはプラスに働く。だからというわけではないが、仕事に依存しているとはなかなか考えないだろう。

プロフィール

米山 公啓 (よねやま きみひろ)

1952年山梨県生まれ。作家、神経内科医。元聖マリアンナ医科大学第2内科助教授。現在までに280冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修なども行う。日本老年学会評議員、日本脳卒中学会評議員、日本ブレインヘルス協会理事。