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モノと道具を再構築する

2016.07.28

脳の仕組みが、そもそもクラウド的なのだ

米山 公啓

脳に学ぶ経営戦略

IT 効率

かつてマーシャル・マクルーハンが、人間の記憶は将来、外へ出ていくだろうと予測した。まさにその予測通り、現代では人間の多くの記憶が、スマホやインターネット上に置かれている。電話番号を記憶する必要もなくなり、曖昧な記憶であってもネット上の検索で、フルネーム、正しいつづり、必要な意味を探しだせてしまう。

以前は記憶が外に出るというと、自身の脳の機能が低下してしまうように予想された。ワープロなどを使うと「言葉を覚えなくなる」などと言われていた。しかし、実際にはパソコンでの文字入力によって、膨大な情報が生み出されることになった。小説にしても、パソコンを使って書かれるようになって長編が増えたと言われる。

漢字などを正確に記憶しなくていい、文章をつづりながら並べ替えが自由だということなどから、むしろ脳の中にそれだけ別なことを覚えられる余裕ができたと考えるべきだろう。つまり私たちの脳は、さらに使いやすくなっているということではないだろうか。

脳の機能と記憶

実は、これらの効率的な情報処理は脳の機能に似ている。脳において海馬の神経細胞が新しく作られなくなると、いままで入ってきていた情報が神経細胞のネットワークを占有してしまい、新しい情報によって更新されなくなる。その結果、いまさっきの情報を脳に留めておくことができず、「もの忘れ」という症状になってしまう。最近では、もの忘れの原因がそこにあると考えられるようになった。

ならば、海馬の神経細胞にある古い情報を、睡眠中に大脳皮質の神経細胞ネットワークに送り込んで、海馬を空にしておく必要がある。記憶すること、つまり大脳皮質へ情報を送り込んで海馬に余裕を持たせておくことが、もの忘れ防止になるというわけだ。

むろん、海馬に新しい神経細胞を作っていく必要もある。この二つのことをうまく実行してこそ、脳は常に情報をうまく処理できるようになる。

クラウドと脳の仕組みは似ている

データのクラウド化は脳の記憶の仕組みに似ている。ネット上でのクラウド化というのは、自分のパソコンの情報をクラウドという記憶媒体へ送り込んで、自分のパソコンの記憶装置をできるだけ軽くしておこうということだ。

これは脳の持つ記憶の仕組みに非常に近いように思う。あらゆる情報を手元に置いておきたいというのは、もはや意味のないことになってきた。意味がないというより、限られたパソコンの機能をより発揮させるためにも、情報の一部はパソコンから切り離して使ったほうがいい。

むしろ脳の記憶の例を考えれば、いつでも記憶情報にアクセスできることが重要であり、その記憶情報がしっかりとセキュリティで固められているということも重要になってくる。一方、手元に膨大な情報を置いておくだけでアクセスが良くなるというわけでもない。また、手元ということにこだわれば、自宅など特定のスペースだけが便利で、他の場所ではその情報にアクセスすることができない、などということもある。

パソコンは脳に近い

パソコンは脳と違って疲れないと思われてきたのだが、実際にはパソコンを使い込んでいくと、起動や情報処理が遅くなってくるのが実感できる。様々なデータが入り込むことで、パソコンの機能が十分に発揮できなくなってくるのだ。

どんなにスペックが高くても、脳もパソコンも情報が多くなってくると、うまく判断できなくなってきてしまう。これを避けるためには適宜、手元に置き、適宜、外部の記憶装置へ任せてしまうことが、どちらにとっても重要というわけだ。

「もう限界…」増え続ける業務データと管理負担、このままではデータ管理がおろそかに…

それでも「社外に大事なデータを預けるのはちょっとなぁ」と思った方には、この記事を

管理業務担当者が楽をしている状態のほうが効率的
(上記はKDDIのサイトへのリンクです)

管理業務で扱うデータの量も種類も急増していく現代、“業務で手一杯感”を管理担当者の能力の有無に帰結させるのはナンセンス。

併せて読みたい、編集部からのおすすめ記事
“度忘れ”の瞬間、試すべき5つの方法

ついさっきのことを思い出せないという“もの忘れ”もあれば、いつも使っているのにどうしてもその言葉が出てこないという“度忘れ”も年齢とともに多くなってくるものだ。この原因は、やはり脳機能の年齢的な衰えであることに間違いはない。しかし、その場ではそうも言っていられない。さて、どうすれば良いのだろうか。

プロフィール

米山 公啓 (よねやま きみひろ)

1952年山梨県生まれ。作家、神経内科医。元聖マリアンナ医科大学第2内科助教授。現在までに280冊以上を上梓。講演会、テレビ・ラジオ出演、テレビ番組企画・監修なども行う。日本老年学会評議員、日本脳卒中学会評議員、日本ブレインヘルス協会理事。