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人を組み替える

2015.07.29

嘘をつくと、脳が活性化するのか

米山 公啓

脳に学ぶ経営戦略

コミュニケーション 身体

人生において嘘をつかない人はいないだろう。会社の幹部が嘘をつけば、結果として会社に大きなダメージを与えることにもなる。会社のため、保身のためといろいろ理由はあるのかもしれないが、どうして人は嘘をついてしまうのか、興味深い問題だ。

嘘をつくことによって、脳にはどんな影響があるのだろうか。あるいは、嘘をつく脳と、つかない脳に違いはあるのだろうか。

嘘つきの脳には特性がある

京都大学の阿部修士特定准教授らの研究グループは、fMRI(機能的磁気共鳴画像法)で嘘をついたときの脳を調べた。その結果、快感や満足感、意欲などに関係する脳の報酬系に重要な役割を果たすと考えられる「側坐核(そくざかく)」の活動が高い人ほど、嘘をつく割合が高いことが分かった。このことは、欲望が強いために嘘をつくということの証明になる。金銭的な欲求などが強ければ強いほど、嘘をついてしまうということだ。

また、側坐核の活動が高い人ほど、嘘をつかずに正直な反応をする時、「背外側前頭前野」の活動が高くなった。つまりこれは、大脳皮質の働きである理性で、嘘を抑え込んでいる状態と言えるだろう。

実はこういったことは脳の中で常に起きている。自分の本能的な欲求を、前頭葉が理性として働き抑制することで、社会的な脳を作り出しているわけだ。嘘つきは欲望が強いか、あるいは理性的な抑制が弱いかだろう。無論、実際にはもっと複雑なことが脳で起きているので、それだけで嘘のメカニズムが説明できるわけではないが。

男の嘘は、なぜばれる

女性は男性より、会話をしている時でも広く脳を使っていることが分かっている。つまり、同時処理は女性のほうが得意なのだ。嘘をついているとき、脳はいつもより活動しなければ平静を保てない。事実を否定しながら別の話をするというのは、脳にとってかなりの負荷である。

だから男性脳にとって、嘘をつくのは非常に苦手な脳の使い方であり、それが男性のしぐさに現れてしまうので、すぐ女性に嘘を見破られることになる。事実、心理的な研究によれば、女性の嘘のほうがばれにくいという研究もある。

嘘がいかに脳へと負荷をかけるかということだが、逆に考えれば、嘘をつくことによって脳を活性化していることにもなる。

脳は自分に嘘をつく

私たちが何か判断を下していくとき、必ずしもすべての情報を得て判断しているわけではない。例えば、文章の中に「アリメカ」と書かれていても、「アメリカ」と読んでしまう。これは見慣れている文字を、すべて一文字ずつ読んで判断しているわけではないからだ。

少ない情報から脳が理解しやすいように勝手に判断してしまうために起こるミスである。見方によっては、脳内で嘘をつくことによって情報処理を速くしていることになる。つまり、脳では嘘をつくことが当たり前の機能になっているとも言える。

だから、だまされやすいということにもなる。見た目が紳士であればいい人だと判断したり、身につけているものが高級であればお金持ちと判断するのも、脳の中で勝手に情報処理をして速く判断することが影響している。

嘘をつくことは、脳科学的にはメリットもあるし重要な働きでもある。しかし、社会的な影響が出る嘘を理性的に抑制できなければ、嘘をつくことが自分にとって大きなマイナスになってしまうことは、もちろん覚悟しなければならない。

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人は午後になると嘘をつく

ハーバード大学のマリアム・クーシャキらの研究によれば、人が不誠実(嘘をつく)になるのは、午前中より午後だという。会議や重要な決断が必要なときは、午前中にやってしまったほうが良いようだ。

プロフィール

米山 公啓 (よねやま きみひろ)

1952年山梨県生まれ。作家、神経内科医。元聖マリアンナ医科大学第2内科助教授。現在までに280冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修なども行う。日本老年学会評議員、日本脳卒中学会評議員、日本ブレインヘルス協会理事。